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「はじめまして」
誰かの泣く声がする。鬱陶しくて仕方がない。
子供の泣き声も苦手だ。それをあやす親の声はもっと嫌いだ。
子供が泣くと、その周りの人間はそれを何とかしようとあの手この手を尽くす。最も早く黙らせる方法があるのに、誰もそれを選ばずに。だったら俺がそれを選ぼう、息の根を止めて二度と泣くことなど出来なくしてしまえばいい。
しかし声の主を見つけることは出来なかった。目があることはわかっているのに、それを上手く使えない。体も上手く動かせない。出来ることは、ただ声を上げて泣くことだった。
そう、泣いているのは、
「はじめまして」
泣きわめく声の中に、一際通る声が響いた。その声と同時に柔らかい何かに包まれる感触がする。
何が起きたのか。それを思考しようとして、意識は途絶えた。