~第二部 下層フリーター爆誕編~ 第9話 そして、ニートは終わった...。
ニート時代を振り返り、キャンプを満喫するニート...。
..久々のキャンプなんて幼少期の時以来だ...。そう思いながらも俺はおっさんが立ててくれたテントの中で寝袋に入りながら、今回のことを振り返った...。
..中層地区にあったホームレス専用の宿舎を追われて以来、こんな下層地区に続く洞窟に向かい、更に、探索者たちの戦闘にも巻き込まれ、散々であるが、何とか、休憩できる危険生物もいない空間に出た...。
そして、何とかそこでテントに建てていき、晩飯もそこで食べた...。
..しかし、あの酒盛りと言い、晩御飯といい、まさしくネットサーフィンで見たいわゆるアウトドア系の男のソロキャンプである豪華な晩御飯だった...。特にガーリック飯と肉団子入り野菜スープが旨かった...。
...だが、こんなことがあっても、俺はネガティブなことも考えてしまう...。
ニートのときは、誰しもいつかは現実を見なければいけない、と思い、ネットで情報を漁ってみたが...。どうあがいても空想は虚無なもので、それで消費した時間は戻らない...。
くだらない空虚な時間はもう戻らない...。ニートしていたところは、このような毎日がただ単に流れていくだけだったのに、その中でも何の生産性もない行動の数々を起こしてきたわけだが...。
まあ..、過ぎてしまったことはどうしようもなく、弁明するチャンスも失い、さらには家を追い出されたため、実質、家族との縁は切れたも同然...、いや、切れたからこそ、後ろ盾も経歴も文字通りないのであるのだ...。
無職の末路は悲惨なものが多いと掲示板のスレ内で自〇の文字や生活困難という問題が提議され、意味のない議論が多かった...。
..こんな時代になってまでも、俺たち人間の寿命も長くなり、倫理観、文明すらも20世紀の人間より高くなったと学校の授業では禿げ頭の教師がベラベラと喋っていたが、俺たちニートや社畜の扱いは変わってないんだから、結局、いつの時代もお偉いさんによる国民の扱いは変わってないんだな、と俺は常々、思いつつ...。
「..いや、これ考えたら意味ないし、思考が堂々巡りで何も生産性ねえな、これ...。」
..だが、寝袋の中でも頭が覚醒してしまい、中々寝付けない...。明日早いとおっさんに言われているのに、眠れない...。
仕方なく、俺は寝袋の中から起き上がり、辺りを見回す...。俺たちが寝ている場所では天井にある光る鉱石が多く、明るい..。また、その近くには燃え続けている焚火や付近の壁からチョロチョロと水が流れ落ちている音が聞こえる...。
また、その付近にはおっさんが発動したデバイス魔術式のドローンが周辺を回っており、おっさんはウトウトしながら、焚火の番を行っていた...。
..焚火の方を確認すると、未だに炎がぱちぱちと音を立て燃え盛り、しかしながらも、その木片の少なさから今にも燃え尽きそうだ...。
「..やっぱり、この音と火の色合いが落ち着くな...。」
そんなくだらない独り言を零しつつ、俺は焚火の場所に向かっていった...。ニート時代のころ、こういうアウトドア系のイベントは一生無縁な人生を送るんだろうな、と思っていたが...、家を追い出された挙句、命まで狙われ、正直、ここ一日でいつ死んでもおかしくない事態に巻き込まれ、今までの中で悪い意味で濃い人生を送っている気がした...。
..二日前の俺ならば、このような体験をすることになるとは夢にまで思わなかったはずだろう...。
今頃は、近場の公園でホームレスでもやりながら、今後の生活に絶望を感じていたはずで、自身の死に関して妄想にふけっていたはずだ...。
..はあっっ...。やっぱり、タラレバや今後のことを考えると、お先真っ暗で俺の将来完全に詰んでんな...、と絶望感を感じつつ、俺は焚火のゆらゆら揺れる炎を眺めながら、..考えることを止めた...。
「...うん。..もう..、寝よう...。そうした方がいい...。」
..そんな言葉を零しつつ、俺は隣で舟をコクコクと漕いでいるおっさんの肩に視線を移し...、声をかけた...。
「..おーいっ...おっさん..、大丈夫かーーっ?」
少し、声のトーンを上げて、大きな声でかけてみる...。すると...。
「...おっほうっっっ!??」
..野太いが驚いた声をおっさんは上げて...、気づいたら、俺の後ろ側に回り、首に腰につけてあったはずのナイフを当てていた...。
..思わず、俺の背筋からヒヤリと温度が下がり、冷たい視線がこちらを貫き、首に冷や汗が流れたような気がした...。
..しかし、そんなおっさんの様子は、唇はわなわなと震え、俺の首筋に当てていたナイフも少し震えていることが見て確認出来た...。
「...なっっ?!!..なにやってんだ..、お前!?」
彼は驚きつつ、声が震えてはいるものの、俺の首筋に当てていたナイフをゆっくりと腰に付いた鞘に戻し、"...ハアッ..."、と小さく溜息を一息つくと、少し抗議するような不満気な視線で俺を人睨みした...。
「..えっ...??...でも、おっさんが...。」
俺はそのように冷や汗ダラダラで焦りながら、なんとか言葉を発すると...、おっさんがその対応に、少し眉を吊り上げ、勢いよく口を開いた...。
「..いやいや、俺は寝てねえよ!?バカじゃねえのか?!...それとも、俺を疑っているのか?!!」
...そうおっさんは怒りながら言い放ち、冷ややかな眼を向けられた...。その反応から、めちゃくちゃ、怒っていらっしゃったのが分かる...。
いやしかし、さっきまでアンタ、俺の横でウトウト、舟漕いでいただろ?、と俺は言いたい言葉を現在のおっさんの様子を確認し、飲み込んだ...。
...現在、非常にこちらに冷ややかな眼を向けながら、焚火の近くにあった持ってきたパイプ椅子に座っている...。
..なんか変な色ついた怖いオーラみたいなの出ているわ、警戒を解いたものの、冷えた視線感じるし...。...謝るか...。
「...う..、疑って、すいませんでした...。」
..そんな感じで恐る恐る俺は謝罪を控えめに行った...。しかし、俺の声が小さくアチラに届いてなかったのか、おっさんは、眉をひそめ、口元を歪め、聞き返した...。
「..あっ?聞こえねえよ...。もうちょい大きな声で言ってくれ...。」
そんなことを抗議するような主張をされ、俺は再度、声を絞りだして声量を上げた...。
「すっっ..!!っっ疑って...、すみませんでしたッッ!!」
そう俺はきちんと立って謝罪角度を90度に腰を曲げて謝罪した...。
..その様子を見たおっさんはその様子に少し眉を上げて驚いたものの、すぐにハアーッと短く溜息をついて、呆れた口調でこう言い放った...。
「..まあ。俺もお前に対して昔の仕事の癖で首筋にナイフ当てて年甲斐もなく、脅してビビらせたし、一歩譲って、今回はここまでで許す...。もう、今後一切、こんなことやらんように気をつけろよな...。あと、ガチ目に明日早く出るから、今のうちに無理にでもテント戻って寝とけ...。..分かったな?」
..そうおっさんは言い終わると、視線を焚火に戻した...。俺はその言葉を聞いて今度こそ、大人しくテントに戻った...。
...こうして、こんな感じで俺たちの洞窟内での初めの夜は終わった...。果たして明日、未来に暗闇しかない俺たちに待ち受けている下層地区はどんな光景を見せてくれるのか...。
..それは、そのときしか分からないだろ...。
下層地区は一体、どんなところだろ...?漠然とした不安しかない...。
by.とある家を追い出されたニート