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笑顔の終わり

作者: 惷霞 愁灯

 ある日を境に、世界には沢山の異能力者が出現した。空を自由に駆ける者や透明になる者までソレは様々だった。誰しもが何かしらの「特別」になれた。誰かの必要とされる時代が訪れたのだ。

 そんな中、わたしに授けられた能力は「笑顔にする」というものだった。友達は能力を使わなくても、嗤ってくれた。


 力持ちになる能力の友達は、か弱い少女を助けてた。

 少し先の未来を見ることが出来る友達はFXでお金持ちになった。

 水を操る能力の友達は、消防隊員になって活躍していた。


 そんな中、私は能力を自分に使って笑っていた。




◇◇◇




 戦争が始まった。

 今やどんな強い兵器より能力者が重宝されていた。戦場は混沌とした状態が続いていた。わたしは未だ無力の自分を恨んでいた。何か力があれば、何かもっと強い能力だったら。と。

 

 戦争が始まって1週間が過ぎた。私は一人戦場に赴いていた。いつ爆発の能力者が殺してくるかもわからない。いつ狙撃の能力者が頭を貫いてくるかわからない。けどわたしは足を進め、戦場の中心に立った。


 そして、自分のありったけの能力で叫んだ。声が刈れるまで叫んだ。頭が真っ白になるまで叫んだ。何度も息を吸い、何度も声に変えた。私から拡がった笑顔の波紋は、徐々に広がっていった。銃を持った透明人間も、巨人になれる能力者も。みんな、みんな笑顔になった。笑顔の波は敵味方を越え、国境をも越え、いつしか世界に広まった。

 ついに私も人の役に立てた。やった、わたしにも意味があったんだ。価値のあるヒトになれたんだ。


 そう叫ぶ、私の顔は無表情だった。





◇◇◇





「おそらくは、能力の負担による副作用でしょう」

「貴女の能力が世界を救いました。世界が貴女を支援してくれるでしょう。この私も例外ではありません。しかし、こればかりは、私たちの手に負えません」

「しかも悪いことに、笑顔を失ったあなたは感情を失い始めてる。今、あなたは悲しいですか?」

「自宅での療養をお勧めします。入院でも構いませんが、外の世界に触れた方が、何かしらキッカケがあるかもしれません」

「カルテと処方箋を後で発行しますね。ありがとうございました。私事ですが、あの戦場に息子がいたのです。貴女のおかげで助かったのです。本当にありがとうございます」




 歩く。意味もなく。公園にいる人は笑って遊んでる。上司に怒られてるサラリーマンは悲しそうな顔を浮かべる。私はそれを真顔で見つめる。


 わたしは、わたし。笑顔のわたしは?


 笑顔のわたしに価値はあるの? どこにあるの価値あるわたし。


 今のわたしは、価値あるわたし。笑顔の無いわたし。




 最後にわたしは、自分に能力を使った。

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