「実は私、改造されたみたいで。でもなんか失敗作みたいで。どうにも明日まで命がもたないみたいでして」
「私、もうすぐ死ぬみたいなんスよ先輩」
学校からの帰り道。後輩が作り笑いを浮かべて言った。
「笑えない冗談だな」
「最期くらい笑った顔を見せてくださいよ。いつも先輩は仏頂面なんスから」
「大切な後輩が死んで笑う奴は先輩じゃねぇよ」
「それもそうっスね」
「で、何があったんだよ。病気か?」
「病気だったらよかったんスけどねぇ」
後輩はまた力なく笑う。仏頂面の僕と違って、後輩はいつも困ったとき笑って誤魔化す。
「はたして信じてもらえるかどうか…………」
「信じるよ、お前の先輩だからな」
「話が早くて助かるっス」
「実は私、改造されたみたいで。でもなんか失敗作みたいで。どうにも明日まで命がもたないみたいでして」
後輩は指先で毛先をクルクルと巻いていく。僕と目を合わせてくれない。
「何に改造されたんだよ」
「人殺しの兵器っス。だから、失敗して丁度よかったっス。誰も殺したくなんかなかったんで」
「お前を兵器に改造した奴を殺せばいいじゃないか」
「いやぁ……まぁ、ごもっともなんスけどね……。私、手術中に聞こえてしまったんスよ……。執刀医の人がずっと『すまない……すまない……』って泣きながら手術してるのを……。きっと彼だってこんなことしたくなかったはずなんスよ……」
人殺しの兵器に改造されたとは思えないほど、後輩は強かで優しい心をもっていた。外見も内面も昨日までと同じ後輩のままだ。本当に兵器にされてしまったのだろうか。後輩の思い過ごしではないだろうか。
僕は後輩の決死の告白を聞いてもなお、間違いであってほしいと願った。