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SIDE:シルヴァン─大好きなおねえさま─

シルヴァンの回。読まなくても影響無し。

 シルヴァン視点 小話



 僕には、両親がいない。


 お母様は、僕が小さい時にお亡くなりになった。お父様も2年前にお亡くなりになってしまった。

 お兄様は優しいけれど、年が離れた兄弟だし、何でも出来るすごい人。お兄様は、魔法だって使えるし、武術も強い!

 だから、"兄" というよりは "憧れの存在" なんだ。


 そんなお兄様は、ここ一ヶ月とても明るく、お元気そうに見えた。

 あんなに死霊たちに黒く覆われて、つきまとわれていたのに……



 お兄様にアイリーン嬢と婚約することを教えてもらった時に、彼女の強さと優しさを知った。


 水魔法をかっこよく使いこなし、使用人や街に現れたゴロツキにも負けない強いお嬢様、なのだと聞いた。

 ゴロツキに押しのけられた幼い子どもたちを魔法で咄嗟に救う話は、まるで絵本の王子様みたいでかっこいい!


 お身体が悪く、養生していると聞いていたのに! 可愛らしい令嬢がそんなに強いなんて想像ができなかった。

 いつの間に、そんなにお強くなられたのかな……? 僕にも強い水魔法を教えてくれないかな?



 婚約の儀でお会いした彼女は、とてもお綺麗になっていた。


 お兄様を見つめるお顔は赤くて、そのお顔を眺めるお兄様も嬉しそうで……僕も嬉しいけど、少し寂しくなってしまった。


 僕には、家族がお兄様しかいなくって、お友達だっていない。お兄様が彼女と結婚したら、お兄様はお兄様の家族ができる。

 そしたら、僕はひとりぼっちになってしまう──そんな気がした。



 でも、彼女は、僕に対してもとても優しかった。


 おねえさま、と声をかけると、嬉しそうに微笑みかけてくれるし、いっぱい話し掛けてくれた。

 何より、作ってくれるお菓子が美味しくて、特にお願いしてみた "プリン" は彼女のように甘くて優しい味だった。


 特に優しさを感じたのは、強くなりたいって言った時。

 おねえさまは、否定せずに 『きっとなれる』 って言ってくれた。──お世辞でも、すごく嬉しかった。


 でも、僕は知ってるんだ。お兄様は、特別な闇魔法の使い手。風魔法だって使える。

 僕のような水魔法じゃ、お兄様のように強くなれないんだ。王城内でもお兄様と比べられるしね。



 だけど、おねえさまは快く一緒に魔法鍛錬してくれた。


 僕に足りないのは魔法行使力だって言って、魔法の使い方を教えてくれた。

 おねえさまの教え方はすごく上手で、分かりやすくて……あんなに魔法の鍛錬が楽しかったのは、初めてだった!


 お兄様には申し訳ないけれど、僕はおねえさまのことが好きになった。本当に僕のお姉さまならいいのに……って。



 僕は、おねえさまのことを "すごい" と思っていたけれど、まだまだ分かっていなかった。

 おねえさまの真のすごさを目の当たりにしたのは、僕が襲われた時だった。


 取り憑かれたクレールを素早く足止めすると、僕の腕を素早く止血し、クレールを気絶させ、浄化していた。

 騎士を相手に戦う……その速さも魔法行使力もすごかったが、僕の腕を完璧に治癒してみせた。


 ──やはり、おねえさまは只者ではなかった。



 "聖女様" なのは、知っていたけれど……

 まさか、アイリーン嬢の中身が、お兄様が異世界から召喚した女の子だなんて、目の当たりにしていなければ、とても信じられない。


 だけど、すごく納得してしまった。

 普通の令嬢があんなに機敏に動けるわけがないんだ。しかも、上級の氷魔法まで使うなんて!



 僕を巻き込んでしまったことに、本当に申し訳なさそうな顔をするおねえさま。

 おねえさまは、自分のせいだと思って、僕から離れてしまうのかな……?

 そう思ったら、ちょっと心臓がずきん、って痛んだ。



 ──でも、おねえさまは、やっぱりおねえさまだった!


 『殿下も防御魔法を身に付けましょう! 一緒に鍛錬しませんか?』 ──って、やっぱりおねえさまは普通の令嬢なんかじゃない!!!!


 しかも、霧の質問をしたら、霧を見に連れ出してくれた!!!!

 質問に答えてくれるだけでも嬉しいのに、おねえさまとお兄様と一緒に外に出られるなんて!!!!


 朝の高原はひんやりとしていて、朝霧に濡れた緑が朝日に照らされ、きらきらと光っていて……とても綺麗だった!


 僕、おねえさまに嫌われなくて……本当に良かった。



 ──お兄様だけでなく、僕のことも救ってくれた優しくて強い聖女様。


 僕はまだ、おねえさまより弱いけれど、いつかおねえさまが危険な目にあったら、僕もお役に立ちたい。

 お兄様も、アイリ様を守る会のみなさんも、何よりおねえさまがお強いから……僕の出番なんて無いかもしれないけれど。



 ──あぁ、早くお兄様と結婚して、本当に僕のおねえさまになってほしいな。──だから、2人の邪魔は誰にもさせないよ。




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