第三話「会話」
稚拙な文章で申し訳ないです。
空間が消えた後、総統の視界は暫くの間ブラックアウトしていたが、気づいたら目の前には、またあの天井があった。
「あー、あー、アドルフ・ヒトラー総統は偉大なり……うむ、喋れるな。」
総統は目を覚ました途端、喋れるかテストをしてみたが、一応はっきりと話せるようにはなっていた。
それにしても、自分で自分の事を偉大と言うのは、何とも言えないものである。
すると、総統は渋い顔で、何やら呟き始めた。
「偉大なんかではないのだ……私は、多くの未来ある若者を、〈アイツ〉の命令の下に……殺した。うっ、うううっ、許してくれぇ…………うあああああああああああああああっ!」
総統は一気に泣き始めた。狼の巣内では、頭がおかしくなってしまって、泣く余裕すらなかったのだ。仕方のないことである。
といっても、まだ精神的に不安定であることは明らかで、自分が発言に対して泣き出したりしている今のこの状態こそが、まさにその証左と言えよう。
そうして総統が泣きわめいていると、母親が、ハイハイ、どうしたのー? と、部屋のドアを開けて入って来た。
大方、腹が減ったとか、糞を漏らしただとか、そういった事を予想して駆けつけてきたのだろう。
つまるところ、この母親には、総統が泣いている本当の理由は、知る由もないということだ。
「あ、いや……何でもないです。ちょっと昔の事を思い出していただけでして。」
お騒がせしました。と、総統が謝ると、彼女はポカンとした顔をした。
…………無理もないだろう、つい昨日あたりまで、うー。とか、あー。等としか言えなかった乳幼児が、いきなり普通の言語を話すようになったのだから。
「どうしたんですか…………って、あっ。」
総統はここでようやく、自分の犯した致命的なミスに気が付いた。
彼女の前でまともに喋ってしまった……。
それから少しの間、総統と彼女の間には、お互いの息が聞こえるほどの沈黙と、微妙な空気が流れた。
だが、その沈黙は彼女によって、いともたやすく破られた。
「えっと、言葉が話せるの?」
まぁ、妥当な質問である。
「そうですね。まあ一応文字も読めますが……。」
総統は彼女の質問に、開き直ったように答える。
さて、ここで彼女はどういった反応を示すか、総統は固唾を……まだ小さいのであまり飲めなかったが、そんな気持ちで、彼女の返答を待った。
「ええっ! すごい!!」
「はぇ?」
総統は彼女の返答に、思わず拍子抜けしてしまった。
総統としてはもう少し、怖い! とか、そういった反応を予想していたが、流石は異世界と言った所だろうか、彼の予想の斜め上を行ってくれる。
「凄いわ、アランちゃんったら天才じゃない!」
「はぁ、これはどうも。」
取り敢えず礼を言ってみたが、どうも面倒な事になりそうな予感がしてならない…………。
主人公の人称はまだ「総統」のままです。(うざいと思った方、申し訳ないです。)
母親も、名前が明らかになるまで、「母親」又は「彼女(こっちの方を多用します)」
まあその内、どちらも名前(偶に代名詞)で呼ぶので、安心していただきたい。