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スパイ大作戦

作者: さきら天悟

2023年、世界経済は沈んでいった。

元凶はC国だった。

C国の経済成長は止まり、不良債権が次々と明るみになった。

とうとうバブル(泡)が弾けたのだった。

その大きくなりすぎた泡は弾け、世界各国を巻き込んでいった。

各国政府は失業者対策を重点に置き、経済対策を行い、

情勢不安を抑えるためにやっきになった。

しかし意外に、もっとも有効的な対策を取ったのはC国政府だった。

多くの人に職を与え、愛国心を高めた。

それは大幅に軍隊を増強したのだった。

お金と食事と役割を与えられた人民の愛国心は、今までないほどに高まっていった。

しかし、これには問題があった。

莫大な財源が必要になるのだ。

そのため、C国は直接的な方法に出た。地下資源を得ると言う。

ターゲットは東シナ海だった。

C国政府は素早く動いた。

そして、日本との領海線上に資源採掘プラントを数十か所建造した。

これは一石三鳥の効果があった。

地下資源を得ると言うのは言うまでもない。

日本が国連に必死に抗議をするのを見て、人民は日本をあざ笑い、政府への支持を高めた。

さらに日米が戦端を切ってくれればラッキーとさえ思っていた。

もはやC国の軍事力はアメリカをも凌いでいた。

不安視されていた国家への忠誠心も、日本以上に高まっていた。

この時極秘裏に、尖閣諸島進攻計画が計画された。




日本政府はC国の尖閣進攻計画を米国から知らされ、ようやく重い腰を上げた。

いや上げざる得なかった。

政府の弱腰に民衆は呆れ、内閣支持率は十数パーセントとなっていた。

こうなると野党はのんきに国会の解散を叫んだ。

しかし、安保法案にすら反対する政党が支持を得られるはずもなく、

さらに解散すれば、右傾した、開戦やむなしと主張する政権が誕生する恐れがあった。

そこで、これまで数々の難題を解決してきた太田が、

与党の最後の砦として総理に指名されたのだった。



太田はすぐにブレーンを会議室に集めた。


「尖閣上陸のXデイは、7月〇日です。

党幹部の家族筋の情報です。

実際に海外移住に動いたそうなので間違いないと思います」

発言した男の顔は青ざめていた。


「私が得た情報も7月〇日です」

自衛隊制服組の男が発言した。

「さらに初期の段階で核兵器を使うことを計画しています。

これは党指導者が抑えると思いますが、

戦争が思わしくなければ、使用に踏み切る可能性があります」


「そんな~、それは無差別、大量虐殺です。

国際法違反です」

法務省女性官僚は言った。


「アメリカの前例があるから、

国際社会は裁けないだろう」

青い顔の男は溢した。


太田は腕を組んで、唸った。

「衝突をさけるには、譲歩するしかないか」


「それでは世論を抑えることができません。

軍事政権が誕生する前に、何か対策を打つ必要があります」

制服組の音が答えた。


太田は集めた十数人のスタッフを見渡した。

みな、他の皆はうつむき加減で口をつぐんでいた。

いや一人、太田を見て微笑む男がいた。

太田は男に発言するように視線を送った。


男は2度首を振った。


普段からその男を信じていたので、太田は彼に意見を求めなかった。

結局、朝まで行なった会議は祐有効な対策が見いだせなかった。

ただアメリカ及びヨーロッパ、アジア周辺諸国と強調してC国に対抗するという

当たり前の結論しか出なかった。



翌日、太田は各閣僚や官僚を緊急招集し、C国への対抗会議を開いた。

まず、意見を求めたが、昨日と同様に目ぼしい案は出なかった。

逆に、出席者らは太田への期待の眼差しを送った。

これまで数々の難題をクリアした太田ならなんとかしてくれるというように。


太田は立ち上がった。

「C国に対し、情報戦をしかける。

軍事拠点の弱点を探り出し、破壊工作を行う。

核兵器など大陸間弾道弾を使用不能にする。

さらには現地に潜入し、各不満分子を先導する。

そして革命を起こし、現政権を打倒する。

特別予算1000億円を計上する。

もし、これでC国を混乱させることができれば安いものだ」


参加者一同は頷くしかなかった。

太田を信じているというよりは、他に策がなかった。





時が経ち、Xデイまで三か月になっていた。

太田が立てた作戦は完全に失敗に終わった。

スパイからの情報は得られなかった。

とうより突然連絡が途絶えた。

秘密裏に摘発され処刑されていた。

C国はというと、農村部や少数民族の不満分子は逆に減っていた。

彼らは軍隊に徴収され、職にありつけたことを素直に喜んだ。

そして、これから日本を蹂躙し、

まさにアジアの1番の大国になることを思うとさらに士気が高まっていた。

それに太田の作戦はC国に読まれていた。

というより、会議に情報が完全に漏れていた。

C国のハニートラップに籠絡された官僚が2人いた。

C国は先手を打ち、スパイに備え、万全の体制を取っていたのだった。





そして、ついにXデイが来た。

C国は尖閣諸島に上陸した。

アメリカは第7艦隊を島北部に集結させ、

自衛隊艦船の7割がそれに加わった。

残り3割は北への備えで動かせなかった。



それに対し、C国は大艦隊で日米を圧倒した。

C国陸軍は各地で緊急招集をかけた。

C国の力を全世界に見せつけるためだった。

その規模は人類史上最大1200万人を動員した。

世界はC国の狂気に震えあがった。



尖閣での双方にらみ合いが一週間続いた後、

C国艦隊は本国に引き返していった。

C国各地で暴動が起きたのだ。

それは軍隊の暴発だった。

愛国心ゆえだった。

中央地方の党幹部及び軍幹部の給与がネットにさらされたのだ。

しかし、その給与は驚くような額ではなかった。

だがしかし、暴露された資産は驚くべき内容だった。

数百億円の資産を海外に有し、その多くの子息は海外にいた。


「これで太平洋を手に入れることができる。

日本が少しは頑張って、不満分子どもを殺してくれると助かる」


「200万人は掃除できるはずだ。

すでに米国のスパイに軍事拠点を漏らしている。

やつらの空爆はロシアと違って正確だから助かる」


名のある党幹部が雑談している映像もネットに流された。

これを見た愛国心に燃える兵士は怒りの矛先を変えたのだった。

中央政府へと。

C国は大混乱へと陥って行った。

その後事態終息に10年かかった。

各自治区は独立し、C国は崩壊したのだった。





「スパイ大作戦に乾杯!」

太田は一人で祝杯を上げた。

太田は軍にスパイを送る一方、幹部の個人を探っていたのだった。

C国軍は世界最大なサイバー部隊を有するため、

鉄壁の守りだった。

しかし、個人に対してはそうでもなかった。

それもそのはずである。

彼らは海外に資産を移していた。

米国をはじめ、各国諜報機関は日本のスパイに協力した。

逆に日本にある銀行預金額の方が調べるのに手こずった。

こうして太田のスパイ大作戦は成功したのだった。

そして、この筋書きを書いたのは、やはり名探偵藤崎誠だった。

ちなみに党幹部の映像は日本で作られたものだった。

藤崎には変装名人にツテがあった。

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