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勇者の過去

「ハヤト、何故こんな俺についていく気になったんだ?」

ベリアルはハヤトに聞く。


「君は勇者として頑張っている、他人に冷たくされててもね。それを見てなんかほっとけなくなったんだよね」


ハヤトはそう言うが理由は他にありそうだ。


「それだけか?」

「はは、君には敵わないや、強いて言えば僕と君が余りにも似ていすぎたから…かな?」


ハヤトは目を細めて言った。

似ている?何処が似ていると言うんだ?

お前は強くて、垢抜けてて、輝いている…それに引き換え俺は…。


ベリアルは自分とハヤトが似ていると言われ、自分から見て雲の上にいるようなハヤトと比較して憧れると共に劣等感を感じていた。


ーーーー


ベリアルは幼き頃より勇者となるべく人よりとりわけ厳しく教育されて来た。


遊ぶ事を許されず、勉学と剣技をひたすら磨き、モンスターが現れれば率先して戦い、街を守る。


そんな窮屈な日々だったがベリアルはそれを当たり前の事と思っていた。

何より、街を守れる事に誇りさえ感じていた。


小さなころは特に、勇者として人望高きベリアルを皆は期待していた。


「ベリアル、お前には力がある、勇気も優しい心もある」

父に頭を撫でられ褒められるベリアル。


「僕、胸の奥がとてもポカポカしてるよ、人を助けるってこんなに心が温かくなるものなの?」


「そうさ、大きくなったらもっとみんなの役に立つ事が出来るぞ!」


そして、そんなベリアルを見て大人達は「貴方もベリアル君を見習いなさい!」と我が子を戒めているのを見て優越感さえ感じていた。


しかしそんな日々は長くは続かない…。


ある日ベリアルは失敗してモンスターを逃してしまい、モンスターにより街は半壊されてしまう。


そして街に戻った先の人々はベリアルに冷たい視線を投げつける。


「お前が失敗していなきゃ街はこんなにならなくて済んだんだ!」

「私の娘を生き返らせて!」


ベリアルは次々と街の人々から罵倒され、平謝りを続けるしかなす術が無かった。


そしてベリアルはその責任として単独で街を立て直す事を強制され、それに対する人の賞賛も浴びぬまま修行と街を守る戦いに明け暮れた。


ベリアルはそれでも頑張ればいつかは報われるだろう、誰かが認めてくれるだろうと懸命に頑張った。


しかし、それからベリアルは笑顔を失った。

喜びも悲しみも、いつの間にかベリアルの感情から消えていったのだ。


ベリアルがある程度大きくなった時、相変わらずモンスターを退治しに行っている時、タルタロス一のチャラ男と自負するジュリアという男と顔をあわせる。


その男は数人の美女とジュリアと同じようなチャラ男を連れていた。


「全くジュリアさんには敵いませんや、沢山の女の子を泣かせては他の男にあげちゃうんだから♪」


「だがそこが良いんだよな、おかげで俺らも女に困らない訳だし子孫繁栄に貢献している」


「何処ぞの街を守る為だけに生きてる勘違い野郎とは違うんだよ、よかったら君達にも女の子を紹介してあげるよ♪」


そこでジュリアはベリアルを侮辱するような事を言った。

(それって俺の事か?街を守る事の、何がいけないんだ!)


「しかしちゃんとやってるとは思えないんだがねえ、この前病人を助けようとして間に合わずに死なせてしまったんスよ?」


「まああまり言い過ぎてやるなよ、役に立たないながらもあいつも頑張ってるんだしさ♪」


「キャ~ジュリア様優しい~」

ジュリアを慕う美女達。


ベリアルがそこにいるのを知っているのか知らないのか、ベリアルを次々と馬鹿にするチャラ男達。


ベリアルはそこで怒るのは勇者のすることじゃ無いと拳を震わせながらも必死に耐えていたがついに理性がプッツリと切れてしまう。


「ぐああああぁ!!!」

ベリアルは狂ったように奇声を上げながらジュリアに殴りかかった。


「キャアアァ!!」

女性の悲鳴、同じチャラ男はベリアルを止めようとするが凶暴化したベリアルを止める術は無く巻き添いにあうのを恐れ手も足も出せない。


更にベリアルは馬乗りになり、ジュリアをひたすら殴る。


ベリアルはこれまで溜めていた鬱憤を吐き出すようにジュリアを殴り続けた。


「あ、貴方これ以上やったら…」


男達はベリアルへの恐怖から遠慮がちに諭すが怒れるベリアルには何も聞こえない。


辺りは血が飛び散り、ジュリアは原型を留めなくなる。

しかしベリアルは止まらない。


「だ、誰かそいつを止めて~!!!」

助けを呼ぶ女性達。


やがて街の兵士が武器を使ってまでベリアルに立ち向かい、ようやく街は沈静化した。

多くの犠牲を払いながら…。


ベリアルは我に返る。

そこには半壊された街やそこに転がる人の骸。


「これは…俺がやったのか…?」

ベリアルは血に塗れた自分の手の平を見る。



「うわああああぁ!!!」

ベリアルは罪悪感と後悔に駆られ泣いた。


これまで庇っていたベリアルの両親も、ベリアルを腫れ物のように見るようになる。

それから数日後、魔王ルシフェルを倒すように王からの達しがベリアルに届くのだった。


それはもはや、流刑に流されるようなものだった。

ベリアルは、街では勇者どころか、化け物のように見られていたのだ。


しかしベリアルは勇者としての誇りは捨てていなかった。

街、そして世界の役に立てるなら本望と思っていた。


それでも人々との確執、嫉妬は拭いきれず、自分とは違い輝いた人生を送る家族やカップルと自分自身との比較にベリアルは苦しんでいた。


そんな所に、ジパングからきた遊び人ハヤトに出会ったのだ。

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