第39話 窮地
アレリアとフィルが道中魔物を退治しながら城門へとたどり着くと
そこは地獄絵図だった。
傷を負い泣き叫び、逃げ戸惑う人々。
市民を守るべく必死に魔物と戦う兵士たち。
しかしいくら倒せど魔物は次から次へと湧いてくる
数の暴力の前に兵士たちは成す術を失くしていた。
門はかろうじて形を留めていたがもはや門としての意味をなしていない。
魔物は入りたい放題である。
ゴブリン、オーク、トロール、コボルト、インプを始めとする低級だけでなく、
挙句には中級に分類されるオーガやキメラまでいる。
国が滅ぶには十分すぎるほどの数の魔物が魔法国を襲っていた
『一体どこからこんな数の魔物が…』
通常結界があるため、一定以上の強さの魔物は侵入することができない。
だがここには低級だけでなく中級以上の魔物まで存在する。
アレリアは考えた。
こんな現象を引き起こせる存在はそう多くはいない
伝承を思い出せ。王国での知識を最大限に絞り出し敵を見極めろ。
そして…
『いた……一体だけ…こんなことをできる魔物が……』
だが脳がそれを認めたくない。
もしそれがいるのであればこの国は滅ぶであろうからだ
『魔王の降臨……』
魔物を生み出す王。それが魔王。
一体でも出現すれば国が滅ぶといわれている災厄の象徴
歴史上過去に何度か出現したことがあると記録には残っているが
自分たちの代では出現してはいない
そんな存在だ
自分一人があがいたところでもはや何も変わらない
アレリアは手から槍を落としていた
そのとき
パンッ
乾いた音がした
見ればフィルがアレリアの頬を叩いていた
『何諦めてんのよ!魔王だかなんだか知らないけどそいつをぶっ倒せばいいだけじゃない!
あんたが諦めてどうすんのよ!』
『無理だ……そんな伝説上の化け物相手にどう戦えというんだ……それこそ英雄でもいなければ……』
『そうか…英雄だ。アルフ…始人だろう…。君ならこの状況を…』
アレリアの言葉が最後まで綴られることはなかった。
彼女たちの目の前にオーガが現れその巨大な棍棒を振り下ろしたからだ。
アレリアとフィルは絶命した
かと思えた
しかし彼女たちは生きていた。
なぜ?
現れたからだ
英雄が
風になびく金の髪、輝く白銀の鎧に白銀の剣と盾。神々しい光を放つ英雄がそこに現れた。
『姉さま……?』
王国最強の聖騎士であり始人である真の英雄
リーザ・ヴァン・バルバロッサ その人がそこには立っていた。




