第64話 緑竜の青年
敗戦であることを悟ったアースノルドは一人の青年に命じる
『もはや我らの手には負えぬ!青竜たちに助けを求めに行くのだ!』
竜人族にとってその選択は己がプライドを傷つけるものであった。
しかし仲間の命には代えられない。
命じられた青年は集落の裏へと回り、力強く跳躍し堀を越え青竜たちの集落の方向へと走る。
しかし、その光景を見落とすラゼルではなかった。
『ボガイス!いるか!?』
『へい!いやすぜ旦那!』
ボガイスと呼ばれた男はいかにもな悪人面をしているが一応この軍の隊長の一人である。
『あれを追え!』
ラゼルの指示を受けボガイスは数人の手下を連れ、緑竜の青年を追う。
ラゼルがボガイスたちに追わせた理由は一つ。
彼らの足は帝国の技術により強化されており、その足ならば竜人族の足にも追いつけると判断したからだ。
そしてラゼルの思惑通りボガイスたちの部隊は緑竜の青年に追いつき、戦闘となった。
『くそっ!なんだこいつら!何で人間なのに俺に追いつけるんだ!』
走りながらも真後ろにいる敵に向かって恨み言を吐く
『へっ、俺らの足はそこらのやつとは違うのよぉ!』
ボガイスたちが持つ武器はボウガン。
後方から次から次へと青年を狙って矢が放たれる。
さすがに高速で移動していることもあり、矢のほとんどは外れたが
ついにその1本が当たる
『ぐっ…』
思わず声が出て、走る速度が落ちる青年
それを好機と見たボガイスは部下たちに命じる
『今だぁ!打ち込めぇ!!!!』
動きの鈍くなった青年に矢を当てることは熟練の兵であるボガイスたちにとって容易であった
『がぁっ!!!!』
次から次へと矢が命中し、緑竜の青年は苦痛のあまり悲鳴をあげてしまう。
体のあちこちに矢が刺さり流血する。
この出血量では倒れるのは時間の問題だろう
『こん…のぉっ!やろぉっ!』
青年は戦闘に秀でた個体ではない。だがそれでも竜人族の誇りを持っている。
仲間のため、己がため、なんとしても救援を呼ぶ。
そう青年は意を決し、反転し敵と向き合う。
『あぁ?』
そして、彼の吐ける最大の風属性のブレスをボガイスたち目掛けて放った
ゴォォオオオオッ!!と轟音を立て木々を切り刻む風
『なっ!?ぐあぁっ!!!!』
そして吹き飛ばされるボガイスたち。
『これで…時間が稼げるか…』
青年は再びよろつきながらも歩き始める。
それからどれだけの時間が過ぎたかわからない。
青年は朦朧とする意識の中ただがむしゃらに走り続けていた。
だが、体力が持たず、その足はいつの間にか歩きに変わっていた。
『はぁ…はぁ……』
よろつきながら進む青年。
『ここまで…か…ごほっ』
倒れる青年。そのとき抱きとめられた。
『!?』
『おい!どうした!何があった!』
聞き覚えのある声が聞こえた。
その声の主は青竜であった。
そして青年は己が最後の言葉をその青竜伝えた……。




