第一話「転生」
一話につき1000文字ちょっと程にしておきたいと思います。あんまりズルズルとやるのもいやなので。
・・・・・・総統は困惑した。確かに毒の入ったカプセルを噛み切り、それと同時にこめかみを拳銃で撃ち抜いたはずなのに、目の前に広がっているのは木の板を張り合わせたものだ。
「うーうー・・・・・・うっ!? あー! あー! (誰か……あれ!? なんだこの声は!)」
助けを呼ぼうとしても、正常に喋ることができない。まるで赤子のような声が出るだけだ。
総統が暫くの間、絶望に打ちひしがれていると、足音が聞こえてくる。ドアが開く音がして、一人の女性の顔が総統の視界に入った。
その女性はとても美しく、黒い髪に、数百年前の白磁の器の様に白い肌、熱き炎を思わせるが如く赤い瞳。それらはまるで、”この世のものとは思えない程に″素晴らしいものだ。
「うーっ! うあーっ!(おい! 君は誰だ!)」
総統の怒りの言葉を聞いた女性は、にっこりと笑い、静かに口を開く。
「はーい、アランちゃーん、おっぱいの時間でちゅよー? ふふっ、お腹すいてるのね。」
そう言って、彼女は上半身の衣服を脱ぎ、美しい流線型の乳房を露にする。
総統は彼女に抱き上げられ、その顔と乳房の距離が徐々に近づいてゆく・・・・・・
「うあっ!? ああー! あああーっ!?(お、おい!? 何をする! アランって誰⁉︎)」
無事、総統への授乳が終わると、女性は総統を抱き上げたまま、歌を歌いながら総統を揺らす。
・・・・・・・・・・・・その時! 目に入ってしまったのだ。鏡に映った女性と、彼女が抱き上げているものを・・・・・・。
そこに映っていたのは、まだ五十代であるにも関わらず、七十代の老人のような風貌の総統ではなく、まだ生まれて数か月程の赤子だったのだ。
総統は混乱してしまった。何故、自分がこんな姿なのか? それが全くわからない。
だが、いくらかわかることはある。
・まず、この赤子のような体から考えるに、この女性は恐らく自分の母親である。
・次に、何故自分がこのような姿になり、こんなおままごとをしているのか…………それに関してはまだ謎であるが、恐らく自分は、転生というものを体験しているのではないか?
・もしそうだとして、誰が私をこんなところにつれて来たのか……まあ、これについては心当たりがないでもないが。
そうこうしているうちに、睡魔が段々と総統を襲った。
「うー、うーん。(ああ、とても眠い。)」
こうして、総統はそのまま泥のように眠りに就くのであった………………。
更新が牛のように遅いですが、そこにつきましては皆様の寛大なお心を以ってご容赦ください。