第16話 模擬戦
『ふふふふふ……』
右手に刻まれた騎士の印、そして騎士が騎士たる由縁の騎士の剣。
この二つを眺めながらアルフはにやけていた。
一度は諦めかけた夢。その夢への第一歩を踏み出すことができたのだ。
『……っというわけで……ってアルフ君?聞いてる?』
ネイル副団長が話をしている最中にも関わらずアルフは浮かれていた。
アルフとネイルは王城内を歩きながら会話をしていた。
『す、すみません。聞いてなかったです……。』
素直に謝るアルフ。全面的にアルフが悪い。
『ったくしょうがないな、もう一度言うよ?』
『近頃王都周辺でも魔物の出現が増えていてね。冒険者の方々も協力してくれてるとはいえ
今、騎士団は人手不足なんだよ。』
『だから君が戦力になってくれるなら僕らとしては大助かりなのさ』
『確かに冒険者の依頼板にも討伐の依頼がやけに多かったです』
『だろ?全く困ったものだよ。』
『とりあえずこの後は騎士団の訓練場で顔合わせと軽い手合わせ。そして午後は城壁周辺の見回りの予定さ。』
『わかりました!』
『で、あそこに見えるのが僕らの騎士団の訓練場さ』
『みんなもう集まってるだろうから僕らも急ごう』
『はい!』
そして二人は訓練場に着いた。
そこでは既に男女合わせて20名ほどの騎士たちが訓練を行っていた。
『はーい!みんなーっ!新人連れてきたから一旦中止!集まって集まってー!』
ネイルはそう言って手をパンパンッと叩き団員たちを集める。
皆、強そうな人たちばかりだった。
『こっちが新人のアルフ君。ぶっちゃけ僕らの中じゃ弱いけどかといって甘やかさなくていいからねー』
『アルフです。若輩者ですがよろしくお願いします。』
アルフは頭を下げ挨拶をした。
するとパチパチパチと拍手された。歓迎されているのだろうか。
『アルフ君。今は団長たちは任務に出ているから団長たちにはまた今度紹介するね。』
『それじゃ、みんな訓練に戻って。アルフ君は……そうだね。ネル!』
『ひゃっ!ひゃいっ!』
ネルと呼ばれた少女は驚いたのか声が裏返りながらも返事をした。
『ネル。アルフ君の相手をしてもらえるかな?実力的には君が一番適任だからさ』
『はははははいっ!わかりましたっ!』
おどおどしながらも背筋をピシッっと伸ばし返事をするネル。
『それじゃ、さっそくあそこにある模擬剣を使って模擬戦をしてもらおうか』
そう言って副団長は木でできた剣が何本も置かれている棚を指さす。
模擬剣を手にしたアルフとネルは対峙する。
アルフは内心、このおどおどしたか弱そうな少女より自分のほうが強いのではないかと思っていた。
それに模擬戦とはいえ女の子に攻撃をするというのは嫌だなと考えていた。
『それでは…はじめ!!!』
掛け声とともに距離を詰めなるべく痛くないように斬りかかろうとするアルフ。
だがその剣が彼女に当たることはなく空を斬った。
そして、ドッという音とともにアルフは後方へ吹っ飛ばされた。
ネルはアルフの一撃を身を屈めて躱し、そしてカウンターの突きをアルフの腹部に放ったのだ。
しかしアルフは何が起きたのかわからなかった。
『すすす、すみませんっ!大丈夫ですか!?』
心配そうにかけよるネル。
あちゃーっと言わんばかりに片手で顔を覆う副団長。
アルフは改めて思い知らされた。自分が最弱の騎士であるということを。




