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アイリ、陛下と精霊を憎めない

陛下の懺悔回。回想回。

 

 なんだか、恥ずかしくて、ムズムズ……そわそわする!!!!

 そんな浮ついた気持ちを隠すように、陛下の淹れてくれた茶をすする。

 ──陛下が淹れてくれるお茶は、熱すぎず飲みやすかった。



 「──陛下は、私が熱いお茶が苦手なことも知っているのですね……?」

 「ん? フーフーするアイリも可愛かったよ?」


 甘い顔で首を傾げる陛下。

 ──ダメだ! そんな顔されたら全然落ち着かないんですけど……!



 顔が良くて、背も高くて、優しくて、自分のことをよく知っていて、会ったことの無い相手を約15年も見守って想ってくれる、重すぎるほど一途な王様……?


 ──あれ? この人、長年のストーキングと重すぎる愛を除けば、もしかして完璧じゃない……?

 ……そうだ! 欠点! 何かこの人に欠点はないのか!?


 「あのっ、こんなこと聞くのもどうかと思いますが。……陛下には何か欠点といいますか、苦手な事や失敗したことなど、ありますか?」



 陛下は目を見開くと、少し悲しげに目を伏せた。

 さっきまで嬉しそうに振っていたしっぽが萎れている……


 「──さっき言った、両親とのルール。実は他にもあって。

 父からは、あちらの世界の理が変わってしまう可能性があるから、極力アイリに干渉しないことをきつく言われていたんだ、けど……」


 言葉を濁すと、陛下は言いにくそうに言葉を絞り出した。


 「アイリ、カゴハラ家に厄災をもたらしたのは僕なんだ……」

 「厄災……って良くないこと、ってことですよね……?」


 ──んん? 厄災? 思い当たることはあるが、いつのことなんだろう?



 「アイリが8歳の時に、河川の氾濫で父上が流され亡くなり、12歳の時には、火災で家を失くしただろう?

 あれはアイリを護ろうとした、精霊によるものだったんだ。」


 ──なんと! どっちも関わっていたのか。


 陛下は思い出すような仕草を見せながら、言葉を紡いだ。


 「──精霊たちは、自分たちの存在に気付いていながら、追い払ったり邪険にすることがないアイリのことを気に入っていて、自らの意思でずっと傍にいたんだ」


 「河川の氾濫の時は、実は籠原家の裏山から土石流が起こっていた。

 それに気付いた精霊たちは、咄嗟に籠原家の敷地と近隣の家を囲うように防御結界を結んだんだ」


 「──土石流……ですか……たしかうちの敷地の横を流れていきました……まさか!」


 「──うん。だから、家にいた人たちは助けられたが、仕事先から帰る途中のアイリの父上は、土石流で道が塞がり立ち往生してしまったんだ。

 そして、氾濫した川に流されてしまった……」


 ──それは……難しい選択だったよね……精霊たちは咄嗟の判断で結界を結んだわけで……お父さんのことは知らなかっただろうし……


 「──父上のことは、助けることができなかった……すまなかった」

 「でもっ! それは、精霊の子たちも、咄嗟の判断だったんですよね?

 それに、時間が無かっただろうに……我が家だけではなく、周りの家も助けてくれたんですよね? ……そんなの感謝こそすれ、精霊たちや陛下のせいになんて出来ませんよ!」


 陛下は困ったように申し訳なさそうに眉を下げる。



 ──あれ? 陛下悪くないのに、また本当に悪く思ってる顔だよ、これ……!

 精霊ちゃんも、お転婆だけど、めっちゃいい奴的な?

 っっって!!!! これじゃあ、召喚したこと憎めないじゃない!!!!


 むしろ、災難続きだった私の家を助けてくれた……

 見守ってくれていたからこそ、助けてもらうことができたのよね? そんなの、やっぱり責めることなんてできないよ……!




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