ハヤトの故郷
ジパングにラストダンジョンの扉を開けるクリスタルがあり、ヤマタノオロチがそれを持っていると言うことで船に乗りジパングへ向かうベリアル達。
潮風の独特の香りを味わい二人は海の遠くを眺めている。
彼等ははたから見れば美女と野獣…カップルのようだ。
「ジパング…僕の故郷、みんな無事だといいけど…」
ハヤトはつぶやく。
「お前は、故郷の奴らを恨んでないのか?」
ベリアルが聞く。
ハヤトは故郷ではベリアル同様いじめられていた。
ベリアルは、故郷には出来るだけ戻りたくないし何か起こったとて行く気もなかったに違いない。
「ううん、僕には家族と武藤タケルさんがいたから、それに、今頃恨む理由なんてないよ」
ハヤトは微笑みながら答える。
「そうか…強いんだな…」
ベリアルはハヤトの芯の強さに感心する。
少しはハヤトを見習わなければな…。
ベリアルは思った。
「あ!見えてきた!」
懐かしい故郷が見えてきてハヤトは声をあげる。
ーーージパングーーー
ジパングは2年前とほぼ変わっていなかった。
近代文化は進んでいるが昔ながらの和風も大切にし、緑が豊かで四季に分かれた情緒のある国。
しかし、ハヤトと同学年の、特に男子はハヤトより一回りも大きくなって、顔は精悍になっていた。
ハヤトは少年だが、退化の秘術を自ら浴び、成長は止まってしまい、魔力も減退してしまっている。
微力な魔力は残っているものの過去のようには戦えない。
ーーー
ハヤトの故郷でヤマタノオロチの部下と思われるモンスターが暴れていた。
鬼のような姿のモンスターは美女や酒をかっぱらっていた。
『ひゃっはー!可愛い女の子はいねえかー!』
ヤマタノオロチに献上する為女の子狩りに勤しむ部下モンスターに逃げ惑う女性達。
「あ、あれを見ろ!!」
ある一人の男が指差す先には天女のようにゆっくりと地上に舞い降りる花柄のついた黒い衣装を羽織った少女の姿が。
「めいみちゃん!?」
「めいみちゃんが戻ってきたぞ!!」
人々はめいみと言う少女が戻って来たと歓喜の声を上げる。
しかし残念ながらめいみと思われる人物は雲鳴隼斗である。
モンスターの群れはハヤトの舞に魅入る。
「はあーっ!」
そこでベリアルの一閃。
「ギャーッ!」
モンスターの群れをやっつけた。
戦いが終わると人々は一点してハヤトに寄ってきた。
「めいみちゃん!生きてたんだ!」
「覚えてるか?俺だよ俺!」
ハヤトの事を皆めいみと思っているようだ。
しかしハヤトに嘘は付けない。
「みんなごめん、僕はハヤト、めいみじゃないんだ!」
ハヤトがそう言うと皆は白けたようにハヤトから離れていく。
そしてハヤトより一回り大きくなった同級生の少年。
はハヤトの側を通り過ぎる時こう言った。
「今頃ノコノコ戻って来るんじゃねえよ人殺し」
ハヤトは今の一言でショックを受けたようでそこで固まってしまう。
「ハヤト…気にするな…」
ベリアルはこう言うが他にどう言えば良いのか言い方に困っていた。
「ごめん…ちょっと、一人にしてくれないか…」
ハヤトはいつにもなく重い口調でベリアルに言い、歩いて行った。
「…」
口下手なベリアルには励ましの言葉が見つからず、悲しみに沈んだハヤトをそのまま見送る事しか出来なかった。
(やっぱりみんな、僕の事を恨んでいる…めいみちゃん…やっぱり僕にはめいみちゃんのようにはなれないよ…)
ハヤトの瞳には涙が溜まる。
ハヤトはめいみの遺志を受け継ぎ、彼女のようになろうとしていた。
しかし現実には抗うことが出来なかった。
それから、一日中会話らしい会話は出来なかった。
翌日、ヤマタノオロチ退治にでかけるベリアルにハヤト。
しかしハヤトにいつものような元気は見られない。
「大丈夫か?今日は休んだ方が良いんじゃ…」
「ううん、大丈夫、早く行こう」
ハヤトは勤めてぎこちない笑顔で言う。
しかしやはり昨日のショックからは立ち直れていないようだった。
熱い洞窟を乗り越え、ついにヤマタノオロチの元に辿り着くベリアル達。
「たあーっ!!」
ヤマタノオロチとの戦いが始まる。
しかしハヤトはいつものような身のこなしが出来ない。
そんなハヤトを前にしてベリアルはハヤトを突き飛ばしてしまう。
「足手まといだ!引っ込んでろ!!」
そう言った途端ベリアルは言ってしまった!と思ったがその直後ヤマタノオロチの奇襲に遭いパーティは全滅してしまった。




