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吸血の魔城

「モンスターが多くなってきたな…」

「そうだな…」

モンスターの群れが勇者二人に倒されている。



勇者ベリアルとジパングの遊び人ハヤトは息を切らしている。


衣服は泥と汗に汚れている。

先程までモンスターの群れと戦っていたのだ。



「衣服の臭いが取れなくなったらどうしよう…」

「お前は女か…」


衣服の臭いを気にするハヤトにベリアルはツッコミを入れる。


そうして進んでいく内に街が見えてきた。

「わあ♪街だ!これで体洗えるひゃっほい!」

(こうして見てると女みたいだな…)


はしゃいでるハヤトを見て外見から本気で少女なのでは無いかと思えてくるベリアルだった。


ーーースモークの街


街は中々大きな規模で数階建ての建物が立ち並びある程度文化は発達しているかに見えた。


しかし人びとは悲しみに沈んでいた。


「何かあったのかな?あの女の人に聞いて来よう」

「この前危ない目に遭ったのに懲りないな…」

「だって気にならない?」


そして30代くらいの女性に聞くハヤト。


「旅人の方?ここでは若い女性がよく何者かに連れ去られるらしいの、お嬢ちゃんも気をつけた方が良いわよ」


「やだなぁ、僕は男ですよ」

チャラいハヤトは笑いながら女性に言葉を返した。


「これは僕が囮にならないとだね♪」

ハヤトは張り切っている。


ベリアル達は武器防具を買い体を休めたあとハヤトは囮になると言い外に出た。


(ハヤトなら大丈夫だろう…)

ベリアルはある程度戦闘能力の高いハヤトなら大丈夫だろうと思うが少し不安な気持ちもあった。


ハヤトはドキドキしながら夜の街を歩く。


建物は沢山あるものの辺りは閑散として暗く、女性が歩いては危険な場所だ。


そんな時一人の男がハヤトの前に現れた。


黒い衣服を纏い青白い顔に長い銀髪、目に(くま)の出来た何とも不気味な男だ。



(来たな、モンスター)

ハヤトはそんな男を見てほくそ笑んだ。



「お嬢さん、やらないか?」

男は話しかけてきた。


「良いぜ、男でも良いというのならね♪」

ハヤトは自分のものを見せた。



「ウホっ、良い漢♪」

男はハヤトを男だと知っても棒は熱り立ち興奮している様子は治らない。


(何っ!こいつノンケか!?)

ハヤトは内心焦る。

男は毒針を吹きかけてきた。


ガバッ!

ハヤトは咄嗟に身を躱した。


「ふうっ、危ないところだったぜ…」

ハヤトは武器を取り出し戦いの体勢を作った。


『ふっ、人間ごときがモンスターである私に敵うと思ってか!』


男、いや吸血鬼はハヤトに襲いかかってきた。

「モンスターとの戦いなら慣れてるよ!」

吸血鬼は人間離れした鋭い爪と牙を見せる。

これは吸血鬼の攻撃前の威嚇である。


二つのナイフを構えたハヤトと鋭い爪と牙で襲いかかってくる吸血鬼のバトルが静粛な夜の街で繰り広げられた。


ーーー宿屋の中


「ハヤトの奴、遅いなー、バーで女と戯れてるのか?」


チャラいハヤトならあり得ると思うベリアルだがどうもハヤトの帰りが遅いのと嫌な予感が消えないのに戸惑いを隠せない。



ーーー夜の街。



「糞、ファック!」

流石のハヤトも吸血鬼の前には押され気味だ。

ハヤトは尻もちをつき余裕の表情の吸血鬼を睨む。


『どうした?さっきまでの勢いはどうした?』

吸血鬼は目の前の窮地に立たされているハヤトを見て性的に興奮している。


『良いねその表情、吸血鬼である私とって最高の餌だ!』

「ふっ、こうなったら奥の手を使うしかないな」

『何!?』

そしてハヤトは奥の手を使った。


「無人剣十字丸!」

ハヤトは二つの剣を十字架にして作った。


『何をしてるんだ?』

「ファック!これならどうだ!」


ハヤトは十字架が効かないとなるとニンニクを投げつけた。


『俺に敵わないとわかっての悪あがきか!?』

「ぐあっ!」


ハヤトは吸血鬼に倒され何処かへと連れ去られた。


ーーー宿屋。

一方、ハヤトの帰りを待つもののハヤトはいつまで経っても帰ってこない。


流石にベリアルは居ても立っても居られなくなった。

「ハヤト…!ひょっとして…!」

そしてベリアルは剣と装具を身につけ外に飛び出した。


走って行く最中、二人の男が話しているのを耳にする。

「自警団が吸血城に向かったが返り討ちにされたらしい、うちの娘もいつ攫われるかヒヤヒヤしてるってのに…」


「そういやさっきも日本人の女の子が吸血鬼と戦ってたけどやられてさらわれたらしいぜ」


(日本人の女の子?ハヤトの事か?)


ベリアルは二人の男の話が気になり、男達の元に駆け寄った。


「その吸血城と言うのは何処にあるんだ?」

ベリアルは二人の男に聞く。


「何だ薮から棒に…それにその格好、あんたまさかあの城に乗り込むと言うのかい?」

「そのつもりだ」


そう言いベリアルはこくっと頷いた。


「やめとけやめとけ!これまでも何人かあそこに向かったが返り討ちにされてんだ!一人で向かうなんざ」


「俺は勇者だ!」

ベリアルは言った。


「勇者!?あの伝説の?こいつなら何とかしてくれるかも知れねえ!」


そして男達はベリアルに吸血城の方角を教えた。


「ありがとう!礼を言う!」

「頑張ってこいよ!」

男達と別れを交わした後ベリアルは吸血城へと向かった。


(ハヤト…無事でいろよ!)

と言う熱い思いを胸にして。


ーーー吸血城。



ハヤトは散々可愛がられた後牢屋に投げ込まれた。

「へへへ、お前らも大事な商品だからな!せめて服だけは着させてやるよ!親切な俺達にかんしゃするんだな!」


ハヤトは首輪を繋がれ腹を温める程度の粗末な布を着せられていた。


そんな時隣にシクシクとすすり泣く少女の声がした。

そこにはハヤトより少し背の低い茶髪でポニーテールの女の子がいた。


「君も吸血鬼にさらわれたのかい?」

ハヤトは少女に聞く。


「うん、見た所貴女チーニンから来たの?」

チーニンとはジパングの隣にある大陸の国である。


「いや僕はジパングから来たんだ、しかしここには強いモンスターが沢山いるね」


「嬉しそうにしないでよ、モンスターのおかげで私達はどれだけ辛い思いしているか…」


と言って少女はまた泣き出す。

「ごめんね、君も可哀想な思いしてるのに…」


と言ってハヤトは少女の体を優しく抱きながらなだめる。


抱き寄せられた少女はハヤトの肌の温もりを感じるが下を見るとハヤトの足と足の間の宇宙生物に気づく。



「え?君って男の子?」

少女は目を丸くした。


「まあね、よく女の子に間違えられるけどさ♪」

呑気な口調で返すハヤト。


「吸血鬼は男の子でも襲っちゃうの?」

「まあ可愛ければ男の子も女の子も関係無いみたいだね」

ハヤトは言う。


「うぅ、寒いよ…」

少女は体を震わせる。


そう言えば着せられている服は腹を温める程度の粗末な服で素足と腕は露出している。

そして秋に差し掛かった所で夜の肌寒さが肌を突く。

寒いのも無理はない。


「こうしてあげるよ♪」

そう言うとハヤトは少女に抱きつきモフモフした。


「こうしてると寒くないでしょ?」

「可愛い顔してチャラいのね♪」


少女は顔を赤らめるがハヤトの好意にそのまま身を委ねた。


「そう言えば名前はなんて言うの?」

「私はマリナ」


ハヤトとマリナは抱き合いながら話に花を咲かせる。


「ハヤトのジョブって何なの?」

「遊び人だよ♪」

「遊び人なのに一人で吸血鬼と戦ってたの?勇者みたい」

「やだなぁ♪モンスターにさらわれる勇者って聞いた事ないだろ?」


ハヤトは笑いながら謙遜する。


そう言えばハヤトに会って以来マリナの中にあったネガティヴな感情がすっかり消えた気がする。


ハヤトのこのような状況下での笑顔は人をネガティヴにさせない気配り、優しさを感じる。


(このまま時が止まってしまえば良いのに…)


囚われの身でありながらマリナはハヤトを前にしてこのように考えてしまっていた。


しかし時は残酷で、タイミングの悪い事にベリアルが吸血城に乗り込み、モンスターの群れと戦い、呪文による攻撃で凄まじい爆音がハヤト達に響いてきたのだ。


(私、ハヤト君と繋がりたい!)

そう思ったマリナはハヤトに自分の良いところをアピールしだした。


「私、料理が得意なんです!もしここから出られたらご馳走します!それに動物も大好きで…」

「そ、そう?」


あまりに必死にアピールしだすマリナに少したじろぐハヤト。


チュドーン!!!

そんな時、ベリアルにより放たれた魔法の爆音が響いてきた。



「ベリアル?助けに来てくれてるのか??」

ハヤトはそこでマリナを離す。


(くっそ良いところだったのにっ!)

一方のマリナは悔しがる。


ーーー一方、ベリアルのいる箇所



ベリアルは吸血鬼の群れを次々と薙ぎ払う。

「曲者だ!出会え出会え!!」

ベリアルに襲いかかる吸血鬼達。


「はぁーーー!!!」

ベリアルは大剣と魔法を操り猛る!


ベリアルの活躍により吸血城は全壊し囚われていた女性達は助けられた。


マリナは何と街長の娘だった。


助けられたお礼にと屋敷に招き入れられるベリアルとハヤト。


マリナはハヤトにはべったり引っ付く一方ベリアルは何故か遠ざけられ睨まれていた。


(くっそ俺はお前達を助けた勇者なんだぞ!何故そのような扱いを受けなければならぬ!?)


ベリアルはハヤトが厚遇される一方自身は冷遇されるのに苛立ちと嘆きを感じていた。


「マリナちゃん、ベリアル君は僕や君達を助けてくれたんだから優しくするべきだよ」


とハヤトは諭したがまだ10代前半の乙女心ゆえかずっとマリナはハヤトには恋人のように懐きベリアルには親の敵のように見る姿勢を止めなかった。


ーーーハヤト視点


「マリナちゃん、可愛かったな♪ あの子また抱いてあげてもいいんだけどな」

 俺が冗談でそう言うと、ベリアルは怒気を露にした。本当に面白い奴♪


「そうだな。子孫を残すためには、女と一緒になる方がお前のためだろう」


 ベリアルの口から出た言葉は予想外だった。

 さすがの俺も慌てる。


「なんちゃって♪ 俺は歴史に名が残ればいいんだよ、お前と一緒にな」


「フン、ならばつまらないことを抜かすな」


 俺がフォローすると、ベリアルはほっとしたのか表情が和らいだ。



 ゴメンゴメン、吸血城であれだけ活躍したのにマリナちゃんが俺にべったりして君に冷たかったこと、相当根に持ってるなこりゃ。


そして僕らはスモークの街を離れた。

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