アイリ、陛下と夜遊びをする②
ラブ回2。
じわじわとブックマーク嬉しいです。
陛下は、バルコニーに魔法で空間を作り出した。
外から見ると、黒い箱のような形状だった。
中には、ソファーもテーブルもあって、窓のないこじんまりとした小さな部屋みたい!
「──さすがに夜は冷えるからね。入って。あ、何もしないから信じて?」
「──ほんとですかぁ?」
「本当は薔薇のことだけ言ったら、すぐ帰るつもりだったんだけど。アイリが可愛いから、お茶に付き合ってもらおうかなって」
陛下は楽しそうに準備をしていた。
『実は、仕事に追われてたから、まだご飯食べてないんだよね 〜』 そう言うと、白いテーブルに赤いテーブルクロスを引いた。
そして、ジャケットの内側から茶道具一式と焼き菓子と果物の入ったバスケットをテーブルに出し始めた。
器用に魔法で湯を沸かし、ティーポットに湯を注いで蒸らす。可愛らしいティーカップに紅茶を注ぎ入れる。
すると、バルコニーに紅茶のいい香りが漂った。
「体が少し冷えただろうから、紅茶でもどうぞ? ミルクを入れたら少し冷めて飲みやすいかな?」
「ミルクティー……エミリーとリーニャとの寝る前の習慣なんです」
「じゃあ、ミルクティーにしよう。あ、 "レッドプティボール" もあるよ? 食べる?」
「うっ……どちらも大好きです……!」
──紅茶のいい香りと大好きな果物に釣られて……まんまと黒わんこの "縄張り" に入ってしまった!!!!
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「──あの……ブーケありがとうございます……!
エミリーが、"リボンに魔法が掛かってる" と言うので、花瓶にリボンを結んでみました! あと、エミリーが長くもつように、って緑の魔法をかけてくれたんです!」
にこーっと陛下は微笑むと、『エミリーに感謝しないとね』と嬉しそうだ。
「 "9本の薔薇" はね、"いつも一緒にいたい" という意味を持つんだ。僕は花束に、アイリがこの薔薇を見る度に僕のことを思い出してくれるように、願いを込めた」
「──とは言え、僕の魔力は紫。闇魔法が得意なんだけど、植物とは相性が悪くてね。だから、植物の精霊にお願いして、少し長く咲くように精霊魔法をかけてもらったんだ」
──アレはやっぱり魔力の色だったんだ!
「──それでなんですね! 人の後ろに見える靄って、その人の魔力の色だったんですね! 陛下とアルベール様の魔力は……力を感じます!
っあ! そういえば、陛下は、なんで精霊たちを使役できたのに霊を追い払ってもらえなかったんですか?」
「──アイリは、魔力も見れる……!? っあぁ、使役って言っても、小さい頃に精霊たちと遊んでいたから、多少はお願いを聞いてくれるようになっただけ」
陛下は驚いた顔をした後、困ったように微笑んだ。
陛下によると、
①死霊が多いと精霊は来ない。
②逆に、果樹園のように葉を出し花が咲き実をつけるような、絶えず生命力に溢れた場所は、あまり死霊は寄ってこない。
③人が多いところ──悪意や思惑が絡む空間、空気が澱むところ、澱んだ水辺、枯れた大地、鬱蒼として風の流れが悪い深い山や森などは死霊が好む。
「籠原家の立地、向こうの世界と条件は同じなんですね……!」
「僕の側には、政治に関して思惑がある者や悪意のある人間なんかも来る。更に強い霊力に惹かれて、悪霊たちも多く寄ってくる。
そうなると、優しい名の無い精霊たちには近寄るのも大変だし、追い払うのは無理なんだ。
一応、風の精霊に加護をもらい、風で多少は追い払ってくれていたけれど、浄化までは無理だった」
「なるほど、精霊もまぁ得意不得意あるみたいですしね……?」
てか!!!! 薔薇飾ったけど、長く咲くのならアレを見る度に陛下のことを思い出すってことじゃないっっ!!
薔薇に罪は無いけど、そんなの……! 寝れなくなっちゃうじゃない!!!!