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「年に1回しか合わない面々がほとんどだけど、そんな感じがちっともしない」
私は手元にある巨峰サワーが入ったジョッキを揺すり、氷を回す。
つい最近まで学生だったとさえ思ってしまうほどに、学生時代の想い出が頭の中で蘇る。
「そうかもね。でも卒業して7年も経ってるのにさ、変わらないって何か良い」
木崎と穏やかに話をしていると、一ノ瀬の飲み物が来て田辺がおどけたように立ち上がった。
「成人式の時から続くクラス会が今回は区切りのいい第5回クラス会です。皆様お出でいただき、ありがとうございます!まぁいつものメンバーがほとんどですが、また来年もあると思うので、その時はまたよろしく!んじゃあ、乾杯!」
田辺の前振りが終わり、漸く乾杯出来た私達は隣り合う級友とジョッキを合わせた。
地方住まいなせいか、都会に進学したっきり帰って来ない人や早々に嫁に行ってしまった人など、田辺の言ういつものメンバーとはこんな理由だからだ。
最初のうちこそ大人しく隣り合う級友と酒を飲みながら談笑していたが、アルコールを摂取する量が多くなってくると、バラバラとあちこちに散らばり始めた。
それまで私と話をしていた木崎は優香の隣りに座る加奈に呼ばれて、私の隣りはポッカリと穴が空く。
そして優香は尚輝を逃さないとばかりに、ずっと話しかけていた。
あからさまな好意は学生のうちなら可愛げがあるが、この年でやられると焦ってる感があってみっともなく感じた。
ああはなりたくないと優香に呆れながら、酔いが回り始めた私は壁に背を預け熱い息を吐いた。
「桜井、久しぶり」
ジョッキを口に当てたら、横から私を覗き込んだ一ノ瀬がニコリと微笑んだ。
そして木崎が居た場所に自分のジョッキを持って、腰を降ろした。
「会長久しぶり」
「いい加減会長は止めようよ。さすがにこの歳で会長は恥ずかしい」
苦笑いで頭を掻く一ノ瀬は、今まで成人式もクラス会にも来た事がなく今回会うのは、高校を卒業してから実に7年振りだった。
「じゃあ一ノ瀬」
「んー、会長よりは良いか」
「初めてじゃない?クラス会に来るの。忙しかった?」
「まぁね、色々あってさ……。けどやっとここに来れるようになった。ずっと……来たいと思ってた」
何か意味のあるような、どこかおかしな言い回しをする一ノ瀬は、喉を鳴してビールを流し込んだ。
「……ふーん」
昔から読めない奴だったが、今もそれは健在のようだ。
私はそんな一ノ瀬があまり好きではなかった。
当たり障りのない態度はどこか周りの人に気を許さず、壁を作っているようで。人当たり良さそうな顔と態度をしていたせいで、余計些細な様子が目についていた。
ハッキリとこうだからと理由はつけられないが、肌でそれが感じられた。
優等生なのだからなのか、あまりにも頭の良過ぎる人間だから、全て計算した行動を取るのだろうか。
落ち着いた感じは尚輝と似ていて、どこか真逆な2人だと思った。