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第6話

東堂が投げた鈴のようなものが俺の手元で鳴り響いている。


「なんだこれ!うるさいんだけど!!」


「それはな…貰いもんだ…なんでも魔物を呼び寄せる鈴だそうだ。俺は死にたくねえからトンズラさせてもらうぜ。まぁせいぜいレベル上げ頑張れや!」


「おい待て!!東堂!こんなのいらねえよ」


俺たちは東堂を追いかけようとした。瞬間、後ろからおぞましい数のモンスターの叫び声が聞こえた。


「兄ちゃん…多分今の鳴き声全部オークだよ…多分30体はいると思う…」


「おいおいまじかよ…逃げるぞ!」


オークというのはでっかい豚の化け物だ。大きなお腹で足が短い。レベルは10くらいで1体や2体くらいなら俺たちも無理なく倒せる。しかし30体となれば話は別だ。無事では帰れないと思う…

俺は鈴を投げ捨てその場からできるだけ離れるように走った。しかし…


「まじかよ…こっちにもいるのかよ…」


目の前には10体ほどのオークの群れがこちらに向かって走ってきた。後ろをふりかえってもオークが追ってきている。


「どうしましょうかねこれ…」


「ねえ…心波くん。目の前のオークだけならどうにかなる?」


「そうだな…多分なんとかできる!」


「じゃあ5分だけ時間を稼ぐわ。その間に目の前のオークを倒してくれる?」


「え?大丈夫なの??死なない?」


「大丈夫よ!私の魔法でオークたちから5分だけ気づかれないようにするの。片方しか出来ないから前のオークは倒してね」


「そういうことなら任せて!秋羅!さっさとオークぶっ飛ばして帰るぞ!」


「おっけー!レベリングだね!」


そんな簡単なことではないと思いますよ秋羅くん…俺たちは空野さんに任せて前のオークの群れに走った。その瞬間、後ろから魔法の名前が聞こえた。後ろから走ってきたオーク達は突然止まり、辺りをキョロキョロし始めた。

なんの魔法だあれ!?俺たちの姿を消したのか?

でも前のオークは俺たちに向かってめちゃめめちゃ走ってきてる。まぁよくわかんないけどとりあえずこいつらぶっ倒すか!


「秋羅は3体!俺は7体!おっけー!?」


「いや、僕は4体だね!兄ちゃんが6体!」


「わがままな弟だなぁ!危なくなったら呼べよ!」


「そっちこそ!てか魔法に当たんないようにね!」


俺は秋羅と会話を少し交わすと走るスピードを上げる。身体強化魔法を使ってものすごいスピードでオークに近づく。あっという間に秋羅はかなり後ろだ。

オークとの距離が3mくらいになった時、俺は少しジャンプしてオークと同じ目線になる。オークはまさに今俺を殺そうと手に持っている棍棒でなぎ払おうとしている。


(悪いな。もう殺気には慣れたんだ…そんぐらいじゃびびらねーぜ)


俺はオークの喉元に剣を突き刺し、抉るように後ろに引き抜いた。


(これだけは慣れないな…)


オークの首からドバドバと血が溢れている。俺は逃げるように次のオークの元へ向かった。


オークはいきなり仲間が殺されて戸惑っている。


チャンスだ


俺は2、3体目のオークの首を素早く切り裂いた。残るは7体。すると後ろから秋羅の魔法が飛んでくる。


「ライトニングランス!」


秋羅の元から雷の槍が凄まじいスピードで飛んでくる。その槍はオークに当たると身体を貫き、奥の木まで穴を開けた。木の焦げた匂いが漂う。さらに秋羅は3発のライトニングランスを放ち3体のオークに穴を開けた。

オークは自分達の命が危ないと察したのか全速力で逃げ始めた。


(逃がすのはもったいないな)


俺はお気に入りの魔法を発動する。


「アイシクルグロウ!」


俺が魔法を唱えると逃げていたオーク達の足元から氷が生えた。その氷はオークの足に刺さりオーク達は全く身動き取れない状態になった。


「よし!秋羅ー!後は空野さん連れてきて逃げるぞ!」


俺は身動きの取れないオーク達を倒しながら秋羅に言った。


秋羅が空野さんを連れてくると俺たちはすぐにその場から離れた。10分ほど走るとオーク達もいなくなり辺りは静かになった。


「ふぅ…なんとかなったな……」


「なんで私まで巻き込まれないといけないのよ…死ぬかと思ったわ…」


「ほんとにごめん!でもレベル4の東堂がこんなとこいるわけないと思ったし…でも巻き込んじゃったのは俺だからなんか奢るわ!」


「ごめん嫌味みたいだったわね…奢らなくてもいいよ。でもその代わり私をあなた達のパーティーに入れてくれない?国枝くん達強いし私もレベリングが捗りそうだから!」


「え!そんなことでいいの?俺達もあと1人探してたしもちろんOKだよ!よろしくね空野さん!」


「春華でいいよ!私も心波くんと秋羅くんって呼んでもいい?」


「わかったよ春華さん!俺達も全然OKだから!てか下の名前じゃないとどっちか分からないしね!」


俺達は改まってあいさつをするとパーティーを組んだ。パーティーはレベル10以上の人で3人以上6人以下で組めて、パーティーを組むとパーティーの誰かが倒した魔物の経験値がパーティーに加入している全員に与えられる便利なシステムだ。おかげでレベリングがめちゃめちゃ捗るぜ。


「よし、ひとまずここを出よう。まだオークがうろついてるだろうし留まるのも危険だからね」


「そうしましょ!私の魔法を使えば帰り道がわかるわ」


「まじか!めちゃめちゃ便利じゃん!お願いします!」


「ソウルトレース!」


彼女がそう言うと白い球体がいくつか出てきて、ふわふわと動き始めた。


「この魔法は自分が1度訪れた場所を頭の中で思い浮かべるとその場所まで案内してくれる魔法なの!今は森の入り口を思い浮かべたからそこまで案内してくれるわ。あれについて行きましょ」


(とっても便利な魔法…てか春華さん便利な魔法沢山持ってるな…)


俺は感心しながら春華さんについて行った。

しばらく歩くとかなり先に明かりが見えてきた。

俺たちはようやく森を出れると安堵した。すると、


「ぐぉぉぉぉおおおおおお!!!!!!!」


(うるさっ!)


とてつもなく大きな叫び声が森に響き渡った。


「なんだ!?」


俺達は叫び声の聞こえた方に駆けつけた。



そこには東堂が腰を抜かして震えていた。


「おい!何やってる東堂!また余計なことしたな!」


「た、助けてくれ!あいつが…あいつが来る!」


「あいつってなんだよ!てめぇさっきは死にかけたんだぞ!一旦殴らせろ!」


「そんなの後で何回でもやらせてやる!助けてくれ!はやく!」


東堂は完全に取り乱してしまっている。俺達は周囲を警戒して東堂に近づこうとした。しかし、東堂の後ろから大きな影が現れた。


「スゥゥ…スゥゥ…ブルルルル!!!」


「や、やめてくれ!うわああああああ!!」


大きな影は人の2倍くらいある棍棒を思いきり東堂に振り下ろした。


「見るな!!!!」


俺は咄嗟に秋羅と春華さんの目を覆った。瞬間ぐしゃりと嫌な音がして血が弾け飛んだ。さらにずん…ずん…と重たい足音が俺たちに近ずいてくる。俺達は息を殺して身を潜めた。


足音が止まる


俺はふと顔を上げた。目の前には人一人分くらいありそうな腕とはち切れそうな腹を持つオークの何倍もでかいしかもめちゃめちゃ臭いオークキングという化け物が立っていた。


「これはやばいな…秋羅、春華さん、俺が走れって言ったら全速力で走ってくれ」


「わかったよ…兄ちゃんは?」


「俺はちょっとばかし時間を稼ぐからできれば森を出てくれ。後で追いつく」


「死亡フラグとか嫌だからね…まじで来てよ…」


オークキングは辺りを見回している。幸いまだ俺達には気づいてないらしい。

俺は足元にある石ころを全力で遠くに投げた。ガサゴソと音を立てながら茂みに落ちた。


「ぐぉぉぉぉぉぉおおお!!」


オークキングはものすごい勢いで茂みの方に走った。


「今だ!!走れ!!」


俺は小さく秋羅達に言うと2人は自己強化魔法をかけて走り出した。その瞬間、オークキングがこちらを振り向く。


「あ、こんにちは…」


俺はしっかりとオークキングと目が合う。


「俺さ…この戦い終わったら家で温かい鍋をみんなでつつくんだ……ってこれ死亡フラグじゃん死なないけどね」


俺は自己強化魔法をかけて剣をゆっくりと構え、オークキングと対峙した









こいつら逃げてばっかじゃね?


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