アイリ、陛下と水盤占いをする
「アイリ、落とさないから、少し下を見てごらん?」
月明かりに照らされた都の街並みは美しかった。
この国に多い石造りの家々が月の光を浴びて白く浮かび、異国情緒を感じさせてくれる。
「──うわぁ! 街が白く光っているように見えますね!」
「満月の夜は、街が淡く白く輝くから一番好きなんだ。でも、これから行く所は、もっと綺麗。ちょっと目をふさぐね?」
そう言うと、お姫様抱っこの状態から顔を胸元に埋められ、抱きしめられる感じになってしまった……!
だから! 何度でも言うけれど! そういうドキドキ耐性無いんですぅぅぅぅ!!!!
──恥ずかしいこと平気で言うし? 真顔でさらっと色々やってのけるから、そういうの平気な人なんだと思ってた。
……んだけど、あれ? 結構、心臓の音……早いんですね?
「──ちょっと、今見ないで?」
「〜〜〜〜っっ/////」
さらっと色々やってのけるように見えて、意外と……恥ずかしがり屋さん、なんですね?
──私は無になるよ。考えたら恥ずかしくて死んじゃいそうだから。
『着いたぜ〜☆ 着地っ!』
視界に入ったのは、湖に浮かぶ小島一面に咲き誇る白い花……!
月の光を浴びて淡く輝く。精霊たちが淡く光り花々の周りを漂う。周りを囲む湖の暗い水の色とのコントラストで、より輝いて見えた。
「──綺麗! この世の景色とは思えないほど!」
「この花は "月光花" 、月の魔力を浴びて咲く。今日は満月だから、一番綺麗に咲く日。だから、満月の夜じゃないと見れないんだ」
陛下は、銀の皿に湖の水を掬い入れると、銀の皿に月が当たるように置いた。そして、月光花の花弁を一枚浮かべた。
「アイリ、今知りたいことを思い浮かべながら、水に魔力を流して。そして、血を一滴、月の上に落としてごらん。月は上から見ているからね。知りたいことも教えてくれるかもしれない」
──水盤占い? かな?
言われた通りに、魔力を流し、水盤に映る月の上に血を一滴落とす。月光花の花弁が淡く溶けていったかと思えば、若い令嬢の顔が水盤に浮かびあがった!
「この子……! あの霊の子……!」
「ルヴィエ侯爵令嬢じゃないか……! あの子が関わっているというのか!?」
アドリエンヌ・ルヴィエ、西のアルカラ国に面する辺境守ルヴィエ侯爵家のお嬢様。一体何故?
『あー? あのつんつん娘? 性格も悪いし、俺たちは嫌い』
「ウィートさん、俺たち、ってことはその子は精霊たちに嫌われているの?」
『……一応、人間関係に手は出さないって、精霊の掟みたいなのがあるんだけど。あいつ、死霊とつるむから、家の周りが居心地が悪いってんで、精霊がみんな嫌ってんだ。俺が言えるのはここまでっす☆』
──死霊とつるむ……つまり、アドリエンヌって子は霊力が強い……見える子? 霊力が強いなら、比例して魔力が強いのも頷ける。
ふーむ。陛下を好きだとしたら、婚約結ばせないことが目的?
……それにしても、襲われたのは、あの一回のみだしなぁ。ゴロツキ全員殺せるなら、とっくに殺られてるでしょうし?
頭脳派じゃないので訳分からん!
隣では、陛下も考え込んでいた。占いと霊感だけじゃ犯人扱いできないよ!
作者も頭弱いので訳分からん!←