第3話 夢-前編-
少年は夢を見ていた。
それはまだ少年が聖騎士になりたいと思う前の頃だった。
『おーい、アルフーそっちの作業は終わったかー?』
40~50歳だろうか?立派な髭を蓄えた中年が問う。
『おーう、まだ終わってねー』
アルフは怠そうに答える。
『遅いわ!何時間経ってんだっての!』
『そうは言ってもよ、ガウルのおっさん。柵作りなんて俺やったことないしそんな簡単にできねーよ。』
ガウルのおっさんと呼ばれた人物は髭をいじりながらそんなもんかとアルフの作った柵を見る
『あーこりゃ全然だめだな。これじゃ簡単に魔物に壊されちまう。』
『まじかー』
二人が今やっているのは村の周囲を囲う柵作りだ。
近頃、この周辺で魔物の出現が確認されたという知らせを聞き村の守りを強くするために始めていた。
この村は人口が少なくお年寄りがほとんどだ。そのため比較的若い二人が作業に当たっている。
ガウルの作った柵は見事なものでこれなら猪が突進しても壊れないだろうという出来だった。
しかしアルフの作った柵はあまりにもお粗末な物だった。
束石は土から出ているし支柱や羽板の長さはバラバラ。釘も適当な打ち方で今にも取れそうだった。
『いいか、柵ってのはまず羽板を作るんだがここで手を抜いたらいけねぇ』
『ちゃんと1枚1枚丁寧に作るんだ。長さを均一に作るのは素人にゃ無理だが上を揃えて下で調節すりゃなんとかなる。』
『次に支柱作りだ』
そんなガウルの柵作り講座をアルフは先に言ってくれと思いながら興味無さそうに聞いていた。
『以上だ。これでアルフも立派な柵が作れるようになったろ!作業を再開するぞぉ!』
『はいよー』
そうして二人が再び柵作りを始めたとき異変は起こった。
『うわああああっ!!!!ま、ま、ま、魔物だあああああああああああっ!!!!!』
村の青年。確か名はフックといっただろうか、が林のほうから来たと思ったら魔物を引き連れて逃げてきていた。
魔物の数は3頭。いずれも巨大な猪のような外見の魔物だった。
猪と違うのは大人の背ほどあるその大きさに4本の牙。さらには禍々しい毛色。
『こりゃいかん!』とガウルのおっさんは叫んだ。
『アルフ!ワシは武器を取ってくる!お前さんは……とりあえず死ぬな!』
そう言い放ちガウルは武器を取りに倉庫へと走り出す。
『えぇぇぇぇ死ぬなってどうしろってんだあああああ』
アルフは思わず狼狽える。自分には武器も戦う力も勇気もない。
なら取る行動は一つ。
『『うわああああああああっ』』
村の青年フックと共に逃げ回った。