~第二部 下層フリーター爆誕編~ 第4話 "屑鉄の精神"と"不屈の番犬"
...ゲームでの暗闇の洞窟は怖い、というスレに対して、300万の"いいね!"がつきました!!
..そんな画面を見たニートの一言...。
「...よし。寝よう...。」
野田 瞳、ニート生活の合間にあった日常の記憶...。
..走ってからかなりの時間がかかった...。なんで、こんなことになっているのか等の考えが頭中を巡ったが、すぐさま、その考えを振り返った...。
..ここまで歩いてきたのに、こんなトラブルに巻き込まれるなんて...。
...ネットで書いてあったことや世間の新聞による情報網から得て、想定をしていた事態を想像していたが、まさか自分がこんなトラブルに会うなんて思ってもみなかった...。
..実際にこんな事態に会っても、現実感がないというか、こんなに命の危機に追られていても、悲しいかな..。先ほど、人に命を狙われたばっかりか..、ついてないトラブルがこちらに着いて回っている...。
「..だが、こんな状況になるとは思わないに決まってんだろ!!」
初級のデバイス魔術で強化した両足で必死に走りながら俺はそう思った...。中級デバイス魔術は選ばれたやつしか使えないが..、初級デバイス魔術でここまで走れるとは俺も思ってなかった...。
初級デバイス魔術で足の脚力強化の魔術経路を足の筋肉繊維一本一本に魔力を通しつつ、
しかしながら、走らなければ命を失う可能性が高いわけで...、死の危険を身近に感じるとは思わなかった..。
命の危険がいくつもある迷宮のうちの一つに今、俺はいる...。下層地区に行くためにそのリスクは常々、ネットやテレビなどの情報網しかない俺だが、理解していたはずだ...。
..今まで走ってきた両足の魔術経路が"べきべき"と音を立てる...。
..どうも、俺の中にある魔力が尽きかけて、足の脚力強化に使用した魔術経路が崩壊していっているのを直に感じる...。
「...クソッ..。..クソッ...。やっと...、ここまで..、来たってのに...!!なんで、こんなタイミングに...‼」
..俺は走る足を休ませずにそのまま、荒い呼吸をしながら、罵倒を吐いた...。
身体の節々が痛く、足はもうとっくに限界を迎えてもおかしくない...。しかし、それを俺の生存本能は許すことはなく、荒い息と罵倒を吐きながら、俺は前に向かってただただ走る...。
...あと、数メートルで前にいるおっさんに追いつける...!!そう思いながら片足を一歩前へ踏み出す...。
"..ベキッ!!"
「..アッ...、」
..そのとき、俺の足からヤバい音が聞こえた...。まるで何かが折られかけられる音のような..、壊れるような音が...。
"...ベキベキッッ!!...バキッ!!"
..脚にかけていた魔術経路が崩壊する大きな音が内側からする...。それに合わせて大きく"バキッ"という音が俺の両足から鳴った...。
それと同時に....。
「..~~~ッッグッ!!グッ...ァァ...、ッア″アア″アアア″ッッッ!!!」
..その瞬間、悶絶するほどの激痛が俺の足に走った...。それは俺の足の骨が折れた音だった...。
前のめりに走っていたためか、俺は"ドタンッ"と前で倒れ、片足を抑えることも出来ず、もんどりをうつことになった...。
..その間に後ろにいる魔物が迫ってくる...。大型獣のような呼吸音とススッーーと何かが動く音が付近から聞こえる...。
..こんな状態で悶絶しているわけなのだから、恰好の獲物だろう俺は、未だに悶絶し動けずにいる...。
自身に死の危険が迫っているのにもかかわらず、俺は声にならない悲鳴を押し殺しながら、両腕をバタバタと前へ前へともがき足掻く...。
...前にいるおっさんには気づきもしないだろうが、このような場所で死ぬわけにはいかないからだ...。
....俺はこのまま喰われて死ぬのだろうか...?...本当に俺の人生、ここまでなのだろうか...?
..引きこもってニートになって以来、家族に冷遇され、同学年から忘れ去られ、家を追い出された...。さらに...、中層地区なのに、命すらも狙われたのだ...。
自分が不甲斐ないとは思うが、あまり関わってないおっさんにすら呆れられ、憤慨される始末だ...。
..正直、生きていて良いのか?とも思うレベルだが、俺は惰性ながらもこうして五体満足で生きてこれた...。
...一人で生きている術が身についている訳ではないが、これでももう30台のいい年こいたお兄さんであるので、体力なくとも頑張って来れた...。
..だが、しかし...。
「...死ん...で、...たま..るかっっ...!!こんな..クッ..ソ..みたい..な....で...っっ!!!」
..なぜかは分からないが"死にたくない"という渇望と"諦めたくない"という思いが心から強く沸々と湧き上がる...。
湧き上がった気持ちと共に唇を強くかみしめながら、そこから出た鉄の味を味わいながら、俺は前にうずくまっていた際に使っていた腕を前にあるおっさんが先に点けてくれたであろう目印となる松明の仄かに部屋を照らす炎を目指し、伸ばした...。
だが、後ろのほうにいるであろう魔物が身近に迫ってきたのを感じる...。
"..もう少しだというのに...!!"心の声がそうこだまするが、俺は身体を限界まで酷使した大きな疲労と後ろから来た恐怖、絶望感によって、心の何かが折れた音がした...。
「...あっ..。」
...どうやら俺は限界のようだ..。その恐怖から来る諦めと自身の今までの行動による疲労から俺は額から何かドロッとしたものが流れたのを感じる...。そしてその感触を肌で感じたためか、俺は腕を下に降ろしてしまった...。そして、身体から熱が消えゆき、どんどん冷えてくるのを感じる...。
ここで気づいたが、どうやら俺は重度の魔力欠乏症になってしまったらしく、俺の頭からは現在少量ではあるが、額が割れ、血が流れている...。
...意識が混濁し、口から声にならないうめき声のようなものが出る..。しかし、それを俺はどんなことを言ったのか認識できなかった...。
...そのとき、前から何か閃光のようなものが走ったのが見えた...。
「ッ....?」
それは一瞬ではあったが、それが前方から放たれたことだけは分かった...。
..それが放たれた瞬間...。
「ggyaonn~~~~ッッ!!!」
「...ッッ..!!ピギッッ~~~!!」
..いきなり、2体の魔物たちの悲鳴が迷宮内で響いた...。"ドサリッ"、と大きな音が2回もしたかと思うと、まるで何か風を切ったような"シュッ"とした鋭い音がこの閉鎖的な空間で響いた...。
「...ったく..。あぶねえところだな..。こっちは~~..、あっ...。」
..そんな先ほどまで聞き覚えがある間の抜けた声が聞こえたと思いきや、俺の意識はそこまでで暗闇にた.落ちていった..。
病人には回復するという楽しみがある。
~寺田寅彦ー物理学者 名言~