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亡国の王女と世界最強の大賢者

作者: 暁

 先ず、住んでいた城が燃えた。わたしはただそれを、眺めていることしかできなかった。

 次に、わたしの家族が殺された。それも民衆の目の前で……。民衆たちはその光景を涙を流してふかく悲しんだ。それが、唯一の救いだった。わたしはつぎつぎに飛んでいく家族の首を見ていることしか許されなかった。わたしは、声を荒げることもできず、静かに涙を流していた。

 そして、わたしは追われる身となった。住む場所を奪われ、家族も殺されたわたしには、何一つ残っていなかった。それでも、わたしは死ぬことさえもできなかった。わたしは、臆病者だったのだ。あの世の家族に会いたい、その一方で、わたしのために命を散らしていった家族の後を追う勇気などなかった。わたしは、生きねばならなかったのだ。

 それが私に与えられたーー運命なのだから。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


 私ライラ・シルフォードはーー今は亡き国の王女の過去を持ったーー少し変わった旅人である。

 ライラには、絶対に人に知られてはならない秘密があった。それはライラが『加護持ち』だ、ということ。『加護持ち』とは、精霊の加護を並外れて受けた者のことを呼び、ライラは『加護持ち』の中でも最高位に位置していた。

 ライラが『加護持ち』であることを知った家族は大いに喜んだ。

 なんせ、『加護持ち』がいる国には、自然と精霊が集まるからである。精霊は本当に不思議な存在で、彼らがいるというだけというだけで、その土地が肥える。

 だから、『加護持ち』を巡って、戦争が起きることなど珍しくない。

 特に、ライラの場合、まさにそれは精霊のオンパレードだった。彼女が笑うだけで、周囲に花が舞ったほどだ。

 また精霊から祝福された者は、身体から淡い光を放ち、美しい容姿を持つと言い伝えられていた。それは精霊からの祝福が多ければ多いほど、容姿に反映するようで、ライラは世界で一番美しい、と讃えられた。

 誰もがライラを羨んだ。『加護持ち』で、誰からも愛されるお姫様だ、と。女の子なら誰もが彼女みたいになることを夢見た。

 しかしライラは、自分の身を呪っていた。なぜなら、この身体の体質のせいで……いや、自分が生まれたせいで、国が侵略され、家族も殺されてしまったからだ。

 普通、『加護持ち』は己の身を守る手として、高位の魔法を扱うことができる。しかし、ライラは膨大な魔力を保持しておきながら、魔法を使えない体質だった。いわば、“宝の持ち腐れ”である。もしライラが魔法を使えたら、他国など簡単に蹴ちらすことができただろう。

 先ず、ライラは世界を恨んだ。世界は私に何を望むのか、と。

 次に、運命を呪った。どうして、わたしばかりがこんな過酷な運命なのか、と。

 最後に、自らを蔑んだ。わたしなどこの世に生まれなければよかったのに、と。

 それから、わたしは世界を転々とした。じゃないと、わたしの国と同じ目に遭ってしまうから……。ギルドの下位の任務を適度にこなしていたので、お金の心配はない。ただ寂しさのみがどんどんと積もっていった。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


 ライラは、シュメル国の都市ランゼルに来ていた。自分の容姿が平均よりも優れていることは実感しているので、マントを深く被って、見えないようにしている。

 ランゼルの街には、たくさんの人が行き交い、とても賑わっていた。

 新鮮な果物や白い陶磁器、洋服屋など実にたくさんの店があった。ライラは、つい夢中になっていた。だから、馬車がこっちに凄い勢いで近づいてくるのに気づくのが遅くなってしまった。

「キャッ!」

 慌てて道端に避けたせいで、ライラはバランスを崩してその場に倒れこんでしまった。倒れこむ際、足首を変なふうに捻ってしまったようで、ズキズキと痛んだ。

「道のど真ん中で突っ立っているから……ッ!?」

 馬車から駆けおりてきた青年は、ライラを見るなり、黙り込んでしまう。不思議に思ったライラは、マントから自分の顔が露わになっていることに気がついた。

(ど、どうしよう……。と、取り敢えず逃げなければ!)

 もう一度マントを深く被ったわたしは、青年から逃れるように走り出した。

「ま、待てッ!誰か、その娘を捕まえろ!」

 青年は慌てて護衛に命令を下す。ライラは、必死に足を動かしたが、相手は騎士で屈強な男たち。だんだんと差が縮められていく。ライラの頬を涙が伝った。

(ど、どうして、追いかけてくるのよ!)

 ライラは一心不乱で走り続けた。だから、人混みを抜けた道の先に、人がいることに気がつくことができなかった。

「ッ!?す、すみません!」

 ライラは、誰かの胸の中に飛び込む形で、突っ込んだ。慌てて、顔を上げると、視界に広がったのは、漆黒の髪に闇のような瞳を持った美少年の顔。あまりの美しい容姿に、思わずライラは見惚れそうになる。

 だが、ライラはすぐに自分が追われていることを思い出し、少年の胸から飛び出ようとした。しかし、少年はそれを阻むかのように、きつく抱きしめてきた。

「は、放してください!」

 ライラは、少年の腕の中で暴れる。が、少年はそんなライラを軽々と押さえ込んでくる。見た目で判断するに、ライラとさほど差はなさそうだ。

「……助けてあげる。だから、安心して?」

 少年は、ライラの耳元で呟く。それがとても甘く、眠りを誘うようで、ライラは突然睡魔に襲われ始めた。

(こんなときに、限って……)

 必死に睡魔に抗ったが、暗い闇の中に引きずり込まれるようにして、ライラの意識は消えた。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


 目を覚ますと、視界いっぱいに夜空が降り注いできた。

「……綺麗」

「…ん?起きた?」

「ッ!?」

 自分以外に誰もいないと思っていたので、突然隣から声が聞こえてくることにびっくりする。いままで目を覚まして、近くに人がいたのは……王女だったとき以来の気がした。

「だ、誰ですか?」

 ライラは慌てて、男と距離をとった。

「ふふ、そんなに警戒してなくていいよ。僕の名は、シロウ・フジオカ。そこそこ有名な冒険者さ」

「…シ、ロウ様、ですね。わたしはライラです。あの……ここはどこですか?わたし、先ほどまでの記憶がなくて……」

 ライラは、どちらかといえば、記憶力のいい方だ。それなのに、自分がどうやってここまで来たのか、その記憶がなかった。

「無理もないよ。なんせ、僕があのボンクラ王子から君を逃すために、睡眠魔法をかけたんだから」

「え?睡眠魔法を?わたしに?」

 ライラは驚愕した。なんせ、この世界で魔法を使用するときは、精霊の力を借りなければならない。しかし、ライラに睡眠魔法をかける、という目的だと精霊は力を貸したりはしないはずなのだ。なぜなら、精霊たちにとってライラを攻撃することは、自分たちを攻撃するのと等しいはずなのだから。

「あの……そのとき、精霊たちは嫌がったりしませんでしたか?」

「ん?精霊たち?えーと、ね。僕って魔法を行使するとき、精霊の力を借りなくていいんだ。ほら」

 そう言って、シロウは、魔法を使った。しかし、そこに精霊とのやり取りは感じられなかった。

「僕は、この世界の者ではないから、ここの(ことわり)には縛られないんだ。で、次は君のことを教えてくれないかなあ?」

「わたしのことですか?」

「うん、僕って精霊の助力なしで魔法を行使できるんだけど、精霊とは会話できるんだよね。君とはじめて会ったとき、君の周囲にいた精霊が僕に助けを求めてきて、さ」

「そ、そうだったのですか……」

 先ほどからの少年の態度を見るからに、ライラのことを捕まえようとしているようには見えない。それに、いつもライラの周囲にいる精霊たちが彼に懐いているのだ。精霊は、心が純粋な者に集まる傾向があり、欲のある人間は避ける傾向があった。きっと、この少年なら大丈夫と信じ、ライラは口を開いた。

「改めて、私の名はライラ・シルフォード」

「シルフォードって、45前に亡くなった国の王族なんじゃ……」

「はい、わたしは王女でした。そして、『加護持ち』です」

「『加護持ち』……」

 『加護持ち』の言葉に、反応する少年。なんせ、『加護持ち』はどの国も手が出るほど欲しい存在なのだ。

「……っていうことは、彼らの言う謎の現象の原因ってきみのことか……」

「彼ら?」

 一人で納得する少年に、ライラは首を傾げた。

「彼らとは、君以外の『加護持ち』のこと。僕は彼らの中に親友がいてな、その親友の頼みでとある現象について調べていたんだ」

「とある現象とはなんですか?」

「ここ30年間、普段動かない精霊たちがあっちこっちに移動しているという現象。それを不思議に思った親友が僕に依頼をしてきたんだ」

 少年が言うには、精霊たちはライラと共に国と国を転々としていたわけだ。そういえば、以前よりも周囲の精霊の数が明らかに増えていた。

「ま、これも何かの縁だ。僕が、君を助けてあげる」

「え?で、でも……わたしは……危険です」

「ふ、僕を誰だと思ってる。ねえ、君は大賢者の噂を知ってる?」

「……大賢者ですか?確か、人間の身でありながら、世界の理を知ると言われる伝説の人ですよね?も、もしかして……シロウ様って……」

「そう、僕がその大賢者」

 ライラの頭は、爆発寸前だった。だって、大賢者ってもっとヨボヨボのおじちゃんだと思っていたからだ。それがこんなに……若いとは。

「シ、シロウ様ってそのいくつなのですか?」

「うーん、と百年前は百五十三歳だったから……多分二百五十三歳?」

 そう言ったシロウに、ライラは驚愕した。ライラ自身も精霊の祝福のおかげで、十五歳を迎えたときから見た目の老化が止まっていた。

「え……シロウ様って大賢者で、二百五十三歳で……」

 遂に、目の前の出来事にライラの容量が越えてしまった。

「お、おい!」

 ライラは、ふたたび眠りについた。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


 その後、ライラとシロウは一緒に旅をすることになった。といっても、シロウが勝手にライラについてきているだけなのだけれど。

 それに、シロウは凄く金持ちで、宿代だったり、食事代だったり、ライラの分まで払ってしまうのだ。以前そのことに抗議したら、甘い声で「男の見栄なんだから、譲って、ね?」と言われてしまい、ライラはしぶしぶと諦めることになった。

 シロウと旅することになってから、ライラは良いことばかりだった。しかし、度々シロウ関係で問題事が起きた。特に“女性問題”。

 シロウは、女性なら誰しも見惚れるほどの美青年だ。なのに、シロウ本人にその自覚はない。おかげで街を通るたびに、シロウは娼婦たちに捕まり、娼館に引っ張られていった。ライラも、男性なら誰しもそういった性的な問題がある事を知っていたため、見て見ぬフリをしていた。が、なんと娼婦たちがライラに嫉妬して嫌がらせをしてきたのだ。

「シロウ様は、私たちの方が良いんだって。あなたみたいなちんちくりん、好みじゃないって?」

 豊満な胸を持った娼婦Aがマントを深く被るライラの前に立ちふさがった。

「そうよ、シロウ様って私たちの身体と相性が良いって」

 娼婦Bがさらにたたみかける。ライラは約六十年間という時を過ごしてきたが正真正銘の処女。彼女たちみたいに百戦錬磨の娼婦ではない。

「……汚い」

 ライラの口から飛び出たのは、そんな言葉だった。ライラは、彼女たちが好きで娼婦をやっているわけではないことを知っていた。それでも、シロウにベタベタと触る彼女たちが嫌で嫌で仕方なかった。

「な、なんですって!そ、そういえば、シロウ様が言っておりましたわ。あなたはお荷物なんですって!」

 娼婦の言葉がライラの胸に深く突き刺さった。シロウがそんな事を言うはずがない、と頭の中では理解している。

「う、嘘よ!」

 久しぶりにライラの頬を涙が伝った。

「いいえ、シロウ様は言ってたわ」

 ライラを恐怖が襲った。

(私って、シロウの側にいてはいけない、のかもしれない。彼を困らせるぐらいなら……)

 ライラは、ただひたすら走った。こんな状態で、シロウに会いたくはなかった。いつの間にか、マントが脱げ、顔が露わになっている事に気付けないほど、ライラは混乱していた。

 路地裏に駆け込んだライラは、その場に崩れ落ち、ただ泣いていた。突然周囲の影が濃くなり、視線を上げる。しかし、後頭部に走った衝撃のせいで、ライラは深い闇へと落ちていった。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


 目を覚ますと、ライラは見たことがない部屋にいた。いつもだったら、目を開けるとそこにはシロウがいる……のに、彼のかわりにいたのは、以前馬車から駆け下りてきた金髪の青年だった。

「やっと、目を覚ましたんだね?」

 嬉しそうに話しかけてくる青年に、悪寒がした。

「こ、ここはどこですか!私を、さっきのところに戻してください!」

 ライラは、青年を睨みつけた。しかし、そんなライラをみた青年は満足そうに笑うのだ。

「ああ、やっぱり怒った顔も綺麗だ。君は私の愛人になってもらうよ。本当は、正室として迎えたいのだれけど、身分が足りないから……でも、私は君を一番愛でてあげる」

 恍惚な笑みを浮かべ、青年はライラに近づいてくる。

「こ、来ないで!」

「怯えないで。優しく抱いてあげるから……」

「い、いやッ!」

 ベットから降りようとするが、青年に押し倒されてしまった。

「ああ、今日はなんて最高な日なんだ。女神のような君を抱けるのだから……」

「シ、シロウ、助けてよ!助けてくれるって言ったじゃない!」

 シロウがいるわけでもないのに、必死にシロウに助けを求めた。

「…綺麗だよ。その容姿も、その肌も……吸いついてしま「おい、ライラから離れろ。そこの変態王子」…ッ!」

 ここにいるはずがない人の声が聞こえ、恐る恐る部屋の端に目を向けると、そこにはシロウが立っていた。慌ててきたのか、漆黒の髪が少し乱れてる。

「シ、シロウ!」

 シロウの登場で青年の力が緩んだため、思いっきり青年を突き飛ばし、シロウの胸の中に飛び込んだ。シロウの優しい匂いがライラを包む。

「……ライラ、少し寝ててね?」

「え?」

 シロウがライラに呟いたのと同時に、ライラは深い眠りについてしまった。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


【シロウ視点】

 自分の腕の中で静かに眠るライラを見て、凄く安心した。僕がライラから目を離しさえしなければ、こんなことにはならなかった。はっきりいって今回は僕に落ち度がある。

 彼女の白金の髪にそっと口付けをする。そして、ふと思い出す。まだ、こいつがいたことを。

「ねえ、僕さ。君に忠告したよね?変態王子君」

「ッ、か、彼女は私が最初に見つけたんだ!か、返せ!」

 ふざけたことを抜かす変態王子をシロウは思いっきり睨みつけた。

「へえ、僕……いや大賢者の僕から彼女を取り上げるのかい?国が滅びる覚悟はした?」

 ライラが精霊に愛されているなら、シロウは世界そのものに愛されているといっても過言ではないだろう。それだけ、シロウは世界から祝福を受けていた。

「ッ!」

「おバカな君にいいことを教えてあげる。僕は、世界そのもの。もし、僕が君の破滅を望めば、世界が君を破滅に追い込むだろう」

「ば、バカな!」

「だから、さ。もう僕たちに関わらないでよ。取り敢えず、この国が地図から消えるまではしないであげるから。じゃあね」

 シロウはそう言って、転移の魔法を唱えた。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼△


【シロウ視点】

 中々眠りから覚めない彼女にイラつきを覚えたシロウは、彼女が寝ている間に彼女のファーストキスを貰うことにした。

 実をいうと、これはシロウにとってもファーストキスとなる。シロウは、娼婦を抱いたりなんかしてなかった。

 シロウは、世でいうヘタレなのだ。それに初めては好きな人という変なこだわりを持っていた。

 眠る彼女の唇にそっと、自分のそれを近づけた。ふと、こんなお姫様ストーリーがあったな、と思い出す。眠るお姫様に王子様がキスをして起こす的なあれ。

 彼女の唇はシロウが予想していた以上に柔らかかった。

 本当のことをいうと、シロウは、ライラに一目惚れをしていた。白金の髪を靡かせ、僕の胸の中に飛び込んできたときは、心臓が飛び出るかと思った。そして、彼女の顔を見たとき、胸の鼓動が異常なまでに高鳴った。だから、その後も彼女の意思を無視して、彼女の旅のお供をしていた。少なからず、ライラも僕に多少の好意を持っていることを知っていた……いや、今を考えると、そう思い込んでいたのかもしれない。だって、世界はシロウの優位になるように動いているのだから。

「ハハ、この僕はこんなにも入れ込むなんて……それにしても、ライラ、中々起きないな……」

 チラリ、と彼女を盗み見るが、いっこうに起きようとしない。

「もう一回……」

 次は少し長めにキスをする。が、彼女に起きる気配はない。だんだん、苛ついてきたシロウは、三回目のキスをすることにした。それも、映画で見るようなかなり深い奴を。彼女の口から、空気を根こそぎ奪い取り、彼女の口内で暴れようとしたとき、

「ん……っ、んんぅ……ッ!」

 流石に苦しくなったのか、ライラが目を覚ました。シロウは、名残惜しく思いながらも彼女の唇を解放した。

「お姫様がなかなか起きてくれないから、意地悪したくなった」

 意地悪な笑みを浮かべながら、彼女に悪そびれなく言った。

「シ、シロウ!何をするのよ!」

 ライラは、顔を真っ赤に染めながら訴えてきた。

「なにって、誓いのキスだよ。僕の初めてを全て捧げる君に、ね?」

「えッ!ってその前にシロウって童貞だったの?わたし、てっきりシロウはプレイボーイなのかと……」

 彼女の口から告げられることに、シロウの心は深く傷つけられた。

(僕って、ライラの中では軽薄な男に認定されていたのか……)

「……そうだよ、僕は大賢者で、童貞で、ヘタレで、ライラに初めてキスするだけで舞い上がるような奴でーー「な、なに申告しているのよ!てか、なんで泣きそうになってるの!」」

 ライラに自分のことを知ってもらおうとしたのに、止められた。男にとって「童貞」を申告することは、かなり恥ずかしいことだ。特にシロウの場合、二百五十三年間「童貞」を貫いてきたわけで……。

「僕は童貞だから、つまり、未体験なわけで……」

「そうなこと、聞いてないわよ!それにわ、わたしも処女だし……」

「それなら、一緒に卒業しようね?」

「ッ!!!」

 

 その後、二人が一緒に卒業したかどうかは知らないが、幸せに暮らした、とさ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 短編の新着リストで見つけて読み始めたところ、暁様の短編を読ませて頂くのは三編目でした。 今回も巻物のようになって申し訳ありません。 一見して初々しい男女の出逢いの物語ですがシロウ・フジオカ…
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