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偽りの勇者

「ウボァー」


勇者(ヴァリアント)賢者(アセンシャー)の会心の攻撃でルシフェルはついに倒れた。


「ぜえぜえ、とどめを刺してやる、これで終わりだ!」


ベリアルがルシフェルにとどめを刺そうとする。


「待て!」


ハヤトがそれを止める。

ハヤトはルシフェルを優しく抱きとめた。


「君は元勇者だったんだろ?だから君の気持ちはよくわかる、辛かったよね…」


「ハヤト…」


ベリアルも勇者だ、勇者はいずれモンスターになってしまう。だからハヤトも、いずれモンスターになってしまう事を恐怖していたに違いない。


『私の気持を組んでくれると言うのか…』

ルシフェルは涙する。


「僕も勇者だ、そしてそこにいるベリアルも、君も元は僕らと同じ志を持って世界の平和を守ってきた、なのに秘密を知ってしまい、魔王になった、違うかい?」


ハヤトは透き通った優しい声を放つ。


『その通りだ、俺も元々は勇者であり、街を、世界を守れるのは勇者だけだと思い、モンスターを倒し、勇者である事を誇りにしてきた、しかし、そんな勇者が敵であるモンスターとなってしまう現実に絶望し、私は魔王になって世界を滅茶苦茶にする選択を取った』


ルシフェルは嗚咽をあげながら語る。

三つの目からはとめどなく涙が溢れる。


「もういい、何も恨まなくて良い、呪わなくて良いんだよ、君のその気持ち、僕も受け止めてやるから…」


ハヤトもまた、涙する。

そしてベリアルも。


「勇者達よ…」


するとルシフェルの全身に包まれた鎧が崩れていく。


バリン!

ルシフェルの全身を包む巨大な鎧が粉々になるとそこに緑色の長い髪をした美青年の姿が。


「モンスターが人間に…」

「ルシフェル…わかってくれたんだね」

ルシフェルは立ち上がる。


「あぁ、君達のおかげで目が覚めた。ハヤト、ベリアル、俺も仲間に入れてくれ!」


「勿論だよ!さあ行こう!」


ハヤトとルシフェルが握手した直後の事だった。


「勇者ごっこはそこまでだ!諸君!!」


ドォンと扉が開くとそこに金色を基調とした衣服を着た金髪碧眼の青年を中心に、武装をし、銃を構えた兵士達が現れた。


勇者三人は兵士達に取り囲まれる。


「くそっこうなる事を見計らって!」


ルシフェルは悔しがるがベリアル達は何が起きているのか判断に時間を要していた。


「ふふふ、まさか勇者の秘密を知った者達が一気に捕まるとは思ってなかったよ」


青年、ミカエルは邪気の含んだ笑みを浮かべた。


「悪いが君達にはここで死んで貰おう!ラグナロク(神への反逆)を起こされては困るのでね!殺れ!!」


ミカエルが手を前に出し指揮する。

すると兵士達はベリアル達めがけて銃を撃ち放った。


ダダダダッ!!


凄まじい銃撃音と共に凄まじいスピードの銃弾が勇者達を襲う。


「バリア!!」

ルシフェルが魔法を唱え銃撃から身を守る。


「ベリアル!ハヤト!お前らは早く逃げろ!ここは俺が食い止める!!」


「しかしっ!」


ハヤトがルシフェルを見殺せないと前に出るがベリアルがハヤトの手首を掴む。


「ハヤト!気持ちはわかるがここはルシフェルに任せるんだ!」


そしてベリアルはハヤトを姫のように抱き抱え、飛び降りる。


「無駄だ!我々からは逃げられぬ!!」


ミカエルは高らかに笑う。


「貴様ら!我が身が滅びても勇者の誇りは貴様らには挫く事は出来ぬ!!」


ルシフェルは大剣を両手に持ち、ミカエル達めがけて振り上げる。


「うわあぁっ!!」


旋風がミカエル達を襲いミカエル除く兵士達は吹き飛んでいく。


「中々の魔力、流石大魔王と言うだけあるね、しかし大天使である私にはそよ風程度に過ぎない」


ミカエルは髪をなびかせるだけでピクリともせずわずかに微笑む。


「ほざけっ!!」


ルシフェルはミカエルを大剣で斬りかかった。

ミカエルは手から剣を出し、ルシフェルの剣撃を受け止める。


「大天使と戦おうと言うのか、構わぬ♪」

ルシフェルとミカエルが一騎打ちをする。


ーーーベリアルはハヤトを抱え地上に降りるがそこには待ち構えた兵士達の姿が。


「お前らは完全に包囲されている!大人しくここでくたばるのだ!!」


「ハヤト、一気に駆け抜けるぞ!」

ベリアルが小声でハヤトに耳打ちする。


「うん、ベリアルが一緒なら、もう何も怖くない!」

ハヤトは微笑みながら答える。


「ハアァーッ!!」

「ヤーーーッ!!」


ベリアルとハヤト、猛る!

勇者と賢者は魔法や剣で兵士の群れを薙ぎ払い、逃げて行った。


「逃すな!追え!!」

銃弾を撃ちながら追っていく兵士達。


「ハァハァ…」

「歩けるか?」


足を銃で撃たれ、ビッコを引くハヤトにベリアルが優しく抱き抱えながら歩く。

ボロボロの体、ボロボロの服で歩く漢と倭。


「取り敢えずあそこの洞窟に行こう」

ベリアルはハヤトを抱えながら洞窟に向かう。


薄暗く冷たい洞窟の中。

しかしここなら兵士達も追って来れない。


「ごめんね、いつも僕、足手まといになっちゃって…」


「足手まといなもんか!俺はお前がいなくなった間思ったんだ、お前の存在がどれだけ大きかったか、俺は、お前がいなければ何もできない…!」


ベリアルはハヤトを抱きしめ、泣き崩れる。

ベリアルの温かい涙がハヤトの顔にかかる。


「ベリアル…僕もだよ…」

ハヤトは微笑む。


「ハヤト…愛してんぜ…」

「俺も愛してんぜ…ベリアル…」


冷たい洞窟の中、二人は愛し合うように体を密着させる。


ーーーー。


やがて二人は寒さと栄養不良で動けなくなる。


「ここまでか…でも僕は最後までお前がいるなら、何の後悔もない…生まれ変わっても…一緒にいような…」


「ああ…」

「愛してんぜ…」


そして二人は交わりあった。

互いの命が尽きるまで。


ーーー


ベリアルとハヤトが尽きるまで交わったその洞窟には沢山のモンスターが産まれ出し、後に「魔物の巣窟」と呼ばれ、勇者達の経験値稼ぎの格好のエリアとなる。


ーーー



この世に勇者はいない!

世界中を通して権力者によってこの言葉が広められた。


ベリアル達は勇者がいない事を証明させる為に人身御供にされていた。


勇者を信じ、待ち続けるのではなく、自分達で世を切り開き、平和を保って行こうと言う建前を作り。


勇者の歴史はここで幕を閉じた。


これからは勇者でなく人々自身が世を切り開いて行くだろう。


多くの代償をもたらしながら…。



偽りの勇者…完





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