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東洋から来た遊び人

ベリアルが城を出て外へと出ようと言う時異国から来たらしい者が子供達に曲を聞かせていた。


おかっぱのツヤのある黒髪、透き通るような白肌、和服と思しき服装、美しい素足をスラリと伸ばしたその姿はベリアルをも魅了させるようだ。


しかし高いプライドと使命感を持つベリアルは意にも介さぬ素振りをして歩く。


子供達はその異国から来た者を慕っていて大人達もその異国の者の容姿と曲に見惚れているようだ。


ベリアルはその者との温度差に胸の奥がつっかかる思いをしたが勇者として立ち止まろうとはしなかった。


そのベリアルのどこと無く儚い何かを感じた異国の人はベリアルに話しかけた。


「ねえそこの勇者さん」


ベリアルは無言のまま振り向く。


その美しい容姿からして少女のようだった。


少女は天使のような笑顔をベリアルに向ける。


「僕はジパングと言う国から来たハヤトと言います、魔王を倒しに行くんですってね?」



フレンドリーに話しかけてくるハヤトだが愛情に慣れていないベリアルにはハヤトのフレンドリーな態度に少し戸惑いを覚える。



しかしベリアルは突っぱねるようにハヤトに返す。



「魔王退治頑張ってくださいね、それとつまらないものだけど僕からの餞別!」



そう言ってハヤトはベリアルに何かを投げてきた。



ベリアルはそれを片手で受け止める。



それはリンゴのようだった。



「ねえあの人にあまり関わらない方が良いよ」


子供は恐れるようにハヤトに小声で話す。



「でもこの世界を救ってくれる勇者さんなんだ、あまり悪く言うもんじゃないよ♪」


ハヤトは子供達をたしなめた。


ところがベリアルは受け取ったリンゴを片手で握り潰してしまう。



ぐしゃりと握り潰されたリンゴは大地に崩れ落ち、大地の栄養源となる。



「大した握力だね、その力があれば魔王も敵じゃ無いかも♪」



ベリアルに歓迎されない態度を取られたにも関わらずあっけらかんと笑うハヤト。



ベリアルはふんっと鼻を鳴らし踵を返して歩き出した。



ーーーT字路に別れた森。


一方は村に繋がっており一方は違う場所へと続いている。



外に出て少しベリアルは安心感を得た。



何故ならあのハヤトと言う者と自分との温度差を感じなくなるからだ。



そもそも俺は勇者だ、何故勇者である俺よりあのようなチャラけたどこの馬とも知れん奴が皆から慕われるんだ!



思い返す度悔しさを覚えるベリアル。



その一方で隣の村はモンスターに襲われていた。


ベリアルはモンスターが村を襲っていたのを目の当たりにしたが助けるようという気は起こらなかった。


何故なら小さな村を助けるのにメリットを見出せなかったから、そして助けた所で「もっと早く助けてくれたら…」などと文句を言われるといった経験ばかりをしてきたからだ。



俺には魔王を倒すと言う使命がある、大きな街ならともかく、このような小さな村を救っても見返りも無さそうだからな。



ベリアルは小さな村を無視して足を速めた。



そんな時何処かから透き通った声がベリアルの耳に入った。



「助けに行かないのかい?」



ハヤトの声だ、ハヤトは登った大木の枝に座りベリアルを見降ろしていた。



ミニスカートのような短い裾から白い下着が見える。



(こいつ…男か…?)



少女のように見えたが下着を見てハヤトと言う少女が男という事がわかった。


「よっと!」



ハヤトは身軽に大地に飛び降りた。



着地の仕方も器用で、何かの雑技団にでもいたのだろうかと思わせる身のこなしを見せるハヤト。



「何故俺が貴様に言われなければならぬ」



ベリアルはぶっきらぼうにハヤトに返した。



「君は仮にも勇者なんでしょ?勇者だったら襲われる村を助けてあげなきゃ」



「喧嘩を売っているのか?そもそも貴様は何者だ?」


ベリアルは怒りに満ちた表情を見せハヤトに毒突く。


しかしハヤトはいとも冷静に言葉を放った。



「僕?僕はただの遊び人さ♪」



「遊び人だと?くだらん」



ベリアルはハヤトを無視して村と外れの道を進もうとする。



「おっと、君が僕に用が無くてもまだ僕は君に用があるんだ」


ハヤトはベリアルを通せんぼしてその道を遮った。


「さっさとどけ!退かぬと斬るぞ!」



ベリアルはそう言い剣で脅した。



「どうしてそう刺々しくするかなあ?僕はただ君と仲良くなりたいだけなのに…」



ハヤトは困ったような物言いをする。



「そもそも俺に近づいてどう言う魂胆だ?誰とて俺にそこまで近づいたりはしなかった、したとしても俺は何度も騙されてきたんだ、もう俺は騙されぬ!」


「寂しい人だね、そうやって人を遠ざけるんだ」


ハヤトは少し哀れむようにベリアルに語る。


「勇者である俺に同情などいらぬ!そもそも凡人ごときにとやかく言われる覚えはない!」


ベリアルは威嚇するように吼える。


「君の言う凡人だって立派に生きてるんだよ?汗水働いて苦しい思いしてる人だっている、そう言う人の事も認めてあげたらどうかな?」


「何故勇者である俺が虫けらを認めなければならぬ!」



「君と戦いたくは無いんだけど…しょうがないね♪」


声質は可愛いままだが少しだけ目は本気になるハヤト。



「死んでも俺を恨むな、そもそも俺に喧嘩を売った貴様が悪いんだ!」



ベリアルはそう言い大地を踏み込んだ。


ブンッ!



ベリアルの剣撃は空振りした。



ハヤトがはらりとベリアルの攻撃をかわしたのだ。



(バカな!この俺が空振りだと!?)



ベリアルは簡単に攻撃をかわされ戸惑う。


そもそもそこら辺の者とは到底違う力を生まれ持っていたベリアルは誰にも負けない自信があった。



しかしハヤトは簡単にベリアルの攻撃をかわしたのだ。



「まぐれが何度も通用すると思うな!」


ベリアルは必死にハヤトに斬りかかる。


しかしハヤトは身軽な動きでベリアルの攻撃を次々とかわしていく。



「どうしたの?もう息が上がってるよ?」


ハヤトは余裕に微笑みベリアルに耳元で囁く。



「くっそ!これならどうだ!!ファイア!!」



ベリアルは火の玉を手のひらから出しそれをハヤトに飛ばした。



チュドーン!!



爆発が起こりそれはハヤトの身体を巻き込んだ。



白い煙が空を舞う。


「ふっ、この俺がガキ相手に本気になっちまうとは…」


そう言いながらもざまあみろと言う目線で不敵に微笑むベリアル。


白い煙が上がったとき、そこにはハヤトの姿では無く着物を着せた木がそこにあった。



「木だと!?ハヤトは何処に!?」


「ここだよ♪」


ハヤトはベリアルの背後に現れクナイをベリアルの首筋に当てていた。



そしてハヤトは白に近い肌色をさらけ出し下着のみを羽織った裸同然の格好をしていた。


細く華奢な身体、柔らかい肌の感触、少女のような見た目に感じるが下着の膨らみから男である事はわかる。



しかしハヤトのその姿をみてベリアルは同じ男同士にも関わらず妙に発情を覚えてしまった。


「この勝負、僕の勝ちだね♪」


ハヤトはベリアルから手を離し着物を羽織る。



「さあ僕が勝ったんだから村のモンスターを倒しに行こう!」


「あ…ああ」


今のベリアルにはハヤトに逆らう術など無かった。

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