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髪シリーズ

おだんご(短短編)

作者: 高山夕

持ってきた、きれいな服を着る。汚れている昨日のは、レジ袋に入れ、かばんにしまう。次は髪をしばる、おだんごに。これは、ラブホテルで朝を迎えたときの、明子のルーティンだ。大体、明子が髪をしばり終えるころ、健が起きてくる。健は明子の不倫相手だ。それに、夫の弟でもある。

初めて誘ったのは、明子のほうだった。健は明子に、密かに好意を寄せていた。だから、兄には悪いと思ったが、その誘いにのったのだ。

二人の内にある罪悪感は、恋を一気に燃え上がらせた。

ラブホテルを後にする。明子は一人、家に着く。

まだ夫がいた。どうだった?と夫が聞いてくる。明子は、最高だったわ、と答える。もちろん夫は、不倫はどうだったかと聞いている。明子は、友達と旅行に行ってくるとか、帰省するとか、そういう嘘はついていなかった。なぜなら、不倫を提案したのは、ほかならぬ、夫だからである。

夫は、結婚三年目にして、自分には、存在価値がないのではないかと悩んでいた。そんなとき、たまたま不倫ドラマを見ていたら、あることに気づいたのだ。それは、不倫は結婚相手がいるからこそ、盛り上がるということだ。もし明子が不倫をしたら、自分が必要不可欠な存在になれると思った。では、誰が明子の不倫相手に良いか。真っ先に思い浮かんだのが、弟だった。あとは、明子が受け入れてくれるかだけだった。心配をよそに、明子はすんなりと、受け入れた。

明子は夫を見送り、一息つく。

健はいつも、行為の前、明子のおだんごをほどいた。健はそれが何よりも好きだと言っていた。明子もまた、その瞬間が好きだった。

いつの間にか、健とのことを思い出していた。

夜になり、夫が仕事から帰ってきた。夫は、食事もとらず、寝室へと明子を導いた。明子と夫との夜の営みは続いていた。

ある日、明子に子どもができたことがわかった。夫はまず、本当に自分との子どもかと疑っていた。しかし、明子は冷静に、健との後は避妊しているから大丈夫だ、と言った。夫は喜んだ。父になれる。今より、もっと良い存在価値を見つけたと思った。その日のうちに、夫は明子に、不倫をやめるように言った。明子は了解した。

子どもが産まれた。男の子だった。名前は、爽。ソウ。そう。うそ。ウソ。嘘。明子は夫に嘘をついている。子どもは夫との子どもではない。健との子どもなのだ。明子はそう確信している。だって、避妊薬を飲んでいたのは、夫との後だったから。

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