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聞きなれた声
自分が生きた中で一番耳にしたことがある声。それは間違いなく苦しむ声だろう。悲鳴や嗚咽、形は様々だがどれも苦痛の滲むもので。ある意味一番聞きなれた、身近にあった音である。
何が起きているのかは相変わらず分からないが、闇の中から光が差し込んだ。すぐ近くにも思えるそれは、身動きが思ったように取れない俺にはあまりにも遠かった。しかし、それは徐々に近づいて来ている気もして。そしてその先からは、聞きなれたあの苦しみの交じった声が聞こえるのだ。俺のせいだろうか。はたまた見えぬどこかで誰かが苦しんでいるのだろうか。
どうでもいい。
どうせ、もう俺には関係ないことだろうから。