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最弱騎士はそれでも最強を目指す  作者: 多摩樹悠一
第一章
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第20話 危機



森の中に轟いた悲鳴。


それが人のものであることはすぐにわかった。

二人は息をひそめながら素早く悲鳴の聞こえた方向へと急いだ。


悲鳴の聞こえた場所まで来るとそこには旅の商人らしき男性一人とその護衛らしき軽鎧を着た人たち三人が倒れていた。


茂みの中に身を潜めながら様子を探る二人。


4人とも息絶えているのかピクリともしない。

商人の傷は凄惨なものでナイフか何かで何度も突き刺されたような傷だ。

周囲には血が飛び散っている。

護衛の傷もまた酷く頭部を何度も殴られたようで顔は原型を留めていなかった。


この4人を殺害した相手となれば今の二人の手に負える相手ではない可能性が高い。

二人は頷き合い、その場を去ろうとした。


そのとき別の茂みからガササッと音がしたかと思いきや何かがアルフ目掛けて飛びかかってきた。


アルフは咄嗟のことに動けなかったがネルの対応は素早かった。


瞬時に抜剣し、それの攻撃を受け止める。


襲撃者の正体はインプであった。

背丈はアルフの半分ぐらいだろうか。

手に血で汚れた黒色のナイフを持ち黒色の肌に尖った耳、そして頬まで裂けた口に翼。魔物だ。


インプは非常に厄介な相手だとその昔ガウルが話していた。

ガウルはぶっきらぼうな男だが親のいないアルフに色んなことを教えてくれた。その一つがインプだ。

インプはその小ささのため力は強くないが素早く動き、ずる賢く、その上群れで行動することが多い魔物だ。

仮にも人の多い王都の周辺には生息しない魔物だと言っていた。


ネルはインプの攻撃を跳ね返すと同時に首を斬り飛ばした。


『おぉ……』その見事な剣裁きに思わず感嘆の声を出すアルフ。

だが

『アルフさん!敵はまだいます!構えてください!』

『わ、わかった!』アルフも剣を抜き身構える。


周囲を見渡すと既に何体ものインプに囲まれていた。

息をひそめアルフたちを待ち伏せしていたのだ。


インプたちはどれも汚い布を纏い、手にはナイフや棍棒を持っていて、

ゲタゲタと醜く顔を歪ませてこちらを見ている。主にネルを、だ。


インプには(めす)が存在しない。そのため異種族の(めす)を襲って子孫を残す習性があると聞いた。

もちろん人間も例外ではないのだろう。


『あいつらの狙いはネルだ!』っと叫ぶアルフ。

『わかってます!』そう言ってネルは飛び出した。


アルフも覚悟を決めてインプに斬りかかった。

ネルに教わった付け焼刃の剣技とはいえ、インプ相手であれば力はこちらのほうが上だ。

インプは武器で防ごうとするがアルフは力業で押し切り倒すことができた。


一方ネルは複数体のインプと対峙しており、次から次へと襲い掛かってくるインプたちを斬り伏せていっていた。


順調にインプを捌いていった二人だったが何か違和感を感じた。

二人で相手できるような低級の魔物相手に護衛3人がやられていたのはなぜか。

なぜインプの死体が1体もなかったのか。

後者は仲間のインプが片づけたのであれば納得がいく。

だが前者は……。


『があっ!』

その時、背後からネルの叫び声が聞こえた。


アルフは振り向くと恐ろしいものを目にした。


インキュバスだ


人型の魔物で成人男性ぐらいの体格を持ち、漆黒の翼を羽ばたかせ、手には金属製の鉾を持っていた。

新米騎士の手には負えない中級の魔物だ。


『なんでこんなところにインキュバスが……』

アルフは思わず呟くがそれどころではない。


あの最弱とはいえ男であるアルフを軽くあしらうほどの実力者のネルが苦戦を強いられている。

このままではネルはやられてしまうだろう。そう思ったアルフは


『うおおおおおおっ』雄たけびをあげ、周りのインプたちを強引に振り払い、インキュバスへと斬りかかった。


『アルフさん!ダメです!』

ネルが叫んだときには遅かった。


アルフは鉾で右肩を貫かれていた。




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