アイリ、新たな力を授かる
新たな力を手に入れてしまう回。
───アイリーンの部屋のバルコニー (闇部屋)
「──アイリが夜、よく寝つけないのか寝室をたまに出ていたのは知っていましたけど……こうしてカミーユ様と会っていたのね? カミーユ様も意外とやるわね!」
「あっ……リーニャ、起きてたのね!? 起こさないようにそうっと部屋を出ていたつもりだったんだけど……」
「僕、ずっとアイリのこと覗くのが日課だったから、アイリを見ない日が続くと落ち着かなくって」
──カミュ様! さりげなーく、ストーカー気質を出してくるのやめてくださいっっ!!!!
気にしなくなってたけど、この人! 元☆ストーカー(を使役してた覗き魔っっ)!!!!
「まぁ、私はアイリの味方ですし? 知っていたとしても、逢瀬を止めるなんて無粋なことはしないわ! もう婚約しましたから、カミーユ様が手を出しても大丈夫ですしね?」
「「いや!? 健全なお茶会だよ!?」」
「──まぁ……!」
寝る前の1時間ほどのお茶会! 髪にキスされたくらいですっっ!!!! 何もしてませんっっ!!!!
リーニャ〜! 信じてぇぇぇぇぇっ!!!!
「さすがに、婚約のお披露目には猫の姿では行けませんから、カミーユ様、アイリのことしっかり守ってくださいね?」
「もちろん。そのために父上にしごかれてきたんだ。令嬢には負けないよ」
「とりあえず、アドリエンヌ嬢を挑発しまくって! 隙を見せて! 誘われたら乗って! 正当防衛のために先制攻撃をさせれば良いんですよねっ!?」
──って、そんなに上手くいくかなぁ?
とはいえ、証拠が無いとアドリエンヌ嬢を罰せられないから、上手く掛かってくれたらいいんだけど。
「──そういえば、精霊王様に先日の浄化の政策の案と、今回の王城内の浄化の件を報告しましたの! 大変、お喜びで、『アイリ様に一つ権限を授けたい』と仰っておりましたの。今、丁度いいので、呼んでもよろしいですか?」
「えっ!? 精霊王様!? そんな畏れ多い……」
『──お初お目にかかる。聖女、アイリ様。私は精霊王セルジュと申す。以後、宜しく頼む』
──早っっっ!!!! 精霊王……灰色の髪に灰色の髭に屈強な体つき……! 神々しすぎる……!!!!
『アイリ様、カミーユ殿、儂は精霊たちの弱体化に憂いておった。儂は協力を惜しまない』
「セルジュ様、ただ今、貴族たちとの作業の交渉中でございます。早急に浄化作業に取り掛れるよう尽力致します」
『アイリ様とルミナスに負担が掛からぬよう、他の光の精霊にも儂から頼んでおこう。浄化を共に行うとよい』
『──アイリ様、お主は死霊が良い者か悪い物か分かるな? 死霊管理人が捌ききれない分の浄化に加え、もう一つ権限を授けたい。
この世のためになるであろう、優良な魂だと判断したならば、精霊となるよう祝福を授けるがよい』
「──私に精霊化の権限を分けて下さる、ということですか?」
「そうだ。お主に精霊王の祝福を授ける。これは加護とは似て非なるもの。これは権限の譲渡である」
──こうして、私は新たな能力、"優良な魂の精霊化" を手に入れてしまった。