アイリ、狙われることを知る
ある意味一致団結
──精霊たちの暴露が始まった。
上京にくっついてきた中年男性の霊がいた。
そのおっさんは、籠原家の結界に入れないレベルの低級霊だったので、実害はない、と精霊たちは判断した。
ところが、東京は霊のレベルも高かった。
死霊の中には、生前、痴漢や覗きやストーカーだった猛者たちの霊もいた。
そんな猛者たちに唆され、臆病な田舎の霊は徐々に大胆になっていった。
しばらくすると、浴室の磨りガラス越しに入浴を見るようになった。しかし、まだ磨りガラスの扉越しだから、精霊たちも動かなかった。(極力手を出さない方針だから。)
ところが、エスカレートしたおっさんは、ついに禁断の扉を開けてしまったのだ。
精霊たちは悩んだ結果、『大事なことは……ほう! れん! そう!』 と、事の顛末を陛下に報告することにした。
『──僕なんて、まだ生のアイリさえ見れていないのに!
僕を差し置いて、おっさんの分際でアイリの……アイリの湯浴み……裸を覗くとは……
──おのれ……おっさん……許すまじ……!』
『精霊たち! 殺っておしまいなさい!!!!』
『おっけー! カミーユ! ラジャーっっ!!』
──というわけで、おっさんは、精霊たちにより抹殺されたらしい。
可愛い姿して、監視カメラと殺し屋だったとは……この子たちは決して敵に回さないようにしよう。(遠い目)
「──うん、精霊ちゃんたち、まぁ、ありがとう? ね。
……なんかね、磨りガラス越しに視線感じるなーって、たしかに思ってたんだよね。なんとなく想像出来てたから、あえて見なかったけど」
──あいつ唆された上、消されたのかよ……! モブ霊、あっけないな。ドンマイ……!
「──話を聞いていて、アイリ様……カミーユが……すまない。僕が思っていた以上に、カミーユは拗らせてたんだね……。
何と言っていいのか、もっとどうにかできただろうに、止められず申し訳なかった!
……え? 本当に本当にこいつに中身アイリ様とはいえ、妹をやっていいのか……?」
──お兄様? 再び目が死んでますよ?
「この国の人間でも、精霊たちがこんなに懐くなんて、普通はないのだけどねぇ……?
精霊王に名を与えられる程の高位の精霊、アイリーンの加護を授かるくらいだから、当たり前なのか……? いや、君はとにかく規格外だよ……! 聖女様と言われても不思議じゃない」
「……アイリーンもアイリも……我が娘はすごいな……///」
──お父様? それは褒めて下さってます? というか、最後の呟きは……ただの親バカですよね?
「うーん、アイリ様を護るという点では、変態で不安ですが、たしかに陛下のお側が一番宜しいですわよね?」
──膝にいるリーニャの目線を上げるために、抱き上げる。
「アイリ様の……聖女様に匹敵する霊力、二つの加護、光の浄化の力。どれも他の国も欲しい能力でしょうし、正直、アイリ様の能力を知られてしまったら狙われるかと。
アイリ様の身の安全の確保は最優先事項ですわよね?
こんなんでも陛下はおそらくこの国で一番お強いですし? 近衛騎士や王城警護騎士の強さ的にも、立地的にも、王城内が一番護りが強いですもの!」
『え、私、狙われるの? てか、リーニャ……さりげなく下げて、そして上げるスタイルなのね……!』
『いえ、お嬢様もリーニャも巻き込まれているのですから、これくらいは言う権利がございますよ!』
「そうよ! 変態の陛下にはこれくらい言わないと! アイリ! 全力で陛下に守ってもらいましょう!」
念話でのリーニャとエミリーは生き生きと声を弾ませていた。
何故か私が完全に狙われる前提で作戦会議を始めてしまった "アイリ様を守る会"(なんだそりゃ) のメンバーたちを横目に、まだ食べていなかったお菓子に手をつけた。
アイリ様を守る会発足。
みんな愛理のこと大好き。