アイリ、お披露目のドレス作り
ドレスを作る回。
──ベルチェ家 応接間
5/4(日)。今日は、"デビュタント" 兼 "婚約のお披露目" となる7月の王城のガーデンパーティーに向けて、ドレス作り♪
明日、月曜日から、6月1日の婚約まで令嬢教育と体作りで鍛錬の日々が始まる。そして、6月からは王城内で王妃研修!
その前に、素敵なドレスを決めるっっ!
目の前には、白、オフホワイト、ごく薄いクリーム色……白に近い色と、様々な質感の布サンプルが並んでいた。
この国の "デビュタント" では、デビューする令嬢たちは白に近い色味のドレスを着るのだという。
純白はウエディングドレスまで取っておくため、オフホワイトや、やや黄みがかった白が基本色らしい。
ベルチェ公爵家御用達、"アトリエ・ド・アルベルティーヌ"はオートクチュールの名店である。
オーナー兼クチュリエールのアルベルティーヌが、自ら邸に足を運んでくれたようだ。彼女の抱えていた荷物の量が、ドレス作りへの情熱を感じさせた。
──隣ではエミリーが、布地に太陽光を当てながら色味や光の反射を見て、真剣に悩んでいる。
『エミリー! ガーデンパーティですもの、太陽光を味方につけましょう!』
『ええ! そうですね! リーニャ! 生地に光沢のあるもの……。──あっ! きらきらとガラスビーズを光らせる! なんていうのも綺麗だと思いませんか!?』
『エミリー!! さすがね!! それよ!! ベルチェ領の特産品の紹介にもなるわ!! ちょっと、ミセスに提案してみてもらえるかしら!?』
念話では、エミリーとリーニャが気合を入れて、高速で打ち合わせをしている。
「ミセス、領の特産品であるガラスビーズを縫い付け、きらきらさせるデザイン、というのは、いかがでしょうか……?」
「あら! まぁまぁまぁ! いいじゃない! 素晴らしいわ!!!!
ガーデンパーティですものね! 7月は太陽も元気で光り輝くもの! その輝きを活かさない手はないわね!」
「──では、私はガラスビーズのサンプルを持ってまいります」
セドリックはガラスビーズのサンプルを取りに部屋を出た。
──エミリーの提案に、ミセスは思いついたのか、さらさらと何パターンかスケッチを描いていく。
「……っあ、アルベルティーヌ様……! この薔薇のようなドレス、とっても可愛らしくて……素敵ですわ……!」
昨晩の出来事を思い出し、顔が熱くなる。ううう///
『っっ!! 白い薔薇って素敵ね! きっとアイリに似合うわ!』
『赤い薔薇への返事を白い薔薇でするなんて……あぁ、ロマンティックですね……!』
『白い薔薇だもの! 陛下もきっと喜ぶわね!』
『エミリー、白い薔薇にも意味があるの?』
『アイリ様! 白い薔薇でしたら……1輪? それとも3輪? 一目惚れ……より、好きです、愛しています……がぴったりですかね?』
『っっ//// 陛下は初めて見た時も、かっこいいとは思ったけど……? ──3……かなっ……?』
『『よし! 薔薇の花を3つ胸元に!! 決定っ!!!!』』
「──あの……胸元からの切り替え、背中から一周リボンが巻かれたように、胸元でリボン結びのようなデザインとか……」
「あら! それもブーケのようで可愛いわね? リボンの生地は少し濃いめの色味に変えてみたら良いかもしれないわね!」
「ミセス! では、お嬢様が気に入りましたこちらの薔薇のデザインで、薔薇の花弁を胸元に3つ咲くように……
胸元下からの切り替えはリボンを巻き付けたイメージで、デザイン画を描いてみて下さいませんか?」
「──あら? 3輪なのね? ふふっ……自分がブーケになるのね? 素敵だわ! 6月には試着できるように仕上げていくわ! 可愛いドレス姿を見てもらいましょうね……!」
アルベルティーヌ様は嬉しそうに微笑むと、さらさらさらっと筆を進める。
──アルベルティーヌ様のスケッチブックには、3輪の大輪の白い薔薇が胸元に咲き、胸元下はアイボリーのふんわりとしたリボンで切り替えられた "薔薇のブーケ" のようなドレス画が描かれた。
愛理ちゃん、黒わんこに染められました