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アイリ、お嬢様になる

リーニャとエミリーに慣れる友情回。

 

 ──もふっ

 「アイリ様〜……アイリ様おはようございます〜」


 んん? なんだか、もふって気持ちいい……??

 ん……んん?? ───ぱちっ


 「アイリ様! おはようございます!」


 胸元に、金色のまんまるな瞳、アイボリー色の毛がふわふわの可愛い美猫が乗っていた。


 「アイリ様! ベルチェ家へようこそ。王城の神殿で、気絶されたようで、ずっとよく眠っておられましたが……お加減はいかがですか?」


 ──ね、猫がしゃべったぁぁぁぁぁ!? んん? でも、この感じ?

 「──もしかして、アイリーン様? ですか?」


 撫でると、ゴロゴロと気持ちよさそうに鳴く。見た目は完全に猫だ。


 アイリーン様(猫)に、詳しい話はお庭でお茶でもしながら話そうと提案された。

 どうやら、もうお昼前らしい。よく寝ていたみたいだ。たしかにお腹が空いているので、軽食はありがたい。



 「アイリ様、こちらは生前私の侍女でしたエミリーですわ。きっとアイリ様の支えになってくれるでしょう」


 アイリーン様(猫)が向いたところに視線をやると、淡い茶髪を三つ編みにした優しそうなメイドさんが微笑んでいた。


  「アイリ様、初めまして、エミリーと申します。アイリ様にも一生懸命お仕え致します! どうぞ宜しくお願い致します」

 「エミリーさんね。こちらこそ宜しくお願いします。

  私、アイリーン様の記憶をいただいておりますので、なんだか久しぶり、って感覚です。また宜しくね、エミリー」



 ──それから、エミリーに何から何まで支度をしてもらい、初のお嬢様生活が始まった。

 "お嬢様" って、やっぱり女の子としては憧れるし、湯浴みや着替えは少し恥ずかしいけれど、ドレス選びは心がうきうきして、すごく楽しい。


 「エミリーの腕もすごいですが、アイリーン様もすごいのね! 毎日、使用人の方たちに囲まれて、こんな重装備で過ごすなんて!

 ──とは言え、元々アイリーン様の体ですから、不思議と馴染むような気がしているのですが……」



 エミリーはくすっと微笑み、教えてくれた。


 アイリーン様はどうやら気さくなお嬢様で、自分のことは自分でやるので、あまりメイドを付けなかったらしい。

 このドレスも普段使いのもので、夜会の時はそれはもう重装備になるのだそうだ。

 

 エミリーは手慣れた様子でドレスを着せ、メイクを施し、髪を纏めて結いこんでいく。

 「──こうしてお嬢様のお世話をさせて頂くのは約2年ぶりですので、やりがいがありますね!」



 ふと、アイリーン様の死語のことが気になり、エミリーに、この2年はどうしていたのか尋ねてみた。


 アイリーン様の体はベルチェ家の隠し部屋にあり、状態保存の魔法が掛けられていた。

 たまに、お肌や髪のお手入れも兼ねて、エミリーが様子を見に行っていたらしい。

 そして、事情を知らない者の間では、養生のためにベルチェ家の別荘にいるという設定になっていたらしい。

 数年前から衰弱しており、2年程姿が見えずとも違和感が無かったのだろう──ということだった。


 ──ふーむ。なるほど。たしかに、記憶の中のアイリーン様は最期は衰弱して辛そうだったもんね。



 こうして、おしゃべりしている間にエミリーの神の手によって、ものすごく愛らしいお嬢様が鏡の中にいた。


 アイリーンのふわふわのアイボリーの髪はゆるく巻かれ、ふわふわ感を生かしたまま編み込まれ、ガラス細工の美しいバレッタで留められていた。

 向こうの世界での髪は黒髪のストレートで髪が強く、アレンジが利かない髪質だった。

 こういった淡い髪色や、ふわふわの巻き髪、ゆるく編み込むというのは、ずっと憧れだったのだ。



 ──異世界で違う人間になる、というのも……あながち悪くはないかもしれない!




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