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最弱騎士はそれでも最強を目指す  作者: 多摩樹悠一
第一章
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第4話 諦めない


『あ、そっか……。それで俺、聖騎士(パラディン)になりたいんだった』


アルフは目を覚ました。

懐かしい夢だった。


自分は初めて出会った英雄に心を奪われ、恋焦がれ、そして夢を抱いた。


それでも自分には才能も資格もなかった。

その現実が胸に刺さり自然と涙が零れる。


『ねぇ、あんた。いつまで泣いてるの?』


声のするほうを見ると少女の姿がそこにはあった。


『えっと…どちらさま?』

見知らぬ少女だ。

そもそも自分は何故気を失っていたのだろう。直前の記憶がない。


周囲を見渡すとどうやら街の一角のベンチの上のようだ。

『あたしはフィル。あんたが気絶してたから介抱してあげたのよ。』


フィルと名乗る少女の姿を改めて見る背は自分と同じぐらいだろうか。

顔立ちは整っており、髪は肩ほどまで伸びた赤色のセミロング。

胸の膨らみは慎ましいがどこからどう見ても美少女だった。


『そっか…介抱してくれてありがとう』


『どういたしまして、それで?騎士になりたいとか言ってたけどそれが原因?』


アルフはフィルにこれまでの経緯(いきさつ)を話した。


『ふーん、それであんたは夢を諦めて田舎に帰るの?』


『嫌だけど俺は才能ないみたいだしな。それしかないよ』


『才能ねぇ…そんな言葉で諦められるような夢だったの?』


『っ!そんなわけがっ…!』

アルフは思わず少女に食いかかかった

アルフとて生半端な気持ちで王都まで来たわけではなかった。


『そう、ならやるしかないわね』

『いい?確かに今のあんたは最弱かもしれない。でもね、それがどうしたっていうのよ

 弱いなら強くなればいい、才能がないなら才能を手に入れるまで努力すればいい。

 聖騎士になりたいならなれるまで頑張ればいい。』



『夢を叶えた人ってのは何があろうと最後まで決して諦めなかった人たちなのよ』



フィルはそう言い切った。まるで自分がそうであったかのように。



『俺……諦めたくない……』


アルフの心にわずかに炎が灯る

涙は枯れて()


『俺は……』


アルフの心に確かな炎が宿った


『最弱?そんなの関係ねぇ!俺は聖騎士になるまで絶対(ぜってぇ)諦めねぇ!!!!!!』


断言した。諦めようとする弱い自分を打ち破るかのように。


それを聞いてフィルは


『そ、それならよかったわ。』

そう言ってほほ笑んだ


そしてスッっと立つと

『じゃあね、アルフ。また縁があったら会いましょ』

フィルはくるりとスカートをひるがえしその場を去った。



『フィル…か…感謝しなきゃな』

『とはいえこれからどうしたものか…』


騎士になるには神殿で職を証明する印をつけて貰わなければならない。

しかしアルフは能力値が低く、その認定を受けることができない。

となれば修行して強くなるのみなのだが、平民の出のため街に留まる資金が心元ない。

路銀を稼ぎながら修行もできる方法はないものかとアルフは考えを巡らせる。


『よし、とりあえず冒険者になろう』


冒険者は能力値による制限がない。

だれでもなれる職業だ。ただし危険性という面ではこの上ないが…。


そしてアルフは冒険者ギルド前まで来た。

『こういうのは最初が肝心だよな…よーし…』


『たのもおおおおおお!!!!!!!』

勢いよく扉を開け中へ入る。

ギルド内には数人の冒険者っぽい男女とカウンターの女性がいた。


『ぎゃっはっははははははは』

男たちが笑う

『たのもおおおおおだってよぉ!おもしれぇガキだなぁおい!』


『ほらほら皆さん笑ったらダメですよ』

カウンターのお姉さんが男たちをたしなめる。

『えーっと、僕ちゃん依頼かな?依頼だったらあっちのお姉さんに話をしてね』

『いえ!冒険者になりにきました。』


『あらあら、そうなの?なら私が受付するわね。』


『じゃあこれにサインしてくれる?』

そう言ってお姉さんはカウンターの下から1枚の羊皮紙を取り出す。

羊皮紙には名前と性別に年齢など個人情報を書く欄があった。

アルフがそれらに記入してお姉さんに渡すと

『えっと、名前はアルフ…君ね。能力値はF…?』

『はい、Fです。』

『あのね、アルフ君。冒険者ってとっても危険なお仕事なの。』

『魔物を討伐したり、遺跡を調べたり、盗賊や山賊の討伐。それに護衛の任務もあるの。』

『あなたの能力値だとどのお仕事も受けるのはちょっと厳しいとお姉さんは思うんだ』


純粋な親切心だろう。お姉さんはアルフの身を案じて教えてくれる。


『それでも依頼をこなしながら強くなりたいんです!』


『そう…なら私は止めないわ。冒険者アルフ。あなたの冒険者登録を承認いたします。』


そうしてアルフは冒険者となった。

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