雨の手力
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「ハァーッ!!」
ヤマタノオロチと単身で戦うベリアル。
しかしヤマタノオロチには手も足も出せず、大ダメージを負う。
(くそぅ、HPもMPももう殆ど残っていない…万事休すかっ!)
ヤマタノオロチは大口を開き、ベリアルの息の根を止めようと襲いかかる。
そんな時、男性が現れ、ヤマタノオロチの攻撃からベリアルを救った。
大きな数珠を持ち、そこから光のバリアを放ち、ヤマタノオロチの攻撃を防いでいる。
その男性は武藤タケル、かつてハヤトを救った住職である。
「こやつは貴様に敵う相手では無い!ここはひとまず逃げるのじゃ!!」
そしてタケルとベリアルはヤマタノオロチとの戦闘から逃れる。
手当を受けるベリアル。
「かたじけない…貴方は?」
「私は武藤タケル、原作霧生叶氏の作品では中学二年生として登場し、本作では40代の中年男、寺の住職をしている」
タケル氏は答えた。
「それより大変な事になった…ウズメハヤトが天の岩戸に閉じ込められてしまった」
タケル氏が言う。
「天の岩戸?」
「深い負の心に囚われた者の心に漬け込み、身体ごと封印する邪なるモンスターじゃ、遥か昔、天照大神もそこに閉じ込められたと言う」
「そいつはどこに?」
ベリアルは聞く。
「そいつは目には見えない、いや、相手側の心の悲しみが深い内は見えないのじゃ、見えるようになるには相手側の心を開くしかない」
「そこでだ、お主にハヤトの心を解きほぐして欲しいのじゃ」
タケル氏の言葉に自分には荷が重いのでは無いかと自信を失うベリアル。
「俺には無理です…俺は口下手だし、昨日もハヤトにきつく当たってしまった…俺にその役目が務まるかどうか…」
「ベリアルよ、ハヤトの魂を抱きとめられるのはお主だけだという事がまだわからぬのか、ジパングに、勇者として生まれた同じ男として頼む!」
「…」
ベリアルにはハヤトを救う自信が無かった。
不器用で口下手な自分がどうハヤトの心を救ってやれるのか。
タケル氏はベリアルの返答をしばらく待っていたが中々返って来ない事に溜息をついた。
「…わかった、今のお主には時間が必要のようじゃ、心の準備が出来たらいつでもわしに声をかけるが良い」
そう言って武藤タケル氏は踵を返し、姿を消した。
ベリアルはしばらく迷っていたがかつてのハヤトの一喝を思い出す。
(ベリアル、お前の背負っている運命も宿命も、今日から全部俺が背負ってやる!どんな時にだって一緒に歩いてやる!ベリアル、運命なんてな、糞食らえだ!!)
くっ、ハヤトもあんなに頑張ってたのにそれに引き換え俺は…。
このままでは俺は勇者と呼べない。
大事な強敵を失う訳にはいかないからな!
ハヤト、お前の運命と宿命、俺も半分背負ってやろう!今助けに行くぞ!
そして意を決したベリアルはタケル氏の元へと走った。
「待ってくださいタケル氏!!」
タケル氏の後ろからベリアルが叫ぶ。
「タケル氏、俺、ハヤトを救い出して見せます!」
ベリアルは息を切らせながらタケル氏に意志を示した。
「そうか、ハヤトが心を開いた時、主らの絆はより固いものとなるだろう!行くぞベリアル!!」
「はいっ!」
そしてハヤトの囚われているとされる天の岩戸へとタケル氏とベリアル、二人の漢は向かう。
武藤タケルは天の岩戸と言う目には見えないモンスターを探る為サイコメトリーする。
サイコメトリーとは残留思念や物質的には見えない邪なるものを感じ取る超能力の一種である。
その技は住職や巫女、霊能力者が得意とする。
武藤タケルも住職ゆえにサイコメトリーはお手の物だった。
「むっ!」
ある所まで行くとタケル氏は立ち止まった。
「ここに天の岩戸の気配がある」
「何も見えませんが…」
「閉じこめられた者の心の嘆きが深ければ深い程天の岩戸は霊力を発揮しやすい。霊力を弱らせれば天の岩戸は姿を表すじゃろう」
「つまりはハヤトの心をこじ開けろ…と?」
「そう言う事じゃ、お前一人でもやれるな?」
「…」
ベリアルに自信はない。
「自信を持て、お主なら出来る!」
タケル氏は発破をかける。
「うむ、やってみます」
ベリアルは前に出た。
「ハヤト、俺だ!ベリアルだ!わかるか??」
ベリアルはやや緊張した様子でハヤトに声をかける。
「ハヤト!背負っている運命も宿命も、今日から全部背負ってやると言ってたな?なら俺もお前の運命も宿命も纏めて背負ってやろう!だから出て来い!」
天の岩戸は姿を現さない。
(何かいけない事を言ったのか?どう言えば良いのか俺にはわからない)
そんな時タケル氏はベリアルにテレパシーを送った。
(ベリアル、主のハヤトに対して思っている事を素直に伝えるのじゃ!)
俺がハヤトに対して思っている事?そうだ!
「ハヤト!お前は俺の最高の強敵だ!愛してんぜ!!」
ゴゴゴ…。
すると目の前に金属製の大きな扉のようなものが現れた。
「ベリアル!天の岩戸が姿を現したぞ!攻撃するのじゃ!!」
タケル氏が言う。
「良いですとも!!」
ベリアルは剣先に真空を集め、そしてX字型に風を切る。
「キバクロス!!!」
X字型のかまいたちが天の岩戸に炸裂し、天の岩戸は四つに割れた。
『何ぃ!?我の姿が見破られただと??』
天の岩戸が断末魔を上げて消滅し、ハヤトが姿を現した。
「ハヤト!」
落下するハヤトを抱くベリアル。
「ベリアル…」
「ハヤト…無事でよかった…」
ベリアルは泣きながらハヤトを抱きしめる。
「く、苦しい、やめろよベリアル!」
嬉しさのあまり加減を忘れているようだ。
「おっと、すまない…」
ベリアルはハヤトを優しく降ろす。
「ふむ、後はヤマタノオロチを退治するだけじゃ!」
「待ってください!」
そこでハヤトが声をあげる。
「ヤマタノオロチはそのままでは倒せない、僕に良い考えがあります!」
ハヤトは提案した。




