第8話 遊び相手-後編-
コハクとの壮絶な命がけの戦い(遊び)が始まって早1時間。
アルフは身も心もズタボロになっていた。
コハクの遊びは過激でアルフをボールのように宙に放り投げキャッチしたり、
のしかかってべろべろと嘗め回したりしてくる。
アルフは思わず逃げようとするが大喜びで追い掛け回し捕まえて元の場所に戻す。
そんなやり取りが数時間続いた。
そしてようやく指定された日暮れの時間が来た。
フィルがアルフの様子を見に外へ出るとそこには力なく倒れたアルフの上にのしかかって
ハッハッと息を荒くするコハクの姿があった。
『し、死んでる・・・』
『死んでねーよ!』
コハクの下でツッコミを入れるアルフ
『コハク、終わり!』
そうフィルが合図するとコハクはようやくアルフの上からどきアルフを解放する。
アルフは起き上がると自分の体の被害状況を確認する。
しかし不思議と体に傷はなかった。
『ね、怪我ないでしょ。この子近くにいる生き物の傷を癒す力があるの』
『だからおもちゃ…じゃなくて遊び相手を死なせちゃうことないのよね』
あっけらかんと話すフィル。
『ひ、酷い…』
確かに体に怪我はないが心は満身創痍だった。
人として扱われない。それが割の良い報酬の対価だった。
『はい、これ今日の報酬ね。』
銀貨1枚と銅貨20枚の入った小袋を手渡される。
『あぁありがとう…』
『コハク貴方のこと気に入ったみたいで満足気だし明日もこの調子でお願いね』
『うっ……』
正直、断ろうかと思っていた。コハクの遊び相手をしていても目標の騎士になれるとは思えない。
だが、
『これまでの人はコハクったら気に入らなかったらしくてちっとも相手にしなかったの。』
『怒って吠えたり、噛みつこうとしたり体当たりして大変だったのよ。』
『だから貴方ってば、この子の遊び相手に最適なの。ねぇ、お願い』
そう潤んだ瞳で見つめられる。フィルは美少女だ。そんな少女にこんな表情でお願いされて断れる男はそうそういないだろう。
アルフも然りだった。
『はい……』
こうしてアルフはコハクの遊び相手を継続することとなったのであった。