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 目が覚めると、まず目に入ったのは闇だった。


 ━━━状況を整理する。


 どうやら目が上手く開けられないらしい。


 ━━━状況を整理する。


 どうやら体も上手く動かせないらしい。


 ━━━状況を整理する。


 誰かが周りにいる気配がする。


 ━━━状況を…






 やがて結論へ辿り着く。

 どうやら、自分は新生児のようだ。





 とりあえずの状況を把握したところで、突然ふわりと体が浮いた。


「━━━━!?」


「ママの所へ行きましょうね」


 そんな声が聞こえ、そのまま体が揺れ動く。どうやら抱き上げられたようだ。抵抗も出来るはずもなく、ただそれに身を任せることしか出来ない。






「はい、ママですよ〜」


 やがて、揺れが穏やかになり再び声がした。そして、ゆっくりと他の誰かに触れられる感触がする。その感触に体が強ばると、どうやら俺を抱きしめたらしい相手は心無しか緩やかに自分の元へと引き寄せたようだ。


「この子、おしめもミルクもまだなんですよ」


「ふふ、じゃあこれから沢山の初めてがこの子には待ってるんですね」


 聞こえた声に、今度は返答する声がある。聞き覚えのある声だった。恐らくこの声の主が俺の母親なのだろう。直感的に、そう感じた。だからといって、感情が揺れ動くことはない。


「あれ、」


 母親であろう声が少し驚いた声を出した。何事か、と考えるのと同時に緩やかに下腹部辺りに温もりが広がる。


「あら!早速初めてね!」


 自分をここまで連れてきた者の明るい声がする。


 一方で俺は今自分の身に起きたことに対しての整理が思うようにいかない。

 今、自分は何を…?


 納得のいかない思考と現実に一通り振り回されていると、俺を抱きしめていた手が優しく背を撫でた。そこで自分の頬に流れるものにやっと気がついた。


 わけがわからない。

 こんなことは初めてで。

 俺は疲労とともに再び意識を手放した。

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