アイリ、扱き使われる
妄想をまとめた初投稿につき、文才の無さは見逃してくださいませ……汗
1章は愛理がベルチェ家と王と異世界に馴染むまで
2章は令嬢教育、魔法を使う、カミーユを好きになるまでの過程
1章.2章は展開が遅いです。
1章の人物紹介(31話目)、2章の人物紹介(65話目)をご覧になると、大体話が分かる(ネタバレ)ため、人物紹介に目を通し、2章、3章からでも大丈夫になっています。
3章はできれば2章読んでからの方が分かりやすいです。
───日本
「ううっ……さむっ……! こたつこたつ……!」
籠原愛理、18歳。大学入学のために上京してから初の帰省中。
せっかくの休みだというのに、朝早く起こされたので、久しぶりの実家のこたつを満喫中!
今日は大晦日。
籠原家にとって一年で一番大事な日、というのも、一年張っていた霊避けの結界を張り直す日なのです。
──少々オカルトな話。
籠原家は地主で、大きい家と離れ、畑のある広い敷地をぐるっと一周小川──沢、と呼んでいる! に囲まれている。
更に、裏にそびえる指折山は霊山という、かなり霊を集めやすい土地。
祖父は信心深く、火災で失い建てられた築約5年の新しい家、その中心にある綺麗な吹き抜けの玄関には……それはそれは立派な神棚が作られ、 "水神様" を祀っている。
そして、その立派な神棚のある玄関を結ぶように、各部屋の天井には八角形の結界札を貼り、家の中に悪霊が入り込まないようにしている。
籠原家には隔世遺伝で霊感の強い者が生まれ、霊感の強い者は薄めの黄土色の瞳が特徴。
私も黄土色の瞳で、見ることは出来るがあえて見ない。
正直、霊なんぞ信じたくないし、霊感があっても役に立った試しなんて無い!
むしろ、見えたり感じることを知られると、気持ち悪がられてきた。
だから、霊避けの結界と言われても、視線はあちこちから感じるしピンとこない。
信じたくないとはいえ、弟の倫も2年前に12歳で霊感が目覚めてしまった。
いきなり見えるようになった倫は、精神的な何かの病かと思うほどに錯乱状態に陥った。
倫は、霊を見ることができるだけでなく、夢の中で霊がどのような最期を迎えたのかを、毎晩のように見させられるらしい。
たまたま、倫の霊感が目覚めた2年前の春、大地震が起こった。
津波や地震による死者の魂は彷徨い、指折山を目指した結果……籠原家の周りに溢れたらしい。
可哀想なことに、倫は毎晩強制的に死者の最期を見させられ、眠れない日々が続き、そして衰弱していった。
何の因果か、同時期に母もうつになり、離れで引きこもるようになってしまった。
そんな不幸が重なり、籠原家の雰囲気は非常に重い空気になってしまっていた──
──パンッ! パンッ!
「水神様、結界が消えている間、我が家の守りを何卒宜しくお願い致します!」
おじいの神棚への柏手で、暗い気持ちから戻る。
老人の手から発せられているとは思えないほど、よく響く立派な柏手だ。
「──おい、愛理! おめ、ぬぐだまってねぇで、さっさと顔洗ってこい!」
ババア……いかんいかん。おばあが催促をしてきた。
「オラァ脚立持ってくるすけ! おめ、風呂上がったら天井の御札剥がして新しいのさ張り替えてけろ!」
ジジイ……いかんいかん。おじいが御札の張り替えを押し付けてきた。
──だから、年末年始は帰りたくなかったのですよ!
「はぁい、わかりましたぁ」
渋々、こたつから這いずり出る。
夜になれば、美味しいの三昧だし? 頑張るか~!
東京では食べられない、雉出汁のお蕎麦で年を越す。
これが大好物なのだ。雉は特に私の大好物っ。
そして、なんと言っても籠原家の正月は蟹三昧。飽きるほど蟹を食べるのだ!!
って、食べ物で釣られるのはどうかと思うけれど、完全に気分を切り替えた。
ポジティブさと切り替えの早さは、私のいい所っ!
──ふんふーん♪
張り替え頑張っちゃうぞ〜!
なんか相変わらず我が家の空気澱んでるし?
倫は相変わらず体弱くて風邪で寝込んでるし?
お母さんは相変わらず離れから出てこれないし?
何よりおじい、おばあに脚立上がらせるのは怖いしね!!