第一部 ニートな俺たち 第11話 “前に進むものの影”
設定を書くのは、後々に書きます。お久しぶりです。桜兎の梅花です。今回は物語の序盤の後半になりました。では、どうぞ。
...さて、どこから話を語ろうか。この世の中には人間が文明を築き上げるために必要なものが存在する...。それは“食料などの膨大な資源”、“その時代に合った技術”、”安住な住処”だと俺は思っている。
...いつの日にか、“企業”に入ってから間もない頃、俺はかつてあった夢を懐かしき青春時代の思い出と共に忘却し、徹夜続きで黙々(もくもく)と自身に課せられた日に日にくる仕事を作業状態で残業も含めて直ぐに終わらせて、上司にねちねち苦言と罵倒を言われ続け、そのどうでもいいことを聞き流しがら飯を食い、ネットサーフィンをして眠る日々(ひび)を繰り返すのが俺のルーティーンとなっていた...。
...ますます、社会に出たくなくなったって?
....そら、お前からしたらそうだろうな。今までぬくぬくと温室で安全な住処を与えられ、そこで親鳥から飯をもらい続けて、ぶくぶくと体だけが大きく育っていき、必要となる人間関係すら作ることさえ出来ない。精神だけは徐々(じょじょ)に歪み、腐っていく環境にいるということに気づきながら、現状維持という選択肢の一択しかとれないお前にとってはな...。
...おいおい、そこでキレるなよ。本題はまだだってのによ...。
まあ...、今のお前見たら、親の愛情や期待が本格的に注がれたのが人生で12歳のときまで...、さてさて、それ以外の23年間は...。
...うわっ。こりゃひでえな。ほとんど家族に虫のように見下され、無視と毒入りの飯を自室にほぼ引きこもり、ゲームと就寝、ネット、情報漁り、偽造したアカウントでのストレス発散やハッキングを繰り返しながら、食い続ける日々か...。
どうりでそんなに痩身で肌の血色も悪いわけだ...。しかも今気づいたが、服も20年前に親にニートがうちにいない建前のために着させられた服を今まで着続けてきたわけか...。
...へえ、親も妹も最先端のエリート魔術師の家系の中流階級の一般人ね.....。
はあ...。その“中流階級”って言葉、久しぶりに聞いたよ..。
...いや、話を逸らしてしまってすまなかったな....。さて、俺の話に戻るか。
...確か、俺が就活に成功して、三十路のころに行っていた仕事というのが、脳に埋め込まれているマジックスキル・マイクロチップの能力を行使するために各々(おのおの)の皮膚下に埋め込まれているマイクロチップの一種である“刻印型マジックスキル制御装置”を素行の悪い奴らから回収する仕事と偶に湧き出てくる魔獣退治を受けていた。
一応、二つとも正式に上流のエリートが毎年に夢を追って入ってくる企業の一つだ...。
ネット上では、転職者の中でも随分なホワイト企業に認定され、最近のニュースでは正式にホワイト企業の中でのベスト1位や世界のエリート学生たちが一度は入りたい会社とも言われている企業だ...。
...ああ、福利厚生や保険制度もしっかりしていたよ。
部隊チームが組まれたマトモな形式の沿った契約が履行された羽振りがいい仕事だったのだが......。
..だが、俺は“とある事情”から、その花形組織の部隊から外され、今までにかけて、業界でも話題が尽きず、主に悪い噂というか、実話でやばいと言われ、関わりたくないランキング1位に入る過去最悪と言われる部隊チーム“赤い陥没後”と謳われるところに転属されることになった...。
...そこからの60年は本当に長かった。樹海に覆われた集落を進めば魔獣や蛮族と化してしまった先住民ではない旧世代のナノマシーンロボットに襲われ、地下迷宮にあるお宝を探しに行ったら、それこそ、世紀末な生物になぜかイチャモンを付けられ、正直なところ、思い出したくもない散々(さんざん)な記憶ばっかだ...。
...これ以上は聞くのが無駄だって?いやいや、話はここからが本番だ...。
そんなこんなで、最悪の部隊に入った俺だったが、まあ、その中での人間関係は最初は良好だったさ。特に軍部高等学校からの付き合いだった星野 有栖とは会社内の寮に一緒になったときはお互いに肩組んで、これからもよろしく、と挨拶をしたくらいだ。
アイツと最初にあったとき、隣の席に座ったのが、星野だったさ。最初はこの金髪のイケメンでなんでこんなところに場違いのやつがいるのかが不思議なくらい顔面偏差値が高いんだわ。これが。
さらに下校時間や休み時間、放課後に至るまで毎度毎度に違う女を連れてやがるし、最初はリアルに充実したパーティーピーポーだなっ、て思ったさ。しかし、そんな見た目でもアイツは他の上流階級にいるやつらとは何かが違ったんだ...。こいつがまた話上手で人が良くてな。
最初にアイツの周りにはアイツ自身と同じ上流の階級のやつらがズラッと並んでいたのに、アイツは突然、他の自分より低い階級のやつに話しかけていって、日を重ねるごとにどんな立場のやつでも仲良くなっていく様子を毎回、唖然とした顔で毎度のこと見ていたさ...。
凄すぎだわ。ボケ。正直、こんな人種が世の中にはいるんだな、と初めて思ったぐらいだ。どんなに気難しいやつでもやつを嫌いになるやつはいなかったし、何より皆アイツを慕ってた...。
そんな中、突然に聞いてきたんだよ。アイツ。“このあと、一緒にご飯食べながら話さないか?”ってな。俺は低い身分だったし、何より、学食をおごるって言われたから、付いて行ったよ。
そしたら、アイツが俺に対して、“中華料理の作り方教えてくれ!!"って頼んできたんだよ。...分かるわ。正直、俺も"ハッ!?"って思ったよ。
..で、聞いてみたのよ。その理由を...。そしたら、“いつも付き添いで来てもらっている先輩方にお礼がしたいから、男の手料理というやつを作ってみて、彼女たちを喜ばせたい”って、言ってきたわけよ。
そこから、断る理由もないから、協力したら、後にめちゃくちゃ感謝されて、”アニキ”と呼ばれるようになったぜ。なぜだ?まあ、それがアイツとのなれそめだな。そこから、アイツと一緒にいること話すことが多くなってきて、2ヵ月後にはお互い気心がしれる仲になったんだよな。
それから、徐々(じょじょ)にアイツの考え、アイツの周りにいる女性や友人と話すことも増えていって、俺も上流階級のやつらに関する見方も幅広くなった...。アイツの周りとアイツは人格者の一人であることに気づいたのもそのころだったよ...
...本当に人が良いやつだったさ。赤字続きの軍部高等学校からの付き合いだけど身分を気にせずに話せた数少ない一人がアイツだった...。
何より、会社に入ったばかりのころに緊張をほぐそうとしてきたし、何よりアイツは新人の中で構成された部隊の中でも射撃訓練、魔獣や人を対象とした格闘訓練や他の成績においては、会社の中でも全部業績1位をかっさらっていく強者中の強者だった...。
正直、なんでこんなやつが一般人の中で低い階級に生まれた俺に優しくしてくれるんだか不思議でしょうがなかったさ...。
しかしな...。そんな良いやつが過去最悪と噂で言われている部隊に所属したら、どうなるか...、っていう末路を俺は見ちまった...。
..あのときにあの光景を見ちまったからには、もう俺はマトモじゃなくなっていた...。
あの日にみた光景を忘れ去るために酒にたよるようになった、薬に手を付けた...。でも、どれを試してもダメだったさ...。
それで、引きこもったんだが、これが一番ダメでさ...。引きこもったら引きこもったらで部屋から出る勇気が湧かなくなるんだよな...。それで手続きやって、部屋にこもって1ヶ月こもった際に、さすがに途中で食料がなくなって、コンビニにいってみたら、会社の同僚がいて、アイツのことを笑ってバカにしてやがったんだよ。というより、アイツの死を馬鹿にしやがった...。
...まあ、俺は顔を見られても関わりがなかったから、何も言われなかったから問題はおきなかったさ。しかしな。俺が会社付近のコンビニに居たらたまたま、アイツにいつも付き添ってた先輩が来たんだよ...。
それで、ソイツもアイツのことを馬鹿にしやがった...。ただ、それだけの話だ...。アイツを褒めたたえていたくせに、アイツに前戦を任せていたくせに。上流階級はアイツの生き方をコケにしやがった...。
...........とにかく、それ以外の要因もあって、俺は全てが馬鹿らしくなって会社では事務職に移動して、クソどもと関わりのない企業に転職した。
「...まあ、それでも上手くいかなかったからな....。58年経ってでこんなことになるなんて思わなかったな...。」
友を失った男はニートに自身が経験したことを語り、ニートは自身の思いを胸にしまい、語りだす...。
次回、ニートはサラリーマンに思いのたけをぶちまける...。
終わり...?