アイリ、加護持ちのすごさを知る
「──ええっと? 話を切ってごめんなさい……
その "加護持ち" というのは、そんなに珍しいんですか? 私、光の精霊となったアイリーン様から "光の加護" も受けているのですが……?」
お茶会のみなさんの驚いたような目が私に向く。──どうやら聞くと、私はかなりおかしい存在らしい。
「気まぐれな存在である精霊から加護を授けられるのは、よっぽど気に入られないといけない。気まぐれ故に、それが一番難しいんだ
それに、精霊は死霊と同じく、その存在を感じられる人や見える人が限られる」
このお茶会にいる中で "加護持ち" なのは、陛下と私だけなのだと言う。
ちなみに、霊力があるのは、私と陛下とお兄様とリーニャのみだった。
エミリーとエミールさんお父様は、霊力すら無いと言う。……マジか!
「──横から失礼。それにね、アイリ様。どんなに気に入られようと、2つも加護を授けられたという話は聞いたことがないのですよ。王家、神殿の古い文書にも例がないんだ」
神殿長のアルベール様(お兄様)から、熱く補足説明された。
「おそらく、アイリが、この世界の者ではなく、1つは向こうの世界の存在による加護、1つはこの世界の精霊による加護だから、例外で2つの加護を授けられたのだろうな」
「この国でもトップクラスの霊力の強さ、そして "光の精霊の加護" により手に入れた "浄化の力" ──どれもすごいことなのです!」
陛下とアルベール様に説明されたが、なかなかレアな能力持ちになってしまったようだ……
私、霊感があるだけの普通の女子大生だったはずなのになぁ……?
「──うん。というわけで、アイリを見守るために、僕と仲のいい精霊の中で、向こうの世界やアイリに興味があった精霊たちをアイリに付けていたんだ。水盤越しだと月一でしか見れないから、途中からは精霊越しに見守ってたんだよね」
陛下は満面の笑みを浮かべていた。
──精霊たちって……あぁ、あのやたらくっついてくる子たちか!
悪い霊ではなさそうだったし、ほっておいたけど……あいつら! 監視カメラだったのかよ!!!!
「──ちっ。神主さんに頼んで祓っておけばよかった!(小声)」
「それで、僕の両親、先代の王と王妃に 『 "運命の人" を見守りたい』 ってお力添えをお願いしたんだ。
さっき言った通り "貴重な存在" だし、許してはくれたんだけど……。あまりにもずっと視ている僕に呆れて、見守りルールを決められてしまってね……」
──まるで、テレビやゲームの使用時間を決められる子ども……!
私はなんだ? ポ〇モンか? Y〇uTubeか?
どうやら、先代の王妃様にはルールを決められていたようだ。
①女の子のお着替えやお風呂や御手洗は見てはいけないから、精霊に見ていいかタイミングを聞くこと。
②両親が用意した魔道具の鏡を通して、両親どちらかと一緒にいる時に見ること。
③あまりにも時間が長いと、魔導鏡を取り上げる!
毎日見ていたけど、常に見ていたわけではないみたいだった。
ご両親が亡くなってからは、歯止めが効くように神殿で視るようにしていたらしい。
「──でも、知らない奴に知らないうちに見られているなんて……普通に考えて、気持ち悪いよね? 今更だけど悪かった。本当に申し訳ない」
艶のある黒髪をさらりと落とし、整った顔を伏せ、頭を下げる陛下。──これは……本気で悪いと思っている顔だ……
──本当は! このお茶会で陛下にチクっとサクッと嫌味の一つや二つ言ってやろうと思っていたのにっっ!
しかし、感じたのは、少しの気持ち悪さと……それ以上に、思いのほか大きい陛下の愛と自分の能力の特殊性だった。
こんなに恥ずかしげもなく愛を披露されるとは思っていなかったし、それがそこまで嫌じゃないなんて……!
「……陛下のばか! 私もばかっっ!」