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水森飛鳥と落ちし絶望、そして射し込む一筋の光Ⅲ(その背を預けられる存在は)


 さて、風弥(かざや)と話すことで出来ていた現実逃避ではあるが、それも終わってしまえば、改めて突きつけられるもので。


 ――参った。


 風弥と別れる前に、プレゼント選びの相談に乗ってもらうんだった。

 けれど、そんなこと言っても後の祭り。

 過ぎたことを言っても、仕方がない。


「……」


 とはいえ、用意しないといけないことには変わりないので、悩むしかないのだが。


飛鳥(あすか)


 それに、プレゼント買うにしたってお金も必要だし、もしバイトをやるにしたって、いくらこの時期にクリスマスや年末年始の準備や手伝い等があるとはいえ、もう定員が埋まってるだろうし……


「飛鳥ってば」

「どうしたものか……」

「飛鳥!」

「なに……」


 先程から呼んでる声が聞こえていたから無視していたというのに、むっとされては罪悪感が湧くではないか。


「なに、じゃなくて……」


 顔を向ければ、何か言いたそうにしながらも、どう言ったら良いのか困ったような顔を、桜峰(さくらみね)さんはしていた。


「あのさ、もしまだプレゼント決まってないなら、一緒に買いに行かない?」


 おや、この子も決まってなかったのか。

 正直、いつもなら断ったりするところだけど……


「そうだね」

「えっ!?」


 少しでも案が出るなら良いだろうし、このまま悩みっぱなしもアレなので受けてみたら、驚かれた。


「何、その反応」

「いや、いつもなら断ったりしてくるから……」

「あー……」


 まあなあ……


「一緒に出掛けてみるのもいいかな、って思っただけだよ」

「……」


 何やら感動したかのような顔になっているけど……私って、そこまで付き合い悪いかな?


   ☆★☆   


『それでね、それでね。今度の休みに、飛鳥と出掛けることになったんたですよ』

『そうですか……』


 もしかして、と異能発動してみれば、思った通りで、嬉しそうに話す桜峰さんと、困惑してそれを聞く副会長が簡単に想像できる。


『それにしても、珍しいですね。受けてくれるなんて』

『うん。でも、一緒に出掛けてみるのもいいって言ってくれたから、一歩前進です』


 ……ん?


『かなり、ゆっくりとした一歩ですがね』

『いいんですよ。まだ一年ありますし、少しずつ進んでいくだけです』


 ……んん?


「何か、おかしなことになってる……?」


 正直、思ってることが外れてることを祈りたいところだが、多分当たってるので、無視しておくとして――


「軽率な判断……ではないはず」


 いくら女神の件があるとはいえ、これぐらいは許されても良いはず。


「……さて、どうしたものか」


 12月になったというのもあるんだろうけど、ここ最近さらに冷え込んできたので、この時期になると屋上ではなく、空き教室の一つに入って、時折様子を見ている。

 ちなみに、(かなで)ちゃんたちは移動教室だし、私は予鈴が鳴ったら、教室に戻らないといけない。


『どうもこうも無いでしょうに』

「……」

『全ては出掛ける日次第なんだし、今気にしても仕方ないでしょ。現状、出来ることなんて、行けなくなったって言うか、ドタキャンぐらいだし』

「……ドタキャンは嫌だなぁ」


 でも、明花(あきか)の言う通りでもあるわけで、出来ることと言えば、出掛ける・出掛けないを決めることぐらいだし、ここであーだこーだ言っていても、何も変わらない。


「ねぇ、明花」

『何?』

「明花がやろうとしてること、手伝うよ」

『いきなり何……』

「考えてることは、何となくでも分かるから」


 人格も記憶も、ほんのの少し違うけど、それでも情報交換のためのノートとかから推測することは出来るから。


「そのためにも、不確定なことは確定させないとね」

『……そうだね』


 だって、この世界の時間を動かすため、頑張ってきたから。

 だからこそ、誰か一人を置いていくなんて出来ないから。


『たとえ、分かりきってることを突きつけられて傷つくのだとしても、貴女はきちんとその足で立っていなさい』

「うん」

『貴女が精神的にふらふらでも、薄氷のギリギリに立っていたとしても、何とか立っていてくれれば、それでいい』


 その場に立つだけでいいのだと、明花(かのじょ)は言う。


『面倒なことは、私の役目なんだから。貴女の――いや、私たちの邪魔する存在は、何が何でも叩き潰してあげる』


 本当、頼もしいな。


「お願いね、明花(わたし)

『任せて、飛鳥(わたし)


 私たちが抱えてることは、私たちだけが分かっていればいい。

 私たちが考えていることは、私たちが知っていればいい。

 故に、その背中を任せられるのは、ただ一人しかいないのだ。


「あ、チャイム」


 そして、予鈴が鳴るのを聞きながら、教室に向かう。

 さて、突きつけられる『真実』は、どんなものになるのかな。



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