第一部 ニートな俺たち 第10話 “Q.その瞳には何が見える?- A. 目隠しされているから、前が見えない...(´;ω;`) ”
目隠しは今回は関係ないです。
.....俺の昔の話だ。今では立派な独身貴族ではあるが....、少年から青年だった頃は自身の夢を追って小学校、中学校と上がっていくことによって、自分の夢について考えて、希望があった......。
しかし、現実は違う。13歳の頃、俺の心は“生まれ持った才能”、“生まれ持った裕福な環境”という現実に完全に折られた.......。
そこから俺の引きこもり人生が始まった.....。家では菓子を貪りながら、娯楽であるネットゲーム、アニメを楽しみまくっていた。ちょうど36歳になったときがニートピーク時だったな...。
夕方に家の近くに建っていたアニメ・ゲームショップで大人なビデオを買い漁り、帰ってからは親が作ってくれた夕食を口に流し込みながら、同じ引きこもり仲間とネトゲをしている毎日を過ごしていた。.....働くことは頭の中にはなかった.....。
...毎日が楽しければいいと思っていた...。しかし、周りはいい顔をしなかった。同世代のやつとも友人になれないおれを親は情けない、と言いながらも、俺が引きこもり脱却すると信じて、夕食代と最低限の生活費は置いてくれた。ネット回線は、“超仮想電脳情報社会回線”という分けわかんないほど、大きな情報網になっていたため、俺たちニートにとってはかなり便利な時代だった。
荷物の持ち運び、受け取りもAIがやってくれて、医者に身体を見せずとも、一家庭に一つある政府から配布された健康管理AIで診てもらい、即座に身体に異常なところがあれば、万能電脳薬というカプセルを飲んで、中に入っているAIとAIが調合した薬成分によって、世界中のほとんどの先進国の住人たちは病気知らずな身体となった。
また、ほとんどがAIによってできてしまったため、医者や科学者、パイロット、バス運転手、運動選手、料理人、秘書、事務係員....などの職業がどんどんAIに置き換わっていたため、俺がニートをやっていた時期である西暦2015年頃、ほとんどの職業は衰退した。
そのためか、人間がやれる仕事が減り、職を探す人に日本は溢れかえった。若者の貧困化は深刻化し、高齢者も無理にでも働かざる負えなくなった。当時、隣国ではやっていた年金、退職金という仕組みはないため、地方、都市での貧困化は進んでいた。
このころは、いつも俺の周りでは世間が悪いニュースばかりを流して、正直、ウンザリしていた....。いつも見ているチャットでも社畜がニートになる宣言をしていき、次の日になったら俺たちニートを馬鹿にしてあおり合戦を開始する、という日常のルーティーンと化していった.......。
かなり前にやばい、と思って行動したって、無駄、無駄、無駄、どうせお前には無理なんだ、38にもなって職歴もないお前には会社勤めなんて無理、人間失格なんだ、と面接先の20代の爽やかスマイルの面接官に言われた。親からは行動するのが遅すぎると言われた。ネットばかり見ているからいけないんだ、とも言われた。それでも親にもう迷惑かけたくないから、バイトの面接にも行った.....。とにかく働けば親に認めてもらえるんじゃないかと思って働こうと思って行動した....。
しかし、バイト先での扱いは酷かった。毎日、20代の同期にはコケに扱われた。無理もない。もともとの体力が違うのだ。引きこもりと体育系の学生との体力を比較するな、と思った。しかし、当時、自分に自信のなかったコミュ障の俺が誇れる唯一、手に出来た仕事がこのバイトだったのでやめたくなかった.....。やめたくない一心で必死に働いた。確かに物覚えも、手癖も悪かったが自分なりに出来ることをできうる限り行えばどうにか良くなる、と俺は思って頑張った.......。
しかし、現実は非常だった.......。初めて手に出来た仕事は僅か3か月という期間で幕を強制的にクビという形で終幕を下ろされ、挙句の果てには、その後の仕事探しの履歴として残ることとなった。当時38歳だった俺が当然仕事に受かるわけでもなく、派遣もやろうと試みたが、会社側の面接官に“38歳でこのバイト経験ではちょっと....”と断られた...。他の企業でも同じだった。そこから、親からの勘当までの期間はそう長くはなかった.........。
......最悪な始まりはいつも突然に来る。その日の俺は41歳になっても定職にありつけず、職探しに明け暮れていた最中の出来事だった。この日の夕方に俺の面接が終わったときだった。その時の俺の精神はもう現実という攻撃でボロボロで泣きそうだったが、それでも耐えて家に帰宅したときのことだった。普段は家に帰ってきたら母親が文句を言いながらも出迎えてくれるのだが、今回はそれはないらしい。早速玄関から家中に入ったときだった。....俺が変化に気づいたのは.......。
カーンッ、カーンッ、カーンッ!!!!
.........遠くから鐘の音が聞こえる...。ああ....、なんだか目の前がいきなり眩しく.....。
「起きろっ!!D119番!!号令の時間だ!!」
....ああ、嫌な現実に戻ってきちまったな....。今現在、西暦約3045年頃、AI社会と人類の英知の結晶と呼ばれる魔術と科学が融合した社会が日本で形成され、今では、全ての知見が調和された時代に突入していると外では言っているが、“第三の裁定者が来る時代”と呼ばれている......。
俺はその第3の裁定者については分からないが、第1の裁定者については知っていたため、この先、どういう時代になりえるかは予測はつかないが、この先の未来で人類は多くの災難と困難に巻き込まれる可能性が高いことを示していることは分かる......。
俺は移動しながら考えていた....。
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「D119番...。悪いんだけどよ...。そこ変わってくれねえか...。監視官の視線がさ...。」
「....A1289番...。またか...。今度はなにやらかしたんだ...?...薬か?女か?」
「いやいや、違うさ!!むしろ、それより、生産性があるものさッ!!」
「....というと?...また、例のア'レ'か...?」
「...ああ、そのとおり。例のアレさ...。今度、ウチの牢に来たら見せてやるよ。」
「....いや,辞めておくよ...。何分と今週は暇がなくてね....。時間があいてないんだよ...。」
「ハァ~~。分かってね~な、お前は...。だからこそやるんだよ!こんな忙しい中での娯楽はコレ(,,)くらいなのに...。それをお前は...。」
彼はため息をつきながら自身の自慢の長い銀髪をかき分けてから、ボリボリと痒そうに掻いた。
「D119番、いいか?俺たちは人間だ。たとえ長く生かされようとも、この体がある限り、個人の自由を求める意思は変わらない...。このクソみたいな労働環境下で出口がないように見える牢獄の中でもだ。いつか外に出て、自由になる日を俺らは求めている...。」
「...それはお前だけだ。A1289番。誰もがそれを望んでいるわけではない。」
「まあ、ここからガチで出ようとするやつは多くはいないだろうな。しかし、お前も他のやつも大概クソ野郎だな。」
“まあ、俺もその内の一人だが”、と彼は皮肉げに口角をゆがめて薄気味悪い笑みを浮かべながら俺がいる背後の鉄格子で囲まれた牢屋の方に視線を向けて言い放った。
そして、俺はそこにふと視線を向けた後、すぐに下にある作業場の机に視線を戻し、直ぐに自身の作業に戻った。
...肉体労働はきついと思うので、今回は作業場で何かの機械工具を作っている感じにしました。