アイリ、戦える令嬢を目指す
愛理ちゃん真面目回。
無自覚だけど、かなり凄いレアな能力持ちの聖女様…
──ベルチェ家 食事の間(小)
食事の間にて晩御飯を食べた後、お兄様が魔道具の話をするということで、食事の間の隣のこじんまりとした小さな食事の間に移動した。
やはり使用人たちを下げ、防音魔法を掛けていた。
「エミールが作った、魔法議事録──聖女様の能力に関する記録と行動予定の共有のための情報網に入るための魔道具だ。アイリ様の能力や能力に関する出来事などは、できるだけ書き込んで記録してほしい」
お兄様から、一人一個ブローチ型の魔道具が配られる。
「とりあえず、所有者認定をしてほしい」
各々、ブローチの宝石部分に血を一滴落として魔力を注いだ。
そして、情報網を見てみる。
今までの能力や出来事の共有、予定共有、連絡などが読んだり書き込めるようになっている。
──脳内で見ることの出来るSNSってことか……エミールさんすごい……
「魔力を流すと見たり、書き込んだり出来るようになる。能力別に関連する出来事がまとめてある。何か分かり次第、追加で書き込んでくれ。
特に、邸から出る際──王城に登城する際や、外出の際は警護の関係で絶対に共有してほしい。狙われないことが一番だが、何かあれば、移動の際に狙われることが一番多いだろう。──母上や先代の王妃陛下のように……
騎士団長アルノー殿と密に連絡を取ることで、アイリ様の安全性がより高まる。これも特にエミリー、よろしく頼む」
「かしこまりました!」
「情報が漏れないことが最優先なので、本人以外の魔力を流すと壊れるようになっている。取り扱いには十分気をつけてほしい」
──そういえば…… 『母上や先代王妃陛下のように』 ということは? 移動中を狙われて、お亡くなりになった?
「──お二人は、移動中に狙われてお亡くなりになられたのですか?」
「そうだ。悪霊たちが先代王妃様の "浄化の力" を疎んで、二人が乗った馬車を崖に落とした」
お父様とお兄様が、忌々しげに語りだした。
──お兄様と陛下が18歳、アイリーンが10歳、王弟シルヴァン様が3歳の時のこと。
先代王妃アンジェリーヌ様と親友だったベルチェ公爵夫人クロエが不慮の事故で同時に亡くなった。
二人とも37歳という若さだった。
同い年で仲の良かった二人は、その日は一緒にオペラを観に劇場へ向かう最中に馬車の転落により亡くなった。
後々、精霊により、悪霊によるものだったと分かった。
二人は霊力が強かった。
特にアンジェリーヌ様の持つ "浄化の力" は、あまり強いものではなかったとはいえ、悪霊からすると憎かったらしい。
浄化の力を持つ妻を亡くした先代の王エルネスト様、同じく霊力が強く霊を引き寄せていた母を亡くしたアイリーンは、みるみる衰弱してしまった。
大切な人を亡くしたことで蓄積された悲しみやストレス、二人とも霊力が強く、悪霊を引き寄せてしまう体質だったために、身体に不調をきたしてしまったのだろう。
そして、二年前アイリーンの死を見届けると、数ヶ月後には先代の王エルネスト様も息を引き取り、王太子だったカミーユ様が即位して国王となった──
「──だからね、王家にとっても、ベルチェ家にとってもアイリ様、聖女様の能力は大事で、守らなければいけない。アイリ様が気をつけなければいけないのは、人間だけではなく悪霊もなんだ」
「──なるほど……籠原家と似たような状況だったのですね……」
もう、こんな優しいベルチェ家の皆さんに、こんなつらそうなお顔はさせたくない。
聖女として、悪霊を浄化することで役に立てるなら、この国の誰かを救えるかもしれない。
──今更だけど、スケジュール共有されて、全力で守られる、って……なんかどこかの国の要人が来日した時みたい。
なるべく皆さんのお手を煩わすことがないように強くなろう! 目指せ、戦えるお嬢様!
ブクマしてくれている人ごめんなさい。
前半長かったの反省して、割とスッキリめにした結果、ここに前半の先代の事情をぶち込みました。重複すみませぬ。
文才が無いため、ちょこちょこ変更するおバカです:( ;´꒳`;):ぬぬぬ