アイリ、謎の男に目をつけられる
ドレスの宣伝と謎の男の回。
──このドレスもやはり人気だった。
陽の光を浴びてキラキラと輝くガラスビーズは目立つようで、様々な令嬢や奥様たちに、ガラスビーズの美しさを褒めてもらえた。
なので、ここぞとばかりに、ベルチェガラスを売り込んできた!!!!
宝石よりも安価で、ドレスにふんだんに付けられることや、色味やビーズやモチーフの豊富さをアピールしてみた。
目の前でくるっと回ると、令嬢たちに先日のダンスでもキラキラして可愛かった、と褒められた。
──そこの可愛いお嬢さんたち〜☆ 夜会で踊る時に目立っていいですぜ〜☆ ガラスビーズ! いかがですかぁ〜!!!!(心の声)
奥様や令嬢たちには、ベルチェ領のガラス工房のキラキラとした光景が素晴らしい、と宣伝しておいた。きっと観光にいらしてくれる人もいるだろう。
この間のグラスのお礼に、エリオ君の家のガラス工房の話も少ししておいた♪
『アイリ〜! ドレスに光当たるようにしたよ〜!!!!』
『僕たちキラキラしてるのだいすきー! 最高〜!』
──どうやら精霊たちがドレスに陽の光が当たるように、何かしてくれていたらしい。
精霊たちはキラキラした物も好きなのね? ガラスだから、生命ではないけれど、光るのが心地良いのかもしれない。
「──へぇ、あの精霊たちが自らの意思で動くなんて……君、面白いね。さすが国王陛下の婚約者様だ」
「──あら、精霊たちが見えるのですね? あの、失礼ですがお名前をお伺いしても? 私、本日デビュタントしたばかりですので……申し訳ないのですが……」
──っ! 全然気付かなかった。いつの間にいた?
紫の魔力に覆われたその男は、隣国アングラードの商人だと名乗った。たしかに、服装は貴族らしくはない。──が。
『ねぇアイリ〜、コイツ嫌な感じする〜』
『アイリ、カミーユ呼んだ方がいいよ〜』
精霊たちがコソッと耳打ちしてくる。同感。こいつ胡散臭い。
まず、言えないけど、覆っているのは闇の魔力。てことは、商人というのは嘘で、おそらく王族で、魔法で姿を変えている──
『──カミュ様? お忙しい所失礼します』
『アイリ? どうした?』
『アングラードの商人と名乗る者に接触。商人に化けたアングラードの王族だと思われます。闇の魔力を纏っています』
『待っててすぐ行く』
『いや、下手にカミュ様が動けば、疑っているのがバレてしまいます。何故正体が分かったのか疑問に思われるでしょう』
『──っっ! 分かった。何かあったらすぐ連絡して。とりあえずアルとクロヴィスには伝えておく』
──はぁ……どうするよ? これ。
他国の、しかも情勢的にきな臭い北方アングラードの……おそらく王族相手……荷が重すぎるんですけど!!!!
いやいや、愛理! これも王妃になる訓練よっっ!
「──前はこの王城内って死霊がいっぱいでさ、パーティに参加する度に空気が重いなーって思ってたんだけど。綺麗に居なくなったよねー。精霊たちが増えてるし。それに、陛下、あんなに死霊にまとわりつかれていたのに、きれいさっぱり」
「──ねぇ、君が養生から帰ってきてからだよねぇ。ベルチェ公爵令嬢アイリーン」
──うっわぁ、この人絶対バッチリ見えてるし、なんか勘も冴えまくってるよ!!!! ねぇ、これどうするよ(泣)