アイリ、ゴロツキに絡まれる
実践&実戦!
───領都ベルティーユ 中央市場(商店街)
お兄様いわく、私が同行しているために、今日は領都の中心部のみの視察らしい。
お邪魔してごめんなさい……!
ベルチェ領で一番大きいこの市場には、色々なお店が揃っていた。
特にベルチェ領の特産の果物、高原野菜のお店が多かった。
魚屋さんもあり、とても活気がある。
ベルナルディ王国は海に面していない内陸国のため、北のハールスか、もしくは西のアルカラから海産物を輸入している。
やはり鮮度が落ちるために、加工品がほとんどだ。
この国では、川で捕れる鱒のような川魚が多い。
サーモンみたいで美味しいので、私は好き。
「お! ベルチェの眠り姫はお目覚めですかい!? お元気そうで良かった! りんご持って行ってくだせぇ!」
「ありがとうございます。お陰様で元気になりました! りんご、後でいただきますね♪」
市場のあちこちから、商品をいただいてしまう。カゴまで持たされ色々入れられる……!
完全に……私、餌付けされるお嬢様になってしまった……!
アイリーン様はどうやら、領都の民にとても人気みたい。
広い市場を抜けると、商店街が広がる。
ここには、ベルチェガラスの工房や、ガラス細工の工芸品店、木工工芸品店や雑貨屋さんなどが並んでいた。
すごく気になるので、後で見てみたい♪
商店街と市場の中央には、広場があった。
お兄様は近くのお店の店長 兼 商店街長に会ってくるということで、エミリーと広場の木製のベンチに腰掛けて待つことにした。
こちらを伺うように見ている子ども達に、にこやか〜に手を振ってみる。
子ども達が満面の笑みで手を振り返してくれる。可愛いっっ!
「おらおら! ガキ共、どけっっ!!!!」
何やらいきなりゴロツキっぽいのが現れ、子ども達を押し退けた。
『マットレスのようにっ! 防護ジェル展開!』
咄嗟に子ども達が頭を打たないように、背面に防護のジェルマットを展開する。
そのままジェルマットを水で浮かせるようにして、少し遠くに移動させた。
───ゴロツキは5人。どうやら、私たちがお目当てのようで。
「欲しいのは? お金かしら? それとも私♡?」
「──ちょっと痛い目見せてやれって言われてるんでなぁっ!」
「あらぁ♡そうなの? ──言質は取りましたわよ?」
『狙いは私ね! 子ども達を覆うように植物の檻、展開できる? コイツら逃がさない!』
『かしこまりました!』
エミリーが植物の蔦で遠くに子どもたちを飛ばすと、覆うようにさっと檻を展開する。
『緑が二人、火が一人、土が一人、雷が一人よ!』
手始めに蔦で絡めようとするので、切って大きめの氷の礫にしてお返しした。
とりあえず、緑魔法の使い手二人沈黙。
固めのジェルの縄で縛って、氷の檻にぽいっと入れておく。
火魔法の使い手は、水魔法で不利だと感じたのか、狙いをエミリーに定めたようだ。
火魔法の使い手を中心に、大きめに魔力が動く。
「させるかぁっ!」
『エミリーの前に水の壁展開、内側に防護の壁!』
炎の玉が水の壁に当たり、爆発のように勢いよく散った。
火の魔法の使い手と雷魔法の使い手は、巻き込まれ火傷を負い沈黙。やはり縛って、ぽいっと檻に入れる。
その隙をつくように私に襲いかかってきた泥のような攻撃を、エミリーが植物の盾で防いでくれた。
せっかくなので、泥に水を多めに混ぜ、小枝や葉っぱも混ぜ込んで礫にしてお返ししてあげた。
さぞかし硬いことだろう。
───全員沈黙っっ! エミリーとの連携プレー!
エミリーは追い討ちをかけるように、痺れ蔦をゴロツキ全員に巻いた。
「あらぁ、逆に痛い目に合わせてしまいましたわ♡」
雷魔法のモブ感。本当は強いはずなのに……