アイリ、光の加護を授かる
太陽の光のような暖かく優しい光が降り注ぎ、空中にふわふわと浮かぶ小さな光は蛍のよう。
そよそよと吹く風にあおられて舞う花びらや葉に光が反射し、きらきらとダイヤモンドダストのように輝いていた。
──あ、れ? また違うところにいる……? なんだかポカポカしているし、ここって天国なのかなぁ?
「──アイリ様! お待ちしておりました! ここは、アイリ様の夢の中です。私、アイリーン・ベルチェ、アイリ様の器の元の人間ですわ!」
「えっ、えっ……どういうこと!? 器?」
アイリーンと名乗る、美少女が後ろに立っていた。
ごく薄いベージュがかったアイボリー色の柔らかそうなふわふわの髪、色白の肌にほんのりとピンク色に色付く頬や唇、淡いイエローカラーのサンドレスを着た……ふわふわの可愛い美少女。
──この女の子は、一体何者……?
「アイリ様がこの世界で過ごしやすいように、私の生前の記憶を渡すために、ずっとアイリ様のことを待っておりました! きっと、私の家の地位、そして記憶はアイリ様のお役に立つでしょう!」
きらきらとした美少女の笑顔が眩しいっっ……!
「ええと、アイリーンさんは、あの人たちの知り合い?」
「ええ! そうです! 私の生前の記憶を渡しますね。この国のことがわかると思いますから。──アイリ様、手を差し出してくださいませ!」
アイリーンさんの小さくて白く綺麗な手が重なる。
そこから、淡い白のような金色のような優しい光が私たち二人の体を覆った。
そして、アイリーンさんから記憶が流れ込んできた。
──あっ……これがアイリーンさんの記憶……?
黒髪イケメンの男の人、私やっぱり夢で見覚えがあるような気がする! あの人がこの国の王様!?
アイリーンに生前の記憶を渡されると、ざっくりとこの国の王家やベルチェ家──アイリーンの家の状況を説明された。
なんとなく察してはいたけれど、やっぱりどうやら私は異世界に飛ばされた……いや、召喚されてしまったらしい。
わくわくした気持ちが少し、動揺する気持ちが少し、怒りが少し……複雑な気持ちになった。
よく分からん国のために巻き込まれたのか! とか、たまに感じていた視線は、あの王様の仕業だったのか! とか。
──正直言うと、ずっと見られてたなんて……気持ち悪い。
しかし、若いのに、死ぬのを覚悟で国のことを思うアイリーンは素晴らしいと思った。
というか、死んでも役に立ちたいから、お願いしたら精霊になったなんて……尊敬する。
日本のために死ね! と言われても……! 無理だもんなぁ。
──うーん。
「──私にできることなんてあるのかな……?
たしかに、この世界では霊力っていうの? 霊感はあるけど、見たり、その霊がどんな霊か感じることができるってだけだし?」
アイリーンさんは微笑むと、精霊の力を分け与えると言う。 "精霊の加護" というらしい。
見た霊が悪いものだと感じたら、それを浄化するイメージを頭の中に描くと浄化できる力、魔法みたい。
ここ数年で、精霊の力が少しずつ衰弱して、精霊と悪霊のバランスが崩れているので、悪霊を浄化すること。
そして、この国の王様が霊にまとわりつかれて可哀想だから、助けてやってほしい、と。
この二つがこの世界でやるべき私の仕事のようだ。
──要は、アイリーンとして生きて、国や王様にまとわりつく悪霊たちを祓えばいいってことなのよね?
「うーーーん。──分かった! 何ができるかは、まだ分からないけれど、できることは頑張ってみるよ! もうこの世界に来ちゃったんだしね!」
アイリーンは嬉しそうに笑った。そして、私の手をぎゅっと握る。
───精霊 ルミナスの名において、光の加護を授けましょう。
この者とベルナルディ王国が更に輝きますように───
「さあ、アイリ様、目を開けて下さいませ。この国と陛下をどうぞ宜しくお願いしますね──」
ラブが遠い…
アイリーンちゃんは、王子のこと好きなのかと思ったら、意外とドライ。国にとって必要だから好き。みたいな感じ。優しいいいお兄ちゃん的な感覚。