三人
彼女は一瞬、耳を疑った感じで、は? と、一言吐き出した。
「だからさ、鑑七瀬っていうんだけどさ」
「かがみ、ななせ・・・?」
確かに、少女の名前は鑑イチカといった。
鑑、七瀬。
「ははっ、まさか知り合いとかっ?」
ホントにまさかねえ。
黙りこくった少女に、セナがねちねちとした言葉を紡ぐ。
「やめなよセナ。不謹慎だ」
その時、顔を引き攣らせて一人の少年が、二人の間にわってはいる。
「黒かよ」
セナはばつが悪そうな顔で黙り込み、変わりに黒という少年は微笑を浮かべた。彼は、セナとほぼ同じ体格か、それより更に痩身の少年で、温和な顔立ちが印象的だった。
「イチカも、セナの言うことをいちいち真に受けなくて大丈夫だよ」
「フフ。平気だよ、真に受けてなんかないから」
イチカの言葉に、セナが口を尖らせる。
「お前ら、ひでえ。最低だぜ」
「最低なのはセナでしょ」
黒が言い返し、セナと黒の二人はじゃれあうように、昨晩のドラマの話を始めた。
イチカはそれを、黙って眺めている。
昔は、彼女その輪の中に入って行けたのだが、今はそう簡単にはいかない。
男女の壁って、くだらないけど酷く分厚い。二人といると、立ち止まって、その壁を乗り越えられないことを再確認している気分になる。
イチカは自虐的な笑みを浮かべた。
あたしって、なんて、何でもない存在なんだろう。
どうでもいいですが、個人的には推理小説と冒険ものが好きです。