第一部 ニートな俺たち 第12話 どうしようもない独白
......今までで得てきた経験は無駄ではないとのことを誰かは得意げに言ったが、その大事な経験を落としたニートの俺はどうすればいいのだろうか...?
...正直、隣に座った神妙な顔つきをしたおっさんの話を今まで聞いていたが、話は長いし、どういう感じで反応に返せばいいのか分からなかった。
だって、会社の経験の話をしてくれるんだなって思っていたら、途中から人が死んで、上流にいる階級のやつらへの憤りを言い始めやがったし、もうどう反応に返せばいいのか迷う...。
...というか、このおっさん、一体全体、何者なんだ?あの企業って、まさか〇〇〇カンパニーだよな?!
...やべえよ..。このおっさん、なんで、皆が憧れる夢の大企業に受かって、そこで生活していたのに...、ナンデ、やめちゃうんだよ...。...えっ。その大企業にブラック事業部??...嘘だろ、オイ!?マジで怖えな、その会社...。...いや、ニートもニートで悪いのかもしれないけどさ...。
...もういやだ。絶対、こんなん他のサイトにも載せられないようなこと話しているよ,,,、これ...。どうしよう...。正直、もう聞きたくない、というか、頼むからそんなマジで重たい話を振らないでほしい...、切実に...。
しかし、俺にはこの話を聞いてもどうすることも出来なかった...。おっさんの言う通り相槌を打ってみるが、おっさんみたいな苦労を経験したわけでもないから、その気持ちは分からない...。正直な感想を言うと、かなり辛く、厳しい状況でどん底に落とされた挙句、会社にクビを宣告されたただ一人の男、という特徴が分かっただけだ...。
...なんで、俺は会社を辞めたおっさんの話を真面目に聞いているのかが分からなくなった..。正直、これ、俺みたいなダメダメニートが聞いてはいけない話だったのでは?、という気持ちでいっぱいだった...。
まあ、もうどうでもいいか...。俺みたいなクズに出来ることはこのおっさんの言う通り、相手の言っていることを聞いて、いちいち頷くことだけだ。馬鹿みたいに頷いた後、俺はため息をつき、公園に設置されている自動販売機の方に向かい、ジャージに付いている右ポケットの中にあるなけなしの金になる100円の硬貨を2枚、取り出した。
その後、硬貨入れに入れて、自動販売機の一番上にあるペットボトルの水が売ってあるボタンを2回押し、取り出し口から水が入ったペットボトル飲料を2つ取り出した。
ふと、おっさんの方を見てみると、過去にあった出来事を思い出して、精神的に消耗したのか、喋り疲れたのか、はたまたその両方か...、とにかくおっさんは死んだ目をしながら、どんよりした空気をまといながら、座っていた...。そんなおっさんに俺は、先ほど購入した飲料水を差し出した。
ありがとう、と礼を言って、ベンチに座っていたおっさんは、俺が持っていた飲料水を受け取り、一気に半分ほど飲み干してしまった。
...そこから、落ち着いたおっさんとは他愛もない話をした。主に今後の生活についてやお互いの就活状況についてだ...。俺は久しぶりに人に話すせいか、口が上手く回らなかったが、今までのニート生活で得たボキャブラリー(一般生活で使われることのないゲームや雑学等の専門知識)をパソコンの前でボーッと見ていたり、それを使ってアニメ批評をしたりしていたことをおっさんに伝えた...。
おっさんは俺が話すのを俺の目を見ながら、話しの間に相槌を打ちながら真摯に聞いてくれた。そこから今までで起きたことについても手短に一緒に住んでいた家族から追い出されたことについても聞かれた。
いきなりの質問だったので、少し驚きながら思い出そうとしたその時...。
[...ッッ~~~!!」
いきなり、胸が何かで締め付けられるような圧迫感や目の前の世界がグニャリと歪んだ...。
...今までにない強い目眩や吐き気がする。嫌な記憶である家族や友人だと思っていた人の顔が出来事がフラッシュバックで浮かぶ...。それと同時に今までで見てきた中で段々(だんだん)と日に日に落ちぶれていく自分の日々が浮かんだ...。
そして、俺は立っていなくなり、口を手で覆って、地面に膝をついた。吐き気と強い目眩がする...。久々に人と話したのが悪いのか、それともこの思い出が心を締め付けるのが悪いのか、その両方ともが原因なのかと思い、その両方だろうな、とそんな最低最悪な自身に自己嫌悪の感情を向けながら内心で悪態をつき、罵倒し、自身を無理やり立ち上がらせた...。
おっさんから見ても今の俺のこの状況は異常に見えたらしく、すかさず、“大丈夫か、水飲むか”、と心配そうな声をかけてくる...。
....正直、申し訳ないな、と思う反面、うるさいな、と悪態をついた自分の中を見て、自分最低だな、と思いながら、俺は、その場に倒れた...。
...夜中の公園にベンチがあるその場には倒れているジャージを着た青年を甲斐甲斐しくも看病をする一人の壮年のスーツを着たサラリーマンの姿が監視カメラに写っていた...。
“......ヤタガラス観測帳ナンバー.F215.PM;10:40:30の出来事である。今だに被験者A9776番は被験者D046番と接触したが、影響はない...”との音声が誰にも気づかれない場所で鳴っていることは、この都市の誰も気づかなかった...。
おっさん「(やべえ質問しちまったな...。どうしよう、これ...。とりあえず、ベンチ運ぼう.........┗(`・ω・´)┛フンヌッ!)」
俺「スヤ...~~( ˘ω˘ )」
おっさん「.......(マジでどうしよう、この状況)(´・ω・`)」