アイリ、兄に質問攻めにされる
家族団欒回。
───ベルチェ家 食事の間
陛下は、最後まで名残惜しそうにしっぽをぶんぶんと振っていた。
帰り際に、果樹園の果物と可愛い薔薇のブーケをくれた。
薔薇の花束なんてキザだなぁ〜って思ったけど、すごくいい香りだし、薔薇は好きだから部屋に飾ろう。
最後に、私の大事なお仕事。陛下に付き纏っていたヤバそうな悪霊を浄化しておいてあげた。
とりあえず、モ〇スターボールを投げる要領で、悪霊めがけて光の球をイメージして投げつけてみた。
禍々しい感じが無くなったから、浄化できたみたい。なかなか便利な力だった。
──今日の晩御飯は、昨日のメンバー+アルベール様だ。
今日はアルベール様が、『久しぶりに妹と気兼ねなく話したいから』 と使用人を下げさせ、やはり防音魔法を掛けていた。
今日は普通に食事の間でご飯を食べることになった。
──のだけど、ダイニングテーブルがなかなか大きくて、しかもクロスが白くて零して汚さないか緊張するなぁ……
「お父様、お兄様、お仕事お疲れ様でした!」
「みんなお疲れ様。アイリ様の事情が知れて良かったよ。陛下の覗きぶりには驚いたけれど……」
「陛下、あんなんだけど、アイリ様とのお茶会すっごく楽しみにしてて。時間を作るために、かなり前倒しで仕事してたんだよ? くくっ……
──それで、どう? こちらの世界に少しは慣れたかな?」
「はい! 割とすんなりと過ごせてはいます。アイリーン様……リーニャとエミリーには、特に良くして頂いてますし。 前の世界とは違うので、新鮮で楽しいですよ!」
──アイリーン様……リーニャとエミリーがいたから、この世界で頑張ってみてもいいかなって思えた。
陛下も監視されていたという気持ち悪さを除けば、すごく良い人だったし。
今のところ、異世界お嬢様生活は、とても楽しい!
「そうだ! リーニャ、本当にアイリーンみたいだねぇ。毛の色も瞳の色も。可愛いよ!
しかし、父上から少し聞いてはいたけど、精霊王からの祝福を受けて、名前付きの精霊になるとはね……! おまけに、こんなに可愛い猫になって、また現れるなんて、すごい妹だよ……!」
驚くアルベール様に、リーニャは得意気にしっぽを振った。
「──ところで、アイリ様はいつから霊力があったのかな? アイリ様以外には霊力の高い御家族はいらっしゃる?」
──うーん、いつからだろう?
「──私は、気付いた時には、見えるのが普通でしたから……それがおかしいということも知らなかったんです。籠原家では、昔から隔世遺伝で霊力の強い子が生まれます」
「祖父母は感じることもできません。母は見ることはできないです。神主さん……こちらの世界で言う神官みたいな者によると、母は霊に対する感受性は強いらしく、体が弱いです。
弟は、2年前にいきなり見えるようになりました。同じく見える弟ですが、私のように見るか見ないか決めることができず、常時霊が見える状態です。夢で、どのように死霊が最期を迎えたのかを毎晩見させられるために、あまり寝ることができず衰弱しています」
アルベール様は、少し考えこむような仕草をしていた。
「そういえば、アイリ様は陛下を見て、 『夢で見ていた』 と言っていたが、あれはどういう意味だったんだ?」
「たまに、陛下の夢を見ていたんですよ。
──夢だからうろ覚えですし、気にしていなかったんですけど。陛下を見て、初めて見た気がしなくて……そういえば、夢で見たことがあったなぁ、って思ったんです」
「──アイリーンと夢の中で会えたのも……おそらく、アイリ様も弟さんも "夢見の力" があるのだろうね。
もし、気になる夢を見た時は、忘れないうちにメモをしておくといいだろう。危険予知や、未来予知かもしれないからね」
──なるほど、今日から枕元にノートを準備しよう!
兄は、研究熱心。