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「正確にはもう私、死んでるんスけどね……」




透明感のある素肌に、見たこともない機械が痛々しく埋め込まれていた。まるで臓器の代わりとでもいうように機械は心臓のような小さな音と共に作動していた。

「先輩は知らないでしょうけど、私こう見えてもけっこう身体は綺麗だったと思うんスよ……」

後輩は自分の体を見つめてそう言った。





「これ……埋め込まれてるのか?」

「そうっスよ。臓器は全部抜かれて、代わりに機械が埋め込まれてるんス。そうじゃないと負荷に耐えられなくて一瞬でバラバラになるので」

後輩はクスッと小さく笑った。

「正確にはもう私、死んでるんスけどね……」





その台詞を聞いて、身体の体温が急に冷めたのが分かった。もう後輩が助かることはないのだと悟ってしまった。

「さぁ先輩……そろそろお願いしますね……」

いつもは笑っていた後輩が、今日は泣いていた。

僕は小さく頷いて、彼女の首もとに手を回した。





後輩の首はあまりにも細かった。動揺している僕でも失敗することはないだろう。

グッ、と親指に力を入れ声帯と呼吸器の部分を絞めた。

酸素が脳に届かなくなり始める。

後輩の顔色はみるみるうちに悪くなり、唇の色が紫になっていく。

「……ぱい……せん……い」





僕は咄嗟に力を緩めようとしたが、後輩が僕の両手を包むように手を添えた。

「大丈夫……ス。このまま……、あの……もう一つ……最期のお願い……。さっきのは……兵器として……、これは……最期に人として……私の一生のお願い……ス……」

後輩は小さな両手をそっと僕の頬に回した。





気付けば僕たちはキスをしていた。子供のような、恥じらいだけの、小さなキスだった。

「初めては…………好きな人って……決めてたんス………恥ずかしいっスね……」

後輩の手がだらりと落ちた。

「先輩……大好きっス……世界で一番……大好きでした……このまま……人のまま……殺して……」





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