第36話 アルフの正体
決闘が終わり両者の治療が行われた。
魔法国の神官がアルフの治療を行おうとしたがフィルが名乗り出て行った。
ノルズ・リマードは引け目に言っても強者であった。
様々な魔法を扱うことができ、さらには上級に当たる【業火】まで扱えた
その才が故に彼は慢心し、いつしか周りのすべての人を見下すようになっていた。
しかし彼はアルフに敗北した
自らが格下と見下していた相手に。
それはとてつもない屈辱ではあったが
己の全力をぶつけその上で敗北するのは彼を不思議と清々しい気持ちにさせた。
『くくく…』
『あっはっはっはっは。やるじゃないか!騎士アルフ!僕が負けるなんてな!』
誰に言うわけでもなく独り言を言うノルズ。
その時部屋にノックが鳴り響いた。
入ってきたのはペトゥラだった。
『あの…兄上様…お体は大丈夫ですか?』
たとえ嫌な相手でも肉親だ。ペトゥラは心配をして、来たのだ
『ペトゥラ。もう様なんて付けなくていいぞ。僕はただのお前の兄だ。』
『それと、今まで悪かったな…』
その謝罪にペトゥラは目を丸くした。あの兄がそんな言葉を発するなんて思わなかったのだ。
『え、まさか頭の打ちどころが悪くて…』
『違うわ!……いや…な、僕は他者の強さを知ったんだ。弱かったのは僕のほうだった。』
ノルズは謙虚な気持ちになっていた。いや、アルフの力がそうさせたのかもしれない。
そしてノルズは言葉を続けた
『僕はお前たちの結婚に賛成するぞ。あんないい男は他にいないだろう』
とんでもないことを言い出した。
『なっ!?ちちちち違うよ!!!アルフはそんなんじゃ!!!!…』
思わず赤面するペトゥラ。確かに自分のために戦う姿はかっこよかったけども!
『何?違うのか?僕はてっきりそうだと思っていたぞ?……あぁそうか、これから口説くつもりか』
そう何かに納得するノルズ。
『違うってば!』
『ふっ、そうか。だがあの男は厳しいぞ。他の女に取られる前に急げよ』
そう言ってニヤニヤとするノルズ。
『ところでその騎士アルフはどこにいるんだ?彼にも謝罪をせねばなるまい』
『あぁアルフなら…』
アルフたち一行は王城へと呼び出されていた。
理由はアルフの謎の白い光の力だ
『アルフといったか。そなたはもしや始人か?』
カイネル・シン・イングリード魔法王はアルフに問うた。
『えっと…何ですか?それ』
なんのことかわからないアルフは聞き返す。
『ふむ、知らぬか。バルバロッサ嬢よ、そなたはどうじゃ?』
『存じております。』
『ふむ、始人とは人類の原点。アダムとイヴの血を濃く引く者のことじゃよ。』
『アダムとイヴ…?』
『うむ、アダムとイヴはその超越した力で当時の過酷な世界を生き抜き子孫を残していった。
それが今の人やエルフ、ドワーフなどの種族に当たるものたちじゃ。』
『アダムとイヴの血はだれもが引いておる。じゃがその力を発揮できる者は極々わずかじゃ。
それを始人と我々は呼んでおる。お主たちの王国にも一人居ったじゃろう』
『はい、騎士団長であり、我が姉リーザ・ヴァン・バルバロッサのことですね』
アレリアが答える
『ふむ、そんな名前じゃったの。』
『ちょ、ちょっと待ってください!俺のあの白い光って聖獣の加護じゃ?』
『コハクの与える加護にそんな効果ないわよ』
とフィルが返答する。
『コハクの加護は傷の治りを早くするぐらい。あんな超人的な力はないわ』
『確か伝承では始人は聖獣に好かれるという話もあったの。それじゃろうて』
『まぁよい、そろそろ本題に入ろうて』
『どうじゃ、騎士アルフ。魔法国に来ぬか?よい待遇を付けるぞ』
突然の勧誘である。アルフは驚きのあまり声が出ない。
『『それはダメです!!!!』』
アレリアとネルが代わりに答えた。
そしてアレリアはおほんと声を整え続けた。
『アルフは我が国の騎士であり、将来は私の夫となる予定の人物です。ですので魔法王の頼みとて受けることはできません。』
『え、えぇ!?そそそんな!アルフさん!嘘ですよね!?』
『お、俺はなんて言えばいいんだ…』
戸惑うアルフ。それを見た魔法王は
『かっかっか!それならば仕方あるまい!ワシも諦めようとて!』
『話は以上じゃ、明日には頼まれてた結界石もできようて。明日また王城へ来るのじゃ』
『かしこまりました。』
そうして一行は王城を後にした。




