アイリ、精霊たちの暴走を知る
精霊たち登場の回。
陛下は言いにくそうにしながら、続けて言葉を紡ぐ。
「──火災の時はね……アイリ、金縛りによく遭っていただろう? 長い髪の女に」
「あぁ! あの一時期乗っかってきていた霊ですね……」
なんかすごく妬まれて、がっつり首絞められたのは……今思い出しても鳥肌が立つよね。
結界に入れるくらいだから強い霊だったんだと思うけど……
「その髪の長い女は、アイリに惹きつけられ、寄せられた中年男性の死霊の妻だった。
夫を含め死霊を惹き付けるのに、見向きもしないアイリに嫉妬していた」
「結界の外、なんか窓から見られてるなぁ、とは思っていたんですけど……夫婦なのは知らなかったです」
──で、また精霊が、助けるために暴走してしまったと。
「彼女と夫、ついでに、アイリに纏わりついてた死霊たちを一網打尽に消してしまおうと、焼き払った
精霊たちは、大好きなアイリに危害を加えたことに怒り狂っていたから、加減を間違えて……家まで燃やしてしまったんだ」
「わ……わぁ……火力つよーい……(棒読み)」
──モテない八つ当たりで私は首締められてたの!? それは勘弁してほしい!!!!
そして、あの子たち、無邪気そうというか……小さくてやんちゃそうだと思ってたけれど!
家まで焼かれるとは……これは予想以上っっ!!!!
「──本当に申し訳ない。アイリに何かあってはいけない、と監視を付けていたのに、言いつけが足りなかったんだ。僕のせいだ……」
「いや、何と言うか……お気の毒に。うちも大変でしたけど、陛下もある意味被害者ですよね……?」
──パァァァっ
『ねぇねぇアイリ! カミーユからの頼み頑張った〜!』
『おっさん、アイリのお風呂覗いてた! カミーユに言ったら、消してこい! って言われた!』
『カミーユ、まだアイリのお風呂見てないのに、先におっさんに越されたの! 悔しい!』
『おっさんちゃんと消してきたよ! アイリの裸守った! カミーユ! アイリ! ほめてほめて!』
わらわらと集まってきたのは、噂のやんちゃなあの子たちだった。
──なんか、とっても可愛い顔して、ものすごーく物騒なこと言ってるんですけど……!
「わー! すごいすごーいっ♡(棒読み) あれ? 陛下は干渉しないルールでしたよね?(にっこり)
で? 精霊ちゃんたち、そのおっさんってなぁに? 教えてほしいなぁ♪」
「待て待て待て待て! ちょっと、ストップ! 精霊たちっ!!
俺はアイリをずっと見ていたい、とは言ったが、それは決してアイリの裸を見たいわけじゃない! な? アイリに、風呂を覗きたい変態だって誤解されるだろう!? まだ覗いた事無いし!」
思いもよらない形で暴露された陛下は慌てふためいた後、全力で頭を抱えていた。
「──へぇ…… "まだ" ということは、これから覗くのですね……?」
「アイリ! 待って! 覗きません! 見る時は正々堂々と……っ……!」
ちなみに、今まで黙って話を聞いていた周りは、ドン引きの状態。特にエミリーとリーニャの目が完全に引いている。
お父様にいたっては、陛下をジト目で睨んでいる。
「ほぉ……事情があったとはいえ、こんな覗き趣味の変態に娘をやる……のか……?」
「うわぁ……聞いてはいたけど……実際に聞くと引くわー……え、こいつに中身アイリ様とはいえ……妹をやるのか……?」
「側近として止められなくて申し訳ございませんっ……アイリ様にはご迷惑をお掛けしております……本当に申し訳ございません……」
お兄様もエミールさんも非常に遠い目をしていらっしゃる。
エミールさんは、今にもスライディング土下座をかましそうな勢いで平身低頭で謝っていて、可哀想になってきた……
果たして、この変態陛下は王としての威厳を保てるのでしょうか……!